その日はそこから久地勇三は忙しくなり、グチつぼのことなどほぼ忘れるぐらいだった。
そして……
「宇留瀬君、今会社にいる? いるんだったら悪いんだけどさ、部品載せたいから近くまで代わりにぼくの営業車を着けておいてくれないか?」
他の車で出ていた久地は宇留瀬に電話をした。
「はい」と返事をする宇留瀬。
宇留瀬は言われた通り久地の営業車に乗り込む。
その時偶然、後部座席に横たわっていたグチつぼを宇留瀬がめざとく見つけてしまった!
そしてそのグチつぼを手にすると、
「わ~~何だこれ? グチつぼって……」
宇留瀬はグチつぼと読んで驚く!
「え、もしかしてこれが……」
都市伝説で聞いたことがあるあの……?
久地はつい笑ってしまっていた。
「ウソだろー! よりによって久地ジジイが入手するなんて!」
でも、なぜかこのつぼには栓が無くて……
「栓がない! 何で?」
一応宇留瀬はついつい探すと、栓が足元に転がっているのを見つけた。
「何だあるじゃんよ、無用心! あー何だよ、あの久地ジジイは!
……隣にいるからって、ベラベラベラベラ俺にばかりしゃべってきやがって、黙ってろってんだ!
しかも自分ばかり俺にいろいろ頼みやがってふざけんじゃねーよ!
みんなにどれだけ嫌われているのが判らねーから一層のこと、みんながどう思っているか久地ジジイへの本音だけ聞こえればいいのさ!」
宇留瀬依那は普段の不満が爆発したかのようにペラペラと、そのつぼに向かってぶちまけた。
その勢いで栓をすると、何だかすっきりする宇留瀬。
「あー何かスッゲエ、爽快な気分! これいいなーストレス解消するわ」
そうして元の後部座席にそのグチつぼを戻した。
使用中と栓に文字が浮かび上がる。
そして肝心な久地はまさか栓が開いていて、更にそれを勝手に宇留瀬が使用中にしていたとは夢にも思わず……
更に運の悪いことに、久地はグチつぼを営業車に残したまま帰路についてしまったのだ!
続き