前回分
「もういいかしら?」
気づくと、目の前には魔女が立っていた。
「……待って、下さい! 今度こそおみやげを渡します! 渡すからワンチャン下さい!」
兆枝善名(チョウシ ヨイナ)は土下座する。
しかし魔女は、
「……それは絶対ないわよ。
渡せないからこそ事前に機会をこれ程作ってもことごとくなんだから、出来るわけないでしょう!」
頑なだった。
「そんな~~」
善名は泣きそうになる。
「……それならば、もうひとつミッションを課そうとするとしたら……」
魔女は考え込みながら言い……
「え、あるんですか?」
善名の目は希望に輝く。
魔女は冷たい視線を送りながら、
「あるけれど、1番難なものだから……まどろっこしいし、未来を見てこようと思うわ」
「え、未来って……?」
「未来を見た方が、失敗か成功かすぐ判るじゃないの。
もし、それで失敗したらあなたからおとしまえとして代償を頂くわ」
魔女は言った。
「成功したら?」と善名。
「何ともないわね、当たり前のことを聞かないでくれるかしら」
魔女は冷ややかな目で善名を見つめる。
「あの……どんなミッションかは教えてくれますか?」
善名は言うと、
「そうだったわね、それを言わないことには未来すら見れないのよね。
それはね……兆枝善名が他の友人に送るはずだったメッセージを間違えて、間地菜乃に送ったメッセが元で逆ギレしないこと」
「え……」
善名は絶望した。
自分が間違えて他の友達に送るメッセを菜乃に間違えて送ってしまい、逆ギレしたのを……
あれはどう考えても自分が悪かったのに……
それがきっかけで、菜乃とは疎遠になってしまったのだ。
「もう会うのはこれが最後ね、さようなら」
魔女はそう言うと消えてしまい……!
善名は待ってとも言えないままだった。
しばらくすると突然、善名の口に激痛が走る。
その痛みは口全体に拡がり……
痛さのあまりしゃべれなくなった。
何と善名の口いっぱいに無数の口内炎が発生する。
それからしばらくすると、口を抑えていた指先から消え始めて、それはだんだん肩に向かっていく。
何と両腕とも消失してしまい……!
それだけで終わらず、次は足も次第に消えてゆき……
両足も失い体は見事に仰向けになってしまった。
助けてとも叫べない!
兆枝善名に恐怖が押し寄せる!
しゃべれないまま悟る。
私はやっぱり失敗したんだと……
仰向けになったまま。
魔女はもう別の場所にいた。
そして今しがた届いた両腕と両足がそこにあるのを見つめる。
「……あなたの災いだけの口はやっぱり使えないし、使いたくないわね。
多分、菜乃もそれだけは拒むはず……それならば行動するのに必要な手足を頂いたわよ。
だって、あなた、口ばかりで行動出来ないんだから、必要ないでしょう?
まー今まで過去をあらがった者など見たことないもの。
命があるだけ良かったと思いなさいな、それともかえって生き地獄かしらね?」
魔女はそう呟くと、手足を宙に浮かして持ち去って行った。
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