[将棋]第12期マイナビ女子オープン五番勝負開幕戦@元湯陣屋 | 福間香奈さんを応援するブログ!

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 昨日2019年4月9日、年休取って神奈川県の鶴巻温泉駅近くにある陣屋で行われたマイナビ女王タイトルを掛けた五番勝負の開幕局、西山女王vs里見女流四冠の大盤解説会に行ってきました。今日10日は一転して私の住んでいる横浜も、朝からずっと雨で気温もぐっと下がり冬のような肌寒い一日でしたが、昨日はぽかぽかと春の陽気の一日で、途中電車の窓から散り始めた桜をぎりぎり眺めながらピクニックにでも行くようなウキウキした高揚感と、結果がどうなるんだろうかという不安のような落ち着かない気分が混ざったような何とも言えない感じを抱いて、とにかく12時半過ぎ頃には現地へ到着しました。世間的には期が変わったばかりの4月早々の平日で、女流棋戦で超満員になることはないだろうと思いましたが、13時半受付開始、14時から解説会スタートなので、だいたい1時間前位に現地到着で良い頃合いかなと。どっちにしたって、パソコンかスマホで午前中の対局進行状況を棋譜中継で観戦しているので、家に居ても電車に乗ってても同じことなんで。ちなみに陣屋と云えば、里見さんが昔、「情熱大陸」の番組でテレビに出ていたシーンが有名ですが、私自身も3年前の王位戦で羽生vs木村戦第6局を見に行ったことがあります。(今読むと、昔はおかしなこと書いてたなぁと赤面しますが、今もあんまり変わらんか・・・)

 陣屋さんの入り口。左に太鼓が見えますが、単なるお客さんである私が来た時も旅館の人が太鼓をダダダンと鳴らしてくれて、なんだかとっても嬉しい感じ。

 強い日差しで若干白飛びしてますが、西山朋佳女王対里見香奈女流四冠の看板が見えます。仕方のないことですが、タイトル保持者の西山さんの名前が上に・・・。

 行ったことのない人には分かりずらいかもしれませんが、大盤解説会場を取り囲む一辺が階段になっている感じです。この段の上のロビーには升田名人や大山名人はじめとした歴代名士の写真や色紙などが飾ってあります。この階段下の廊下から解説会に来た人の列が始まって、だんだんと階段の上に並んでいくスタイル。ちなみに私は7番でした。人が増えてきたのは、13時15分を回った頃で、階段上にも人がずらり。3年前も同じことを書いていましたが、観客の半分以上は高齢者なので、立って並んで待っているのは辛いし、階段上がるのですらやっとこさなんて人も見かけました。そんなことで、受付開始が当初より5分ほど早まりました。もっと早くても良い気がしますが、それはそれで事前情報と違うと文句を言う人が出てこないとも限らないので運営側も気を使うところですよね。。。ただ今後も含めて、平日観戦に来る人はどう考えても老人が多い訳で。。。そういえば、廊下で待っている時に聞き手の安食女流が目の前を通り過ぎて行きましたが、2回ほど、「こんにちは」と軽く発声して会釈され、なんとも言えない清涼感。すべからく、人柄はこうありたいという典型的な方ですね。

 大盤会場はこんな感じです。ボカシ入れ過ぎてよく見えないかもしれませんが、後ろ半分は椅子席、前半分は畳上に座布団席となってます。私は体が硬いので椅子席の方が楽でいいのですが、せっかくなので最前列の座布団席にしました。この写真で前方中央にマグネットの大盤、左側の大きなスクリーンは対局者の盤を上から撮っている画像、左右モニターは同じく盤と対局者を映している画像モニターです。したがって、現地の近くのどこかの部屋で対局している訳ですが、部屋の様子も盤上の駒もリアルタイムで見られる訳です。それだけでも携帯中継よりさらに臨場感が段違い。あと、大したことじゃないかもしれませんが、開始前や休憩中にセルフサービスでホット、アイスのコーヒーなどが飲み放題なので、4杯も飲めば(飲みすぎ?)、観戦料2000円の元が取れちゃうっていうこれはありがたいサービスです。いいとこの旅館なんで、コーヒーも決して不味くはないと思うよ。(このペースで書いてたら終わらなくなっちゃうかな。早く本題に進め!ってか)

 さて、いよいよ大盤解説会の始まりです。対局そのものは先手西山さんの初手7八飛に後手里見さんが5四歩と突き、その後左銀を5三に右銀を6三に上げる(伊藤さんみたいな?)感じの駒組みでしたが、戦形そのものは2二に飛車を振っての相振り飛車でした。

 解説の青野九段は立会人でしたが、当然対局に立ち会うのが仕事なのでしょうが、始まってしまえば、よっぽのことが無ければ(千日手とか?警報がなるとか?)終局時でも、対局の部屋に居なくても良いそうです。と言ってました。流石に開始時は振り駒とか無事に対局が始まることを見届けるのでしょうが。。。現地情報をいくつか紹介すると、西山さんは暑がりなのか部屋を20℃設定にするよう冷房の依頼を出し、里見さんは寒いので自分の近くにストーブを置いていたらしいです。青野九段もタイトル保持者の優先権は振り駒の振り歩くらいと普通は思いますけど・・・里見さんも今回は挑戦者なので我慢したんですかねと。それと、部屋になにか虫が出たそうで、記録の高浜女流が困っていたところ、西山さんがコップでさっと捕まえて、それを女将さんが逃がさないように持っていったと、こちらは安食さん情報。(脱線がとまらない)

 青野九段はキレキレに面白いギャグのようなことは言いませんし、基本は真面目に指し手の解説をする姿勢ですが、ところどころに結構毒気含みの言葉を吐いたりと場慣れしている安定感があります。それと、将棋の良い手悪い手、良い考え方などを話してくれますが、昨日は対局の進行そのものとも多少シンクロしてたかもしれませんが、将棋はやっぱり終盤が大事と。自分も棒銀とか鷺ノ宮定跡とか序盤の本を書いてきたけど、もっぱら今は詰将棋とか終盤ですと。それと、将棋を始める年齢が早い人は自然と筋が良くなるが、自分も含めて遅い人はどちらかというと駒得重視のような重い感じになってしまうと多少自虐気味に話されていました。A級棋士を務めたけれどもタイトルに手が届かなかったという苦く深い思いを、サラリと言ってのけるあたりにベテランの貫禄を感じます。

 途中で一回ゲスト解説陣と交代。当日のツイッター解説をやっていた窪田七段とLPSAの中倉女流。窪田さんの話はぶっ飛び過ぎて、イデオンさんでなければやっぱり対応不能で、中倉さん結構困ってました。特殊技能者としてしょうがないって部分もありますが、もしも実生活の仕事上でこんな人と一緒になったら絶対嫌ですね。申し訳ないが。。悪い人かどうかは分かりませんが。。。それと、現地に居たので午後になってからはそんなにツイッター解説を見てませんでしたが、止めとけばいいのに全部一手ずつコメント書いたりして、終盤1分将棋の勝ち負けの大事なところで追いつけないという、これは失態もの。お金払って見る訳ではないので、解説してもらえるだけでありがたいと思うべきものかもしれませんが、家で棋譜中継と同時に見てたら、たぶん頭来てただろうなぁと。

 終局図です。これは上の方にある巨大モニターの写真ですが、一分将棋になるぎりぎり終盤までは後手の里見さんが余していたのだと思ってましたが、109▲9三桂を指す前で次の一手コーナーになり、解答案は4二と、4三と、その他で、と金を寄って1一角成で香を外せば攻め駒にも重宝するし、自玉の入玉ルートが開けるので、それでなんとか勝負かなというような話をされて青野九段と安食女流が休憩へと。休憩をここで15分とされたので、ちょっと長いんじゃないかと嫌な予感はしましたが、その後はあれよあれよと後手玉が追い回され、最後131▲8三歩成にこれは流石に詰んだのかと、いや勝ってたはずじゃなかったのかと狐につままれたような気分でしたが、何秒かしてから画面の上から、里見さんの右手が駒台の上にさっと伸びてきて、ああ負けたのかと、暗い気持ちになりました。

 青野九段と安食女流が急いで戻ってきて、最終盤の解説を始め、しばらくしてから拍手に迎えられ対局者のお二人が大盤解説会場にやってきました。僕の座っている位置からだと、上の写真のように青野九段の陰になって、盤が見えずらく、またそもそも、もうあんまり話が頭に入ってこなかったので、よく理解しないまま聞いていました。

 負けた時の里見さんを撮ってもしょうがないので、ほんの数枚。左の西山さんはこれ少し被写体ブレしちゃてますが、ちょっと微笑まれているの分かりますかね?里見さんは悔しそうではありましたが、百戦錬磨と思うので、たまに話のはずみで軽い笑みが漏れる程度であとは感情を抑えたような表情でした。里見さん、勝った時は、紅潮したまま、少しきょとんとしたような感じで目をクリクリって動かしたりする独特の顔つきなんで、やっぱり昨日は違いましたね。西山さんは嫌みな感じでもないのですが、素直というか正直というか勝ってホッとした嬉しさが抑えられなかった様子。対局前のインタビューでも言われていたように、どちらかと言えば、NHK杯予選、叡王戦予選と連敗し、少し里見さんに序中盤の作りから実力差をつけられているのではないか、先手番の本局を落とすと相当厳しいのではないかという切羽詰まった状況からの開き直った勝負手連発で勝ちをつかみ取った安堵の笑みと理解しました。次局に向けての抱負も、次は手番(後手)が決まっているので対策も立てやすいので頑張りたいと。あまりにも、正直そのもの思った通りで話をされているのかと思いました。

 もう一枚。青野九段が結構長い間、最終局面の質問をして、二人ともお疲れのところ、もうそろそろ解放してあげてはどうかと最後は連盟職員の方の巻が入ったかに見えましたが、それはさておき、堂々としたもので必ずしも青野九段の読み筋通りではないようなコメントも返したりと、真剣な表情の二人でした。ちなみに、青野先生、朝の開口一番で、里見さんの着物姿を見て忍者のようと話されたとか・・・(苦笑)。本人に向かって、そう言ったのかどうかまでははっきりしませんでしたが。。

 

 僕にとっても残念な思いで帰路に着きましたが、昨晩は家に帰ってきてからDolphinで検討してみました。その後、ブログ書こうと思ったら、娘につかまり、さらにパソコン超遅く不調と・・・)。いずれにしても、逆転負けだったんだろうけれども、その程度がはっきり分からなくてなんだったんだろう?と。徐々に後手の抑え込みが利いてきて100△2六歩あたりは後手よしで、101▲3三歩成が西山さんらしい、反撃含みの開き直った一手だったですかね?ソフトもその辺が後手に最大に振れたところで-1000点を超してましたが、104△6七歩成の切り込みに105▲5五金と手厚く出られて少し盛り返された(-500点とか)ようでした。僕が知りたかったのは逆転負けの程度がどれくらいかってことで、ソフトの評価でこの程度だとプロの感覚は分かりませんが、そんなに簡単な感じでもなく、勝ち切れるはずの将棋を落としたというのではなく、優勢だったけど激戦で、そこから差を開き損ねて逆に縮められ、最後は互いに1分将棋の中で寄せきられてしまったということのようです。

 こうしてみると、どう考えても勝った将棋を落としたというより、競り負けて残念ということですかね。そして勝った西山さんが結構精神的に追い詰められた状況から、持ち味を出して反撃して勝ったと褒めるべきなのでしょうか?してやったりという不遜な笑いではなく、自然とこぼれた安堵の笑みだと、それならありなのではないかと思いました。今の若い人には通じない例えかもしれませんが、巨人ファンは江夏や田淵を凄いとは思っても好きにはなれんのと同じで、西山さんも強いし、実は結構純でかわいいところもあるということが分かりましたが(感じましたが)、直接応援はできないんで(広い意味では応援してますが・・・)。

 僕も安易に、里見さん頑張れとか夢の七冠とか書いちゃったりしてましたが、良くなかったかと反省。そんな簡単ではないし、大事なのは戦うことですし、単に勝ち負けでなく強くなることと思われているはずなので、そういう姿を(忍者かどうかは関係なく(^^ゞ)応援しなきゃね。でも、頑張れっ、とは言っちゃうな。それしか浮かばないし。次、第2戦が4月22日にありますが、それも大事ながら、まずは明後日12日に清麗戦で甲斐女流五段戦が待ってます。一局一局、一歩一歩。