そうして大学のキャンパスへ入ると、
「君、何年生? サークルはどこかに入ってる?」
またもやいろんな男子から話しかけられるはめに……
何とかかいくぐって、講義室へ向かう。
「あれ? 君、見かけない娘(コ)だね、名前は?」
「音名……ですけど」
「音名さんかー、ねー一緒に学食行かない?」
やはりまた声をかけられることになるしいか。
「しいかちゃん…」
しいかの友達が神妙そうな顔で、しいかを見た。
「な、何? まりちゃん」
「急に変わっちゃったね」
と、しいかの友達の水田まりは呟くように言った。
水田まりも、コンタクトレンズを着ける前のしいかと同じように、黒髪にメガネな女子で……
「お、おかしいかな?」
慌てるしいか。
「ううん、凄いイイけど、私、一緒にいるのが恥ずかしい……」
そう言うと水田まりは先にバタバタと走って行ってしまった。
「そ、そんな~~」
とにかく、男性に話しかけられるしいか。
その代わりに仲良くしていた友達が去ってしまうことに……
うちに帰ると、
「どうかしたの? その格好!」
しいかの母親が最初にしいかの様子を見て驚愕する。
「変かな?」
「ううん、変じゃないわ! 逆に今までは地味地味過ぎてずっと心配だったの。
友達もやっぱり地味だったから~、それにしてもどういう心境の変化なのよ! しいか~」
母親はなぜか喜ばれた。
「……ちょっと成り行きで、ちょっとしたわらしべ長者みたいな目にあって……」
わらしべ長者とは違うかと心の中で自分にツッコむ、しいか。
「わらしべ……? なあに、それ?」
ハッとして、
「な、何でもない!」
しいかは自分の部屋に入った。
「ど、どうして…こんなことに……?」
しいかが途方に暮れそうになった時だった。
あのコンタクトレンズ屋で貰ったコンタクトレンズのケースを入れられた紙袋に、コンタクトレンズ・バンジと表記されて、
そこには、お客様相談センターへの電話番号が明記されていた。
「あ、こんなところに電話番号がっ」
しいかは電話番号を見つけると、さっそく電話をしてみることにした。
コールが何回か聞こえる。
そして、
『はい、コンタクトレンズ バンジ、お客様相談センターでございます』
あのカウンターから挨拶をしてくれたイケ女店員の声にとても酷似していると、しいかは思った。