すると、鏡越しだけだが知らない女性と出会うのぼる。
イキるのぼるにまたもやコンタクトレンズ屋へおもむくと、次はコンタクトレンズの保存液を買うはめになり……
その保存液はコンタクトレンズを保存している間だけ、こちら側の世界へ出せるという更に凄いものだったが……
毎日、コンタクトレンズを保存液に保存する度に伏木かなは現れるので、夜の間だけ幸せを感じるのぼるだった。
もっと、もっととかなと話そうと思うものの、限度があってやはり寝てしまう。
仕事の疲れがある時は、すぐ寝てしまうこともしばしばだった。
それでもそんな毎日を繰り返して、1週間ぐらい経つ頃のこと。
何となく保存液がかなり減っている気がしてきて、難色を示すのぼる。
「あーあ、この保存液、1本だけだからすぐ終わっちまうよ~やべえな~」
あれからのぼるはまたあの不思議なコンタクトレンズ屋のところへ行こうとするものの、そのコンタクトレンズ屋はなぜかいつも閉店していた。
夜行こうとも……
昼間行こうともだった。
「くそっ、何でだよ……」
のぼるはイラだつ。
「もしかして……1本終わるまであの店、開店してくれないとか?」
まるでこちらの様子を見越しているかのようで、少しだけ背筋が寒くなった。
「あーあ、俺ってやつはついついいつものように、コンタクトレンズを洗うのもこの保存液で使っちまってさ~」
のぼるは1本しかないこの保存液でレンズを洗うことまでしてしまい、ますますこの保存液は減っていった。
「1ヶ月持つか待たないかぐらいかー」
ため息混じりでコンタクトレンズを入れようとした時だった。
指がケースに引っ掛かり、まさかのバシャーとコンタクトレンズと保存液ごとひっくり返してしまう!
「うわ~~~っ!!」
みるみる保存液は無くなり、コンタクトレンズは片方はすぐ、見つかるもののもう片方はどこかへ落としてしまった。
「お~~~い!!!!」
叫んだところで元に戻るわけがなく……
何とか片方だけもう1度保存液をつけると、伏木かなは現れるものの会話が出来なくなってしまった!
片方だけだと最初のコンタクトレンズの効力と同じになっていた。
「ええ~~!! 嘘だろう!?」
ショックを受けるのぼる。
伏木かなは困った顔を見せたまま、ただ座っていた。
「よしっ、かなちゃん、待ってて何とかするからね、何とかするから!」
のぼるはメガネをかけて、家を出た。
自転車であのコンタクトレンズ屋へ向かうことに。
「さすがに今度は開店していてくれ! 頼む!」
そう願いながら、のぼるは自転車を走らせた。