たごさくの青春記その⑤~高校生活③ | たごさくの本格ミステリー倶楽部&山野草

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島田荘司先生の大ファンで、本格ミステリ一筋ン十年。
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            (横浜・馬車道)

    昔の映画『酒とバラの日々』ではないですが、

       「本と映画とのんの日々」ですニヤリ

 

     『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』より

        皆さん「月が綺麗ですね」

 

じゅんは高校を卒業してから時間を置かずにぼくが勤めるK百貨店に、

いつもつるんでいたM子と友人んの結婚プレゼントを買いに来た。

外商の先輩女子事務員の方に「ガールフレンドが来てるよ」と云われビックリ叫び

何をして何の言葉を交わしたのか全然憶えていない。

時間は無情ですね。

肝心な事も全部忘れ去られてしまう。

 

10年前の同窓会があってじゅんも参加していたので、

その時の事や応援団の事などを聴いたのだが。

『憶えてない」と云われかなりショックを受けた叫び

でもカラオケも一緒に歌えて話が出来て楽しい同窓会でしたニヤリ

君は22歳くらいで結婚したとの事で・・・えーん

           

 

 

では、アンサーのシュートショートです。

      「アイツはいつも、もぞもぞと」

 あたしが入学したのは地元の結構有名な公立高校。勿論、男女共学。なんか素敵なことが起こらないかといつも思ってた。でも平々凡々な日常は過ぎて行った。そして2年生のクラス替えがでアイツと同じクラスになった。あいつは入学した時から気になってたいたが、それ以上もそれ以下でもなかった。でも、同じクラスになってから、もぞもぞと何かが蠢き始めた。
 気になり始めてからはそっとアイツを盗み見するのが日課になった。見る時に思わず「ドキドキ」で顔が火照った。
 夏休みになった。アイツの町はひと駅向こうだ。出かける勇気も無いので悶々と過ごした。そんな夏休みは初めてだった。
 告白をするのは女子として、そんな恥ずかしい事は出来ない。
 
 そんな事を思って悩んでいた時にアタシの学校の甲子園出場が決まった。誰も予測をしていなかった出来事で、急遽応援団を作ることになった。そしてスカウトが始まる。あたしもその応援団の一人になった。
 そうだ、このチャンスを利用しない手は無いアイツに声をかけよう。思うが早いか即実行。
「マツバクン!応援部に入ってよう?」。
「えー、そんなんようせんわ」の返事。
それにもめげず「一緒にやろかよー」とあたし。
「なんで、ぼくなんよぅ?・・・」
このチャンスを逃せないので「ネー、やろかよー」と親友のミヤコと一緒にアイツに迫る。
 でも粘ったのだがアイツはもぞもぞ、グニャグニャと煮え切らない態度で逃げられてしまった。
 アタシは少し涙目になった。
 凄いチャンスを逃がしてからは、なかなかアイツに話しかけるチャンスは訪れない。あっても挨拶くらい。
 アイツはまるで蛸壺の中に入ったタコのように警戒をして近寄ってこない。
 季節は過ぎたそんなある日、駅のプラットフォームで下校のために列車を待っていたアイツと出くわした。アタシはアイツと反対方向のホームで親類の家に行くために列車を待っていた。その当時は列車の線路は単線。
 アイツと目が合った。何か云いたそうな素振りだったが素早く目を逸らされた。

 結局、アイツとは卒業まで何の進展もなく過ごした。これで終わりにはしたくなかったので、いろいろ考えたが実行は出来なかった。
 3学期の最後の試験が済むと殆ど学校に行かなくなる。久しぶりに学校に行った時思い切ってアイツの傍に行く。アイツは声をかける前に振り向いて、ビックリした様子で何故か微苦笑をした。
 「マツバ君は何処に就職すんの?教えてョしてアタシは聞いた。緊張して顔が強張るのが判る。でもアイツは相変わらず苦笑いをしている。
「なによーお別れが近いんやから、勇気出して聞いたんやのに」。
 その後アイツはなにか云ったようだけど、いつもの消え入りそうな声で「ごにょごにょ」とハッキリしない声で云うので聞き取れなかった。

それ以来、卒業式までと卒業式の当日は何の事件も起きず別れた。

 あれから40年が過ぎた。
「ケンちゃん、ご飯できたでー」と台所からアタシが叫ぶ。
 ケンちゃんは相変わらず「ごにょごにょ」と不明瞭な声で返事が返ってくる。

 ケンちゃんは卒業して百貨店に勤めた。
 アタシは地元の信用金庫に就職をした。
 二十二歳の時にケンちゃんの勤める百貨店に友人の結婚式のお祝いの品を買いに行った。ケンちゃんはネクタイをして凄くパリッとしていて見違えた。もともとハンサムでかっこ良かったのが倍増していた。卒業後にした同窓会にも来ていたが、ヌーボーとしてボーっとしてる感が満載。でもそんなところがキュンとして好きだったのだ。それから3年で180°くらいの変化だった。声にしても、いつも何を云っているかわからない声のボリュームだったが、垢抜けてシャープさが出ていた。
 実はアタシはこの時、勝負を賭けたのだ。これでアイツと何も起こらなければ諦めようて、お見合い結婚でもしようと思っていた。何故なら、アイツはアタシが好きだと云う事を判っていると思っていた。いや、確信していた。そしてアイツもアタシを好きだと云う事をアタシは判っていた。
 この時、勝負のサイは投げられたのだ。



 40年経って、また「もぞもぞ、ごにょごにょ」のケンちゃんになってしまったが、今も大好きだ。

 

         おわり

 

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