その日、オレは家電(イエデン)の子機から短縮番号でかけたはずだった。
何も呼び出し音が一切鳴らずいきなり、
『はい、こちらは混線したエラー回線です、偶然こちらの回線に繋がりました。
おめでとうございます、阿瀬等世流(アセラ セル)さん、こちらの回線に繋がったのは阿瀬等さんで丁度50人目となります』
相手側はなぜかオレの名前を知っていて更に勝手に話し始めてきた。
まるでコールセンターの女性のように……?
「え⁉️ す、すみません!」
オレは慌てて家電の子機を切ろうとしたが。
『謝ることはありません、もう1度確認しますが、あなたは阿瀬等世流(アセラ セル)さんで間違いありませんでしょうか?』
尚も相手側は話しかけてくる。
「はい、そうですが……なぜオレの名前を知っているんですか?」
オレは相手側に尋ねた。
『何でも知ってます。
阿瀬等世流さん、29歳独身、会社員、彼女なし、そしてあなた様で50人目となった記念として、ひとつだけ何でも願いを叶えることが出来ます』
相手側は名前だけではなく、まさかの全てオレのデータを間違いなく言いきる!
なのにまさかのオレで50人目って……そして願いごと?
混乱気味になるオレ。
「えーと、偶然だけどその回線がたまたまそちらへかかってしまった人数がオレで50人目……? で、それで願いごとって、その……それは何でも叶えられますか?」
『はい、何でもです』
オレが混乱しながら絞り出した問いも一瞬で返事がきて!
早っ!
「これは例えですが、例えばですよ? お金持ちなれるって言ったら…?」
『もちろん、叶えられます』
「イケ女と付き合えるって言ったら? どうなりますか?」
『その通り付き合えます』
「ええ⁉️」
まさかの事もなげに言われてしまい……
『それにしますか?』
ちょっと考え込むと暇を与えて貰えずオレは慌てる。
そして、
「いえいえ、あの……どらちもっていうのはありですか?」
一応尋ねてみた。
『どらちもですか?』
やはり電話の向こう側からは戸惑いの声が……
「はい、両方ってわけには?」
更にオレは尋ねる。
すると、
『誠に申し訳ございません、両方は無理ですね、どちらか一方だけですと、その通りに叶えることが出来ます』
やはりな断られてしまった。
「はあ~~それなら、別に良いです、特に叶えて貰うこともないので、では」
電話を切ろうとしたところで、
『お待ちください』
まさかのオレは引き留められてしまい……
『こちらの回線は1度切ると2度と繋がることはない回線です。
50人目なのですからぜひ利用してください』
「えーと……それは何か対価とか代償とかあるものだったり……?」
オレは疑り深かった。
ドラマとかではそういうのがありがちだから、しっかり聞いておかないと。
『ご安心下さい、対価や代償は一切ありません、しかしながら……』
え? 何? 何かあるのか!?
『叶えられたものの未来がどうなるかはあなた次第です。
良くなるものも悪くなるものもです。
ですので決して慢心しないように……』
「ふうん……」
何だそれぐらいのことか。
オレはその時は何となく軽く考えてしまった。
『それを踏まえて、こちらから2つの特別オプションを用意しました。
1つ目はお金はあるけれどイケ女じゃない相手と付き合える、
2つ目はお金はないけれどイケ女と付き合えるどちらかを選ぶというものですが、いかがでしょう?』
ええ~~!?
「どちらかだけ……ですよね? 他はないんですか?」
『申し訳ございません、オプションは以上です。
他に願いごとがあればいってくだされば出来ますが、とにかく願いごとは1つにしてください』
「そう……ですか~~~~」
やはり1つか。
そしてオレが導き出した選択は、
「じゃあ、お金はなくてもイケ女と付き合えるのを選択しますっ!」
『かしこまりました、では近日中にご用意致しますのでお待ちください。
では本日は誠にありがとうございました、良い人生をお送り下さいませ、失礼します』
すると出だしと同じく繋がる時もいきなり繋がり、切れる時もいきなり切れてしまった。
「何これ……何なんだろう?」
そして数分後、
ピンポーーンとインターホンの音が……
オレが誰だろう? と出ると、
「わあ!」
そこには芸能活動をしてそうなロンヘアでスレンダーなイケ女が立っていた!