太極推手への再考 (1) | 健康・護身のために太極拳を始めよう

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太極拳は、リラックスによるストレス解消、血行改善、膝・腰強化、病気予防などの健康促進効果以外に、小さな力で大きな力に勝つような護身効果もある。ここでは、中国の伝統太極拳の一種である呉式太極拳の誕生、発展およびその式(慢拳・快拳・剣・推手)を紹介する。


太極推手とは何か。これについてこれと言った定義は見当たらない。定義できないわけではないが、様々な視点による定義が可能なので逆に包括的に定義することが難しいからだと思う。 筆者はあえて次のようにアプローチを挑戦してみる。即ち 太極推手とは、相手から力を受けた際に、逃げず抵抗せず相手の動きについていくうちに主導権を握り、自分にとって有利、相手にとって不利なポジションへ導き、最終相手のバランスを崩すように相手と肢体を接して行う一種のトレーニング方法のことだ。


推手の延長線上に散手(格闘のこと、散打とも言う)がある。そこに太極拳の根本的な目的が窺える。しかし、ボクシングや他の武術と同じく散手トレーニングだけで推手を行わなければ、太極拳ならではの部分の把握が難しい。太極拳の「以小勝大」、「以弱勝強」、「借力打力」、「四両撥千斤」 を実現させるには、推手トレーニングが必要不可欠なのだ。


上記定義の「…逃げず抵抗せず相手の動きについていく…」と「…最終相手のバランスを崩す…」という2つのポイントに注目してほしい。世の中には、お互いに相手に力を与えない「形だけの推手」と、相手に従わず とにかく自己中心に無理やりにつたない力で相手を押し通すような 「乱暴推手」 (筆者がつけた名称)がある。両ケースとも本当の太極推手ではない。 次回はこれについて議論することにしよう。