[将棋]昨日の白玲戦最終局(大盤解説会参加) | 福間香奈さんを応援するブログ!

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 昨日行われた白玲戦第7局は、挑戦者の西山女流三冠が勝って4勝3敗でタイトルを奪還し、里見白玲は残念ながら失冠となってしまいました。私は里見さんを応援しているから当然勝つと信じているということ以上に、なんとなく里見さんが勝ってくれるのではないかと思っていたので、昨日はなんだか夢を見ているようで、強いショックを受けたというよりむしろ、現実をなかなか受け入れにくい心境でした。

 

大盤解説会の受付は13:30からでしたが、1時間前には現地の浅草ビューホテルに到着。それでも3番目となってしまいましたが、最前列の席は余裕でキープ出来ました。

14時になって、解説の金井六段と聞き手の井道女流二段が登場。スクリーンに映ってるように先手が▲5六歩と突いた局面。一局終わってみると、先手が▲8六角と覗いて後手が6四に歩が上がれなくなった機敏な一手、さらに後手が△9三銀、△8四銀と上がる駒組みの直後の一手。ここまでの構想を含めてかもしれませんが、これ以降は先手が盤石に指し続け、後手に挽回のチャンスがありませんでした。

聞き手の井道さん。いつもと変わらず?ややオーバーに自虐的謙遜する発言も織り交ぜながらも、全体的には明るく、上手に解説者の話を引き出していました。

永遠の好青年という雰囲気の金井さん。この日の大盤解説会が終了した後、会場外の廊下で来場したお客さんに対して、金井さんと井道さんが揃って人が通るたびに何度も深々と頭を下げてお礼方々お見送りをしてくれました。(こういうところで人柄が出るというか素晴らしい。)

1回目の休憩後は本日の立会人の深浦九段が登場。ちょうど後方スクリーンでは▲9五角の局面が見えていますが、ここに至ってはっきり先手好調の模様。指し手長考の合間にエピソードを挟み、男性棋戦では(藤井さんが強くて)タイトル戦が最終局までなかなか進まないこと、西山さんが朝日杯など男性棋戦でも活躍しているとの話の中で、お弟子さんがどちらも飛ばされたwと師弟自虐ネタを入れ、笑いを誘っておりました。深浦九段と佐々木大地七段は互いにジョークを飛ばせるような関係ながら、裏返せば強い信頼関係があるのと、師弟二人とも熱い魂を持った、そういう人柄だからこそジョークが軽妙に聞こえるように思います。

あと大盤解説会で、解説者と会場の参加者でやりとりをすることもあるのですが、あまりにも口数が多い人に対し、一度だけ順番に話しますからと窘める場面もありました。(山下達郎さんがコンサートで一緒に歌っているお客さんに、観客はあなたの歌を聴きに来たわけでないと注意したエピソードがありますが、まさにそれ。いいタイミングで短く質問したり、具体的な指し手を示して聞いたりするのは場に一体感が出来て良いと思いますが、それ以上はちょっと...。どんなに偉い人、強い人でも、別にあなたの将棋の話を聞きにお金を払って会場に行ってる訳ではないので。ただ、棋士の方々もこのくらいが常識的なラインですとも示しにくいし、悪気はなく楽しんで来ている人ではあると思うので強く注意はしにくいかも。)

 

 さてさて、この日は対局終了後に両対局者は大盤解説会場には現れず、西山新白玲が別の部屋で記者インタビューを受けていたようです。そう言えば、これまでも女流タイトル戦の番勝負途中で決着局になることはありましたが(そういう時は私の知る限り大盤解説会場に来ていたのではと思う)、女流タイトル戦の最終局は将棋会館で行われることが多く(倉敷藤花以外は全て?)、今日はレアケースだったのかなと。

 

 

 対局後の里見さんの表情はYouTubeの終局後の盤を囲んでのインタビューで見るくらいしか確かめようがありませんが、どうだったでしょうか。御本人からは、「いまの実力だと思うので、見つめ直すいい機会になったかなと思います」とのことでしたが、私は2つのことを思っています。

 一つ目ですが、今日の対局日程はやはり少し厳しかった。常々、中1日はナンセンスと書き続けていますが、今回の中2日はどうだったのか?前局25日が東京で女流王座の開幕局。白玲戦も続いて東京で27日が前夜祭、28日が最終局。大阪に帰られたのか、東京でホテル住まいだったかなどは分かりませんが、落ち着いて準備するのは難しい部分があったのではないかなと。特に女流王座戦は相手が加藤桃子女流四段なので確実に対抗形ですし、開幕戦なので先後両パターンの準備をしたはずです。対する西山さんも25日に清麗戦予選の対局がありましたが、相手が榊女流2級でそんなに入念な準備をするかどうかは...(ちょっと失礼かもしれませんが、キャリア差が段違いなので。)あと関東なら移動は無いでしょうし。もちろん、最終局に至る以前では並行して行われた女流王将戦で西山さんが自身の力によって連勝で早期決着をつけたということもあり、言い出したらキリはないかもしれませんが。

 それと振り駒で西山さんが先手になり、今回のシリーズで3勝3敗ながら里見さんの先手番で中飛車含みで2筋に戻る作戦が序中盤まではずっとうまく行っていたので、そこも若干、運不運があったかなと。特に最終局は、西山さんが用意した先手の研究手順からうまく流れをつかんでそのまま決まってしまったので...。

 ということで、対局日程と振り駒の先後の結果を含めて、感覚的に4対6くらいでちょっと不利な状況だったんじゃないかと。もちろん対局者ご本人はそんなことは微塵も漏らしませんが、私はアマチュアブロガーだからこそ自由に書けるという特権で...。ただ、最終局にもつれ込み、その結果として際どい差で勝敗の行方が左右されたとも言える訳で、もしも1勝3敗のまま第5局で押し切られていたら、(ファンであっても)言い訳すら考え出せないでしょうし。そういう意味で、タイトル戦の結果は勝ちか負けのどちらかですが、フルセットだったからこそclose(クロスゲーム)と言えるんだと思います。

 それとこれはさらに蛇足となりますが、現在1~3月の女流名人戦の期間だけ少しタイトル戦が余裕ある日程になっています。女流名人戦は歴史あるとはいえ序列では5番だと思うので、そこは既に聖域でなく、秋のタイトル戦の密日程を少し緩和するように調整できたらいいんじゃないかなと思います。(これは別に里見さんの事に限らず) プロ棋戦の意味が、人間の戦いとして最高の棋譜を作ることにあるなら、対局者の努力のみに負わせることなく、地味ですが対局日程の調整とかも同様に大事かと思います。

 

 二つ目は、女流王座戦の記事で渡辺明九段が書かれていたことに関わります。「トップを続けてきた人間としては、30代前半というのは悩みが出やすく、メンタル・モチベーションという点で疲労感を覚える時期でもある。」 タイトル常連の里見さんにとって、今回の白玲もそれだけの防衛を目標にしていた訳ではないと思われます(賞金はダントツですが)。相対的には、西山さんの方が、元々白玲戦設立の際に西浦会長から当時まだ奨励会員だった西山さんも含めて実力ナンバー1を競う棋戦にしたいということでもあり、また昨年失冠した痛手もあって、これは取り返したい、イッツ・マイン、と思う気持ちは上回っていたかなと。もちろん、これらは相対的なことであって、両者とも短期的な目標と長期的にはより実力を向上させるという目標の両面を掲げ、究極の短期目標は一日一日、一局一局を大事にするということでしょうか。長い目で見れば長期目標をしっかり見据えていることが大事かもしれませんが、そういう漠とした目標のまま同じペースで歩んで行けるのかというのは懸念されます。逆に今回敗れたことで新たに闘志に火がついて結果良しみたいなことがあるのかどうか。この辺はご本人の気持ち次第でしょうから、憶測では書けないですね...。

 

 さて前夜祭での記憶がほとんど無いと一昨日書いて、それは本当なのですが、ある方のお話では6局までの間に里見さんは体調を崩していたこともあったそうで、対する西山さんも昨日のインタビューで体調を崩していた日もあったと。改めて二人とも、やっぱり厳しい戦いを続けていたのかなと。それと清水女流七段と話していた時、里見vs西山戦で2019年の女流王座戦の頃が一番二人の実力差が開いていたのかなと。あの時の失冠は結構、絶望的でしたが、そういう意味では里見さんがよくも追いつき追い抜き返し、そして今は西山さんが抜き返そうとしている状況でしょうか?いずれにしても、お互いに競り合って僅差というのが妙なのかなと。

 

 西山白玲復位おめでとうございます。

 そして最後に、里見さん、いつもギリギリまで頑張って戦ってくれてありがとうございます。昨日の結果は残念でしたが、里見さんは数多くの勝利をもぎ取ってきているのだけれども、同時に何故かいつもこれでもかというほど傷ついて、そこから新たに立ち向かって前進していく、そういう運命の道を歩いているんじゃないかなと。そこが普通の人と違う才能であり、魅力だと思ってます。