何日か前の夕方前、妻と僕はいつもの様にスーパーに買い物がてらのウォーキングに出かけた。まださほど混んでもいない店内を歩きながら、お目当ての品々をカートに入れながら歩く。

 僕らの前を、少女が車椅子を押していた。何でもない光景かと思いきや、少女が車椅子から手を離し、少しだけ距離を取った。そして手を離したままゆっくりと後をついてゆく。すると不思議なことに、誰も押していない車椅子が通路を左へと曲がって行ったのである。僕はとてつもない違和感を感じて、頭の中の情報を整理しようとしたが、追いつかなかった。

 よく見てみると、車椅子に乗っている女性の両足の間に小さな女の子が挟まって立っている。そして、引いているように見えるのだ。ここで合点が入った。おそらくは車椅子を押していた少女が上の女の子で、前に居たのが下の女の子であろう。小学一年生か二年生くらいの背格好だった。

 余りジロジロと見るのも失礼なので、追い越しながら横目でその小さな女の子を見てみた。少し前屈みになって、引き手に少し体重をかけて車椅子を引いている。そして、何やら柔らかい話し声も聞こえる。お母さんが左に曲がってとでも言ったのだろうか。少しずつ左に曲がり始めた。

 僕と妻は温かい気持ちに包まれた。小さな女の子が、大好きなお母さんが怪我か何かで不自由になった時に、一生懸命にお手伝いをしているのだろうと思われた。上の女の子は心配しながらも、いつでもハンドルを握れる距離感で後をついてゆく。下の女の子が一生懸命にお手伝いをしているのを見守りながら。


 怪我や不自由さに見舞われた時にひょっこり現れる子供達の優しさ。


 いつまでもみんなお幸せに。

 そしていつまでも仲良くね。