魔女の娘のおとしまえ⑪軽石乃亜の代償は… | いろいろしぃーのブログ

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前回分



「……だ、代償……? 一体、どんな貸しがあるんだよ…」


軽石乃亜(カルイシ ノア)は椅子が斜めになりながらも声を出す。


「ということはあり過ぎて思い出せないということで良いかしらね?


まー思い出したとして、あなたの力で返せるとは到底思えないもの」


「つーかよ~~いい加減、ここから降ろしてくんない? オバサン……うわ~~!」


とうとう椅子は更に傾き、横向きになってしまう!


「す……すみません! ごめんなさい! 美しいお姉さん!」


乃亜は訂正するものの……


椅子の傾きは直らなかった。


「いいじゃない、そのままで斜めより楽じゃない?」


魔女は不敵に笑む。


「……いや、それよりこの状態やめてくれないかな?」


乃亜は真横になったまま動けない。


「だから、あなた次第よ、その状態でいるか、それとも過去に戻り借りを作らないようにするかはね」


過去?


乃亜はいぶかしがる。


そして魔女は続けて……


「過去に戻る場合は失敗する度に代償を頂くことになるけれど。


そして、その状態で間地菜乃に対する様々なことを思い出せたら、あなたからの代償は極力とらないであげるわ


「えっ⁉️ マジかよ!」


思わず動き落ちそうになる。


天井際にいると意外と高く感じて……


「ちょっと時間をくれ」と乃亜。


「それはいくらでも待てるわ、構わないわよ」


魔女は動じない。


乃亜は椅子ごと真横になったまま思い出す。


……間地菜乃。


オレと同じ会社に入ってきた。


視力が悪くてメガネだったが、乃亜がコンタクトレンズにしろと言ったら、本当に実行した女。


コンタクトレンズにしたら、意外とましになり……


そういえばどことなく、母親に似てるような気がしてきた。



乃亜は最初の頃の菜乃を思い浮かべる。


車ははっきり言ってオレより高い車に乗っていて、しょっちゅう車を出させてもらったし、更に自分も運転して乗り回していた。


ただ……だんだん重く感じてきて……


したい時だけ呼び出していた。


その内、仕事を転職したら転職先で出会いがあって、菜乃を捨て……


あ……


「そういうこと~~よく思い出したわね? 車をさんざん乗り付けて……それから、体だけ求めて、更に他の女性にのりかえたと、


じゃあ、それ全部返してくれるかしら?


魔女の顔が突然乃亜の目の前に現れて……!


え!? 今、どういう空間になっているんだと、乃亜は混乱していた。


「だから言ったでしょう? 魔女だとね」


魔女は乃亜と同じ向きに真横に浮いていて……!


「金か! ……それでおとしまえがつくなら仕方ない……」


「お金なんていらないわ。


わたしが欲しいものは、娘のおとしまえをつける為に必要な代償なのよ!


魔女は力強く言った。


「じゃあ、オレの車を持っていけばいい! それから……それから……そのオレが代わりにあんたの相手になってやるっていうのは?」


乃亜は更にそう言うと……


「……わたしの娘のおとしまえはそんなものじゃ足りないわよ。


わたしがあなたから頂く代償は……あなたの家族! それだけよ」


乃亜に衝撃が走る!


「ええ!? 嘘だろう? そこまでしないだろう? 冗談だろう? 家族は関係ないだろう?」


「残念だけど……選んだのはあなたよ、結局、あなたは自分を差し出せなかったんだものね、それがあなたの本心よね」


「待ってくれ! これは悪い冗談だろ? ただの夢なんだろう?」


「夢かどうかはあなた自身で確かめなさいな、もう2度と会うことはないと思うわ、さようなら」


パチン!


目の前に火花が散った気がして、ハッと我に返った時は……


乃亜は車の運転中で……


そして家族を全員乗せて、そのままなぜなのか崖から今まさに転落して……!



気づいた時には乃亜は意識だけがあり……


何とかまわりを見渡すと、妻も子供ふたりも無惨にも血だらけで息絶えていた。


そして乃亜は激痛が走り、まさかと恐る恐る下を……下半身を見ると、そこには血がもの凄く広がっていて……!


乃亜は絶望と苦痛と激痛という、いくつもの衝撃を一気に味わい声にならない声をあげていた。



その様子をまたもや遠くから見つめる魔女がいて……


「おとしまえつけさせてもらったわ、極力取らなかったでしょう?


1ヶ所以外は。


生きるって時には地獄かもね」



魔女は……間地菜乃の母親と名乗る魔女は3つの魂と男の局部を淡々と持ち去って行った。



続き


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