最初から
それから家族みんなで食事をすることになり、ファミレスへ行く。
和食もの、グリル系、定食、麺類などなど……
わりと何でも揃っているようで。
「何でもあるからいいねー」
と長男の嫁さん。
「ハンバーグとエビフライ!」
長男の息子が主張する。
小さい子が食べる定番だ。
おじいちゃん(父)、おばあちゃん(母)はやはり和食系の天ぷらなりそばやご飯つきのもの……
長男はグリル系にちょっとしたステーキにウィンナー、フライドポテト、ニンジンのソテー。
その嫁さんはカルボナーラのパスタ、と次々に決まり……
そして……富楽岳生(フラク タケオ)は……
「な~~んだか、まどろっこしい……中華みたいにさー、回る円卓みたいになって、みんなでどんなもんもタダで食べられたらいいのにな~~」
思わず心の中で呟こうとしたことをついに表だって口から出てしまい、慌てて岳生は口を抑えるが……
当たり前だが遅かった。
「岳生、お前、何言ってんだよ~~、いい加減にしろよ!」
長男が注意してきた。
「ここは高級中華屋さんじゃないんだから何を言い出すの? あんたが主役じゃないだから」
母親まであきれ気味にぼやく。
みんなに非難気味に言われて、慌てて謝ろうとした時だった。
「すみませんがお客様、あちらの個室へ移動して頂きますか?」
店員さんがやってきてそう声をかけてきて……
もちろん、富楽家はみんな、え? という顔になる。
「まだ何も頼んでませんけど?」
長男が戸惑いながら言うと、
「あちらにご所望の中華料理をご用意されております、どうぞお召し上がりください」
みんなはええっ!? となりながら個室を恐る恐る見ると、
「わ~~! 回る円卓、中華料理がもうそろってる!」
岳生が口に出したことが全て目の前に用意されていた!
甥っ子は、
「エビのあんかけの焼きそばもある~~! ボク、これでいい~~」
まさかの気に入り、大人達は、
「この量のご馳走……一体いくらになるのかしら?」
岳生の母親は怪訝(ケゲン)がる。
すると、
「あ、全て無料です、お代は結構です」
と店員はサラッと答えた。
みんなは驚くと、
「ええ~~!? ど、どれも? 全部食べてタダ?」
一応疑いながら確認。
「もちろんでございます」
その言葉にゴーサインが出たかのように、みんなは席に着くとガツガツ食べ出した。
チンジャオロース、回鍋肉(ホイコーロー)、麻婆豆腐、ピータン、鶏の唐揚げ……最後にまさかのラーメンまで……
みんなお腹いっぱいで……そして本当にお金は払わずに済んだのだった。
「もしかして、これって……」
あのブラック飴の効果!?
岳生は気づく。
オレが……心の中で思っていることを口に出すともしかして、それが具体化して実現するってこと?
岳生はまた試すことにする。
「お腹が苦しいから、丁度良くスッキリにならないかな~~」
途端、岳生と家族はお腹を見つめる。
「ウソみたいだけど、お腹が凄いポンポンだったのにいきなりスッキリした……? 何で?」
長男は驚く。
「これだったらまだアイスクリーム飲み物とか入りそう」
長男の嫁さんがそう言う。
その様子を見て、
「すげえ、オレの言葉は魔法じゃん、あのじいさんいいもんくれたな~~」
岳生はニヤリとする。
あのブラック飴の効果は寝るまであり、よく眠れるを最後に翌朝にはブラック飴の効果は消えていた。
続き