[将棋]天童、駒、繋がる part2 | 福間香奈さんを応援するブログ!

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女流棋士の福間(旧姓里見)香奈さんを応援しています。その他将棋や自分の日常のことなど。

 昨日の足取りを追って順に思いつくまま書いてみる。朝は8時半くらいにホテルを出発。前日夜の水車そばの方へと足を伸ばし、その隣の栄春堂に入ってみた。9時開店かなと思ったけどすでに店は開いていた。2人の職人さんが店の中で作業を行い、一人は彫り駒の磨きをやっていて、もう一人は飾り駒の漆の字を刃物で最終仕上げのようなことをやっていた。将棋駒の陳列とか見つつでしたが、他も回って最後に買いたいというのもあり、申し訳ないんだけど奥の展示コーナーと磨きの作業を見学して店を出る。その後、将棋むらに行った。「むら」というので実はあのでっかいタワーの奥にテーマパークのように、いろんな店や見世物コーナーが有ったりするのかなと思っていたが、よく考えれば将棋というテーマでTDLみたいな巨大な空間や多数のアトラクションが有るはずなく。典型的には団体観光客がバスでやってきて食事を取りつつお土産を買っていくような場所だと気づく。売店で竹内まりや似のお姉さんがいろいろ説明してくれて、ついつい何か駒を買うかと思うが、先と同じ理由でまだ早い。楓の漆書き駒なら3~4千円くらいでリーゾナブルかなぁと思いはしたものの...。体験コーナーは教える人が居ないので午後3時になるというので残念ながら諦めた。前日までの予約が必須だった。まりやさんに申し訳ないと思いつつ、裏の庭園も少し散策したのち、天童駅の方に戻る。

 まず何はともあれ将棋資料館に行ってみた。前のブログにも書いた通り、ビデオ上映をやっていて事前準備で多少見ていたものの見たことないものも多かった気がする。そこでは駒の製作過程を紹介したものがあったのですが、とりわけ何故か漆で駒に文字を書くシーンに感動してしまった。駒の値段からいうと、印字駒<書き駒<彫り駒<彫り埋め駒<盛り上げ駒になるかと思う。実用的もしくは工業的観点で言えば、書き駒は漆が0.1か0.2mmくらい?浮いてしまうので、駒と盤が密着せず、また使い込めば字が薄れるはずである。そこで彫り駒が出てくるのだと思うが、やっぱり字自体の表現力に限れば書き駒ほどの勢いは出しにくく、少し繊細な感じがする。彫り埋め駒は字の部分と木地がフラットになるので、実用性の観点からも完成された工程に感じる。盛り上げ駒はそこにさらに漆を盛るので、実用性というより芸術性を高める工程なのかと思う。たまたま昨日の竜王戦挑戦者決定戦で羽生さんが、終盤で△4三玉と指したときに隣の3三の銀にぶつかり、銀がくるっと回って、ニコ生のコメントでは銀がくるくるとか大騒ぎ?になった。あとは黄楊とか楓の皮付き原木とその中の木地とかも展示を見てよく分かった。また人間将棋の紹介のコーナーもあり、平成21年の女子高生時代の里見さんのポスターも有り。プロ棋士のサインなどもたくさん展示されていたが、傑作は阿部健治郎七段の2枚。山形県出身で今年の西村一門での人間将棋にも参加されていて、なんだったか覚えていないのですがすごく兄弟子思いの発言をされていたいい人という記憶が有ります。それでその揮毫の字なのですが、敢えて例えてみるならば、もしもちびまる子ちゃんのアニメの中に小学生の習字大会で書いた字がこんなんになっちゃったんですけどというシーンが有ったとしたら、そのまま使えそうな字だと言えば伝わるでしょうか・・・。

 この辺でまだ午前中だったので、次に中島清吉商店を目指して移動。その途中に天童佐藤敬商店もあったはずなのですが、見つからず

に結局行けずじまい。中島商店に着くと、伊武雅刀似?の中島正治さんが登場。事前に見た下の映像から駒作りに対する情熱や愛情をお話しする姿を知っていたので、楽しく話を聞くことが出来ました。いろいろ教えてくださったので。

山形県天童市の将棋駒文化 動画1

生産者の想いと人間将棋   動画2

最初は楓の書き駒を見ていましたが、やっぱり黄楊かなという感じもしてきて、それと彫り駒でも廉価版に使われる簡略字体があんまり好きでないと言ったら、天童の駒づくりはもともとは書き駒だということで(資料館にも小学生くらいからお手伝いを経て修行に入るなんて戦争の頃の説明も有り)、それだったらと見比べていくと、やはり伊藤太郎氏(今は引退されたそうです)の飛車や王将など、その書体には迫力が有ります。せっかく天童まで来たのだしと思って、それを買うことにしました。ちなみに定価は2万円のものでした。盛り上げ駒に比べれば値段も一桁二桁は低いということになるのでしょうが、70年以上にわたり書き続けてきたいわゆる名人の書ですから、値段では表すことのできない重みを感じます。耐久性という意味でも趣味の範囲なら一生使えるでしょうとのことでしたし、一局限りの使用と考えるなら僕はプロのタイトル戦でも、こういう書き駒を時には使ったらいいのにと思うけど。

(家に帰ってきてから撮った写真ですが、恐くてまだ透明フィルムの包みから出していないです。)

 この辺りで、お昼を回ってましたが、製作しているところを見たいと言ったら、今は昼休みだとのことだったので、13時過ぎにまた来ますと告げていったん店を出る。駅の中の喫茶店みたいなところでランチを食べて、午後一時半頃に中島商店に戻る。店の裏に案内され作業はあんまりやっていませんでしたが、おばちゃん?に工房を案内してもらった。ただ、びりたんさんのブログにもあるように、ここは油断せずにいたところ、このおばちゃんは、彫り師で伝統工芸士の小笠原さんでした。(動画1の3分30秒あたりで出てきます。)

工房内にある木を切る機械についていろいろ説明してもらいました。床とかに落ちている切れ端は半端ものということらしいのですが、私からしたら貴重なものなので、もらっちゃいました。

(左側が黄楊、右側の白っぽいのが楓。左馬のストラップは延寿(槐)で、駒を買ったときにサービスでもらいました。左端の焦げ茶色が見えているものは、まあ商品には使えないと分かりますが、そのほかのものはNGとなった理由があんまり分からず。ちなみに駒は斜めに切り出すので、その切り残した反対側も何枚かもらってきました。)

小笠原さんからは、彫り師になったきっかけや、仕事がどれくらい好きか、刃の入れ方、彫って難しい字はどれか、桧がなぜ駒に使えないかなどたくさんの話を聞くことができました。たぶん小一時間くらいお邪魔していたのですが、帰るときに上の写真の木片を入れる袋をくれるということで、別の部屋にちょっと入ったら若い男の人(動画2の2分40秒くらいに一瞬出てくる)が彫り駒の磨きをやっていましたので、そこも見せてもらうことに。むこうからしたら、そんなところを見て楽しいとは思わなかったのでしょうが、私からするとここも完全な見学スポットです。回転盤に貼った紙やすりに水をかけて磨くやつです。結構サービス精神旺盛な方で、磨きの時間と字の太さとか、その感覚とか話していたら、一個やってみますかと?体験させてもらった。さすがに将棋駒の方ではなく、ストラップとかで使う左馬。将棋駒の方はセットで仕上げを揃えないといけませんし。今回の天童訪問で唯一出来ていなかった体験コーナーを意外な形でクリアしました。大変みなさまにお世話になり楽しい買い物と工場見学になりました。

 お暇して、また駅の近くに戻ってきたときにはだいたい午後3時。ほとんどやることはやったし、駒はこれ以上は買えないので他の店に行くのも心苦しいし、足湯は有りかと思ものの、相当歩き詰めだったので、ちょっと遠い気がする。それで、将棋交流室を覗くと自由に入ってください、無料と書かれているので、なんとなく入ってみたら将棋を指すことに。目的無くただなんか見るもの(棋士のサインとか写真とか)が有るかなくらいだったのですが。。。しかしせっかく将棋の街に来たのだからと思って、弱いけどいいですかなんていいつつ適当に相手を見繕ってくれた。振り駒をして先手になったので、▲5六歩と突けば良かったのに無意識で▲7六歩と指す。相手の方は居飛車等だったようで、ここからどうやって中飛車に持っていけば良いのか咄嗟に分からなかったので角道止めてノーマル四間飛車にする。その後、7,8筋から攻められて角銀交換の駒損となり、あとは仕方ないので中飛車に振り直し、高美濃から右桂を飛んで5筋強行突破で破れかぶれに行ったらたまたまうまくいって逆転勝ちしました。そこで帰るつもりだったのですが、まだ帰りの新幹線まで時間が有るのでもう一局となり、今度は後手番でゴキゲン中飛車に組んでみましたが、中盤あたりからうまく指せなくて今度は一方的に負けてしまいました。勝ち負けはともかく将棋の街で将棋を指す。相手の方は歳は私と同じ位かよく分かりませんが、優しい感じのおじさんでした。

 その後、ホテルに預けておいた荷物を取りに行き、天童駅の2階に隣接したお土産屋さんに寄って「香」(言うまでもなく、香奈の香です(^^;)と書かれたマグネットを買って帰りました。私の唯一の収集癖というか旅に出ると記念にマグネットを買うようにしています。

 細かいことを書き出すと、まだまだ沢山有るのですが、今回の記事はこのあたりで。

 

 あとブログタイトルの「繋がる」とはどういう意味?っていうのが有るかもしれませんが、だいたいこんな意味です。一つは前のブログに書きましたが国井天竜さんを江の島将棋まつりで見た記憶が今回の天童訪問で繋がった、もう一つは子供の頃に持っていた印字の駒の記憶(実家に戻った時に探したけど残念ながら見つからなかった)で、印字の字体は書き駒の字が元になっていると思うので、今回書き駒を買って、商品価値はえらく違うとしてもそこが繋がった、そして最後に伝統工芸の技は何十年と鍛錬して磨き上げられた技術を維持し繋げているんだなぁという感慨、それらをまとめて一言で表現するなら「繋がる」ということになるのかなと思いました。