宇都宮線沿線の仕事の帰りに、大宮で途中下車した。
大宮で降りるのは約2年振りである。
かつての仕事場に顔を出す前に、私は彼女を探し求めた。
いつも彼女が私を待っていた場所を覗くが、姿はない。
『チチチチチ…クロちゃん、いるか?』
少しすると、塀の上に黒いシルエットが浮かび上がった。
こちらを見ている。
『クロ!?クロなのか!?』
シルエットはしばしこちらを窺った後に姿を消した。
私はシルエットの姿を確認しようと、建物の裏手に回り込んだ。
そこで目にしたのは、黒色と見紛うばかりの濃い焦茶色に曲がった尾、胸元に白い斑点を持った猫だった。
『クロ!生きていたのか!?』
だが、私の声に応じて振り返ったその顔は、彼女ではなかった。
似ているが、オスだ。
約2年前、彼女と別れる直前に連れ歩いていた子猫の、成長した姿であろう。
彼は私を一瞥すると、興味なさげに視線をずらして路地に消えた。
あれから2年。
過酷な状況で生きねばならぬ野良猫の寿命は3年程度といわれている。
私と出会った当時、既に彼女には子供がいた。
当時の年齢は2歳程度であろう。
別れるまでを約1年半として、現在では5歳程度になっている筈だ。
人間に餌を貰っているとはいえ、最低2回の出産を経験している彼女が、生きている確率は低いと言わざるを得ない。
私は彼女を忘れる事にした。
やや落ち込みながら、かつての仕事場を訪れた私を待っていたのは、現支社長であるH氏と、かつての部下である同僚Mだった。
約2年振りに訪れた事務所は、私が去ったときと大きな違いはなかった。
違いといえば、コーヒーメーカーが撤去されていたのと、何重にも張り巡らされたセキュリティシステムが殆ど稼働していなかった事くらいか。
私は『元』支社長であり、事務所の現状についてとやかく言う立場にはない。
『現』支社長であるH氏が不要だと判断するなら、きっと不要なのだろう。
言いたい事は山ほどあったが、その全てを呑み込みながら愛想笑いを浮かべる変態オヤジであった。
仕事の帰りに小腹が空いたので、駅のホームにある立ち食いそば屋に入った。
私はどこの立ち食いそば屋に入っても、天ぷらそばしか頼まないようにしている。
店ごとの味の違いを楽しむのと、マイランキングをつける為だ。
久方振りに入ったその店でも、私は天ぷらそばを注文した。
学生時代から通い続け、味は知りつくしていたが、まぁ習慣みたいなものだ。
次の注文客の邪魔にならぬよう、カウンターに置かれた丼を手に脇へ避け、そばを口に運んだ私は、思わずングッ!と声を出してしまった。
不味い。
美味しくないではなく、不味い。
そばを名乗っているがそばの香りはなく、まるで細長く切ったちくわぶを食っているようだし、そばの湯きりが甘いのか、ツユは薄いというより水っぽい。
美味しくないそばに当たるのは珍しくないが、不味いそばを食べたのは何年振りだろう。
十数年前に千葉県某線のM駅で食べたのが最後だった気がする。
長年通い続けたが、もうこ こでそばを食べることはあるまい。
馴染みの店が減ってしまったのが残念でならない変態オヤジであった。
私はどこの立ち食いそば屋に入っても、天ぷらそばしか頼まないようにしている。
店ごとの味の違いを楽しむのと、マイランキングをつける為だ。
久方振りに入ったその店でも、私は天ぷらそばを注文した。
学生時代から通い続け、味は知りつくしていたが、まぁ習慣みたいなものだ。
次の注文客の邪魔にならぬよう、カウンターに置かれた丼を手に脇へ避け、そばを口に運んだ私は、思わずングッ!と声を出してしまった。
不味い。
美味しくないではなく、不味い。
そばを名乗っているがそばの香りはなく、まるで細長く切ったちくわぶを食っているようだし、そばの湯きりが甘いのか、ツユは薄いというより水っぽい。
美味しくないそばに当たるのは珍しくないが、不味いそばを食べたのは何年振りだろう。
十数年前に千葉県某線のM駅で食べたのが最後だった気がする。
長年通い続けたが、もうこ こでそばを食べることはあるまい。
馴染みの店が減ってしまったのが残念でならない変態オヤジであった。
かつての同僚にして同期だったM氏と呑んだ。
実に十数年振りの再会である。
私とM氏は同期入社の間柄であるが、仕事面でも人格面でも、私如きは到底及ばない程の人物である。
M氏の在職中、私はずっと彼を目標に頑張ってきた。
M氏のようになりたい、M氏に負けたくない……。
今の私があるのは、M氏のお蔭であると言っても過言ではない。
夕刻から呑み始め、再会を喜び合ってから互いの近況報告に始まり、昔話に花を咲かせているうちに数時間があっという間に過ぎ、気が付けばラストオーダーの時間になっていた。
店を出て、当時と変わらぬ笑顔のM氏に再会を約束して別れた私は、在来線のホームに向かいながら独り考えていた。
『……Mさんにはやっぱりかなわないな……』
当時とは違う道を歩んでおられるM氏に、当時と変わらぬ尊敬の念を抱き ながら電車に乗り込む変態オヤジであった。
実に十数年振りの再会である。
私とM氏は同期入社の間柄であるが、仕事面でも人格面でも、私如きは到底及ばない程の人物である。
M氏の在職中、私はずっと彼を目標に頑張ってきた。
M氏のようになりたい、M氏に負けたくない……。
今の私があるのは、M氏のお蔭であると言っても過言ではない。
夕刻から呑み始め、再会を喜び合ってから互いの近況報告に始まり、昔話に花を咲かせているうちに数時間があっという間に過ぎ、気が付けばラストオーダーの時間になっていた。
店を出て、当時と変わらぬ笑顔のM氏に再会を約束して別れた私は、在来線のホームに向かいながら独り考えていた。
『……Mさんにはやっぱりかなわないな……』
当時とは違う道を歩んでおられるM氏に、当時と変わらぬ尊敬の念を抱き ながら電車に乗り込む変態オヤジであった。
ここは茨城県某所。
このフレーズを使うのも久し振りだなぁ。
ホテル暮らしはしていないが。
仕事場の喫煙所は屋外、駐車場の脇にある。
一服するために外へ出た私は、隣接するビルで飼われて(?)いる野良猫を見るのが密かな楽しみだったりする。
夕方近くに外へ出た私は、タバコに火を点けながら周囲を観察していた。
メッシュフェンスの向こう側にキジトラ発見。
暑さのせいか、だらけた格好はしているものの、その瞳は大きく見開かれ、耳は頭の脇に張り付いていた。
これは警戒している証拠である。
私はキジトラに対してやや斜めに立ち、半目にして顔を横に向ける。
猫にとって、身体を正面に向けて真っ直ぐ目を見つめる動作は、猛烈な敵意を意味する。
これに対し、顔をややそむけて半ば目を閉じる動作は、敵意がないこと及び警戒の必要はないのだというアピールになる。
少しすると、キジトラは見開いていた目を半ば閉じ、横を向いて警戒心を解き始めた。
これで大丈夫だ。
1メートルと離れていない場所にしゃがみ込み、タバコが燃え尽きるまで半目のまま見つめ合っていたが、キジトラは逃げなかった。
野良猫とのコミュニケーションに成功した私は、気分良く仕事場に戻った。
後でトイレに行った際、鏡に映る半目の顔が気色悪さ満点だった事に驚愕する変態オヤジであった。
このフレーズを使うのも久し振りだなぁ。
ホテル暮らしはしていないが。
仕事場の喫煙所は屋外、駐車場の脇にある。
一服するために外へ出た私は、隣接するビルで飼われて(?)いる野良猫を見るのが密かな楽しみだったりする。
夕方近くに外へ出た私は、タバコに火を点けながら周囲を観察していた。
メッシュフェンスの向こう側にキジトラ発見。
暑さのせいか、だらけた格好はしているものの、その瞳は大きく見開かれ、耳は頭の脇に張り付いていた。
これは警戒している証拠である。
私はキジトラに対してやや斜めに立ち、半目にして顔を横に向ける。
猫にとって、身体を正面に向けて真っ直ぐ目を見つめる動作は、猛烈な敵意を意味する。
これに対し、顔をややそむけて半ば目を閉じる動作は、敵意がないこと及び警戒の必要はないのだというアピールになる。
少しすると、キジトラは見開いていた目を半ば閉じ、横を向いて警戒心を解き始めた。
これで大丈夫だ。
1メートルと離れていない場所にしゃがみ込み、タバコが燃え尽きるまで半目のまま見つめ合っていたが、キジトラは逃げなかった。
野良猫とのコミュニケーションに成功した私は、気分良く仕事場に戻った。
後でトイレに行った際、鏡に映る半目の顔が気色悪さ満点だった事に驚愕する変態オヤジであった。
『○○なんだから××するのは当然』という言葉をよく耳にする。
『仕事なんだから残業するのは当然』
『仕事なんだから長期出張は当然』
『親なんだから子供を養うのは当然』等々々…。
だが、こういう言葉を本来口にすべきなのは、残業をしている者、長期出張をしている者、子供を養っている親であって、残業をしない者、長期出張をしない者、養われている子供では決してない。
でかいことを吹くなら、まずはおまえが残業しろ。長期出張に行け。親になって子供を養え。
おまえらがどれだけご大層な身分なのか知らぬが、自分ではやりもしない、できもしないのに安易に『当然』だなどという言葉を口にするな。
その行為は実際にそれらをやっている者に対する冒涜であろう。
今日の私はすこぶる機嫌が悪い。
せいぜい口のきき方に気を付けるがいい。
『仕事なんだから残業するのは当然』
『仕事なんだから長期出張は当然』
『親なんだから子供を養うのは当然』等々々…。
だが、こういう言葉を本来口にすべきなのは、残業をしている者、長期出張をしている者、子供を養っている親であって、残業をしない者、長期出張をしない者、養われている子供では決してない。
でかいことを吹くなら、まずはおまえが残業しろ。長期出張に行け。親になって子供を養え。
おまえらがどれだけご大層な身分なのか知らぬが、自分ではやりもしない、できもしないのに安易に『当然』だなどという言葉を口にするな。
その行為は実際にそれらをやっている者に対する冒涜であろう。
今日の私はすこぶる機嫌が悪い。
せいぜい口のきき方に気を付けるがいい。