苦情袋を寝室へ持っていくと、枕元に置いて眠る房家天乃。
そして……
次に天乃が気づいた時は、何もない世界の中にたたずんでいた。
「どこ? ここは……」
辺りを見回しても灰色の空間しかない。
その時、
「……我に会いたいと書いてあったな」
声がする方へ天乃は振り向くと、そこに1頭の獏がいつの間にか自分のすぐ目の前にいて、ビックリする。
「ハア……もしかしてしゃべったのは……」
天乃は指をさしながら、
「我だ、我は悪夢の代わりに愚痴を食べる獏、また今回も特例なことになってしまうとはな……」
獏は落ち着いた感じで言ってみせる。
「悪夢の代わりに愚痴を食べる……獏、じゃああなたが製造者」
「そういうことだ」
「獏だったなんて……」
天乃は言葉がうまく出てこない。
「グチつぼを全く使わない人間はヌシが初めてだ。
しかも苦情袋も半分苦情で、いや…半分以上は要望だな」
「要望を書くと通らない? のよね」
天乃は探る。
「本来はな、話による、ヌシの話を聞いてから判断しようと思ってな。
最後に我に会いたいと書かれていたしな…」
しっかり獏に読まれていた。
「いろいろ、聞きたいことがあって、その……私以外で苦情承りますを使っている人を知りたいのだけれど……」
「あーそれも苦情袋の紙に書かれていたな、知りたいというのならまた別の選択肢がある。
通常は我に呼び出される場合は、グチつぼを愚痴以外の願い事をしようとした時、それから苦情袋を苦情を書けなかった時。
ヌシの場合は、何を1番に優先するかで変わる。
まだ使っていないグチつぼで時を戻すか、それとも苦情袋の苦情を書けなかったことによりルール違反を受け入れるか、
そして苦情袋でとりあえず苦情に近いものだけ承ることにするのか。
その見返りに何を我によこすのか?
ちなみに最後の選択肢には、我の助手として支えるかというのもある。
これを選ぶと、もう現実世界へは戻れなくなる。
ただし、ヌシの気になる誰が苦情承りますを使っているのかも知ることが出来るし、夢の中だけだが、話したい相手と話をすることも出来る」
「え!?」
天乃は最後の選択肢に興味を覚えていた。
「あなたの助手になれば、誰とでも話すことが出来るって本当!?」
「ああ、夢の中だけだがな……」
獏も念をおす。
天乃は考えると……
「あの……私、あなたの助手をします!」
まさかの最後の選択肢を選んでいた!
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