「キミはボクのモノ」

*番外編*


仕事を終え、合宿所の自分の部屋に戻ったテギョンは、ベッドのブランケットを捲るとタメ息を吐いた。
テギョンのベッドには、すでに先約が待っていた。その真っ白な毛で覆われた小さなイキモノは、テギョンの広いベッドで気持ち良さそうに我が物顔で眠っている。
小さな体を丸めて眠っているから、余計に小さく感じる。
丸まっている背中を、指で滑らせるように撫でると、擽ったそうにまた背中を小さく丸める。
その仕草にフッと小さく笑うとテギョンは、シャワールームに入っていった。
昔、ウサギに指を噛まれて以来、イキモノは苦手だったはずなのに、その小さなイキモノは、テギョンにとって心を癒す存在になっていた。
テギョンは部屋の灯りを点けたまま、ベッドに入るとスリスリと寄ってくる小さなイキモノ。テギョンはぬくもりを求めるようにそのイキモノを撫でていると、眠りに誘われ、そっと目蓋を下ろす。

そのあと、小さなイキモノは忽然とテギョンの前から姿を消した。

テギョンの束の間の安らぎはなくなり、また従来の不眠症に戻っていった。

そして、その小さなイキモノのように、同じ名前と真っ白な肌をしたイキモノがまたテギョンの前に姿を現した。

最初の印象は、とにかく最悪なものだった。
世間知らずで、自分の周りで事故ばかり起こすその存在が鬱陶しく、何度、追い出そうとしても、涙に堪えながら顔を歪ませ、口を結んで、頑なに動こうとしない。それどころか、テギョンの堅い心の扉を抉じ開け、踏み込もうとする。

鬱陶しかったはずなのに、いつの間にか、安らぎを求める存在になったのは、いつだっただろうか…

そして、なんとも言えない感情に、名前がついたのは、いつだっただろうか…

そんなことをふと思い出しながら、隣で眠る存在を見つめる。
小さなイキモノと同じように、丸まって眠る滑らかな白い背中に、そっと指で撫でれば、擽ったそうに身を捩り、自分の身体にすり寄ってくる。柔らかな栗色の髪がテギョンの胸を擽る。テギョンは栗色の髪を優しく撫でると、その身体を更に強く引き寄せる。

隙間なく、肌を重ね合わせれば温かい。

テギョンは、小さなイキモノにはなかったぬくもりと甘い匂いと、愛という名前の感情と安らぎを感じながら、そっと目蓋を下ろした。





★★★★

今日がニャーの日(2月22日)だったので、突如、思い浮かんだハナシのため、纏まりもなく拙い文章ですみません。
セリフもなく、テギョンだけの視線になります。
とりあえず現在進行形のハナシなので、捕捉つけると、ややこしくなりそうなので、雰囲気だけでも感じてもらえればよいかな、と思います。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

それでは、次回はニューヨークのハナシで…ヾ(´Д`*)
















「恋しくて…」

*16*




ミニョの部屋から、タクシーに乗ってホテルに戻るテギョンは、上機嫌だった。

先ほどまで重なっていた唇はまだ熱を持ち、着ているコートからも、ふんわりとミニョの甘い残り香がする。

このまま、ミニョの部屋に泊まりたい気持ちもあったが、お互い明日も仕事ということもあり、支障を来すことも考え、諦めた。

それでも、腕の中で、顔を真っ赤にしながらも、口づけに懸命に応えようとするミニョがいじらしくて、ついつい、夢中になってしまい、離れがたいものがあった。
それでも、残っている理性を総動員して、ミニョの唇から唇を離す。息苦しかったのか、甘い息を吐くミニョの紅い唇に、また煽られそうになったが、ミニョの額にキスを落とすことで落ち着いた。

「おやすみ、また明日」

テギョンは、ポーカーフェイスと理性をなんとか保ちながら、ミニョの後ろにあるドアノブに手を掛け、ミニョの部屋を出たのだった。


そして、翌朝。
本日は、ニューヨークの音楽スタジオを使用しての撮影だった。
数々の有名ミュージシャンも使用している音楽スタジオで、写真集の特別付録として一曲収録することになっている。
メンバーたちは、レコーディングルームに入り、音会わせをしていた。

ソンミンたち、撮影チームもレコーディングルームに入ってくる。

「あっ!!ミニョ!おはよう!」

ミニョを見つけたジェルミが手に持っていたドラム用のステッキを振りながら挨拶をする。

「おはようございます。」

ミニョにとっては、久しぶりのレコーディングルーム、そして、楽器を持ち演奏するメンバーの姿だった。

ステージ衣装じゃない私服でも、音楽と向き合う姿は、ミニョには、いつも以上にキラキラと輝いてみえた。

スタンドマイクを持ち、いつもよりラフでカジュアルな格好をしたテギョンが、美声を聴かせる。

あぁ、やっぱり、このヒトは、一番にキラキラと輝いているお星さまだ・・・。

ピンスポットもないのに、そこだけ一番、輝いているように、ミニョは見えた。

普段は見れないレコーディングの様子やその合間に見れるオフショットをカメラに収めていった。

撮影は、1日かけて終了した。

「お疲れ様でした。明日は、皆さん、1日オフですよね?ゆっくり休んでくださいね。」

帰り際、ミニョがメンバーの元に来て、挨拶をする。

「お疲れ様。ミニョは、明日も仕事?」

シヌがミニョに問いかける。

「はい、明日は雑誌の撮影があるので…帰って、これから準備です。」

「うぅぅ…残念。明日、ミナムと一緒に自由の女神に行くから、ミニョも一緒にどうかな…って思ったのに…」

「ごめんなさい、ジェルミ」

「ううん、お土産買ってくるから楽しみにしててね。」

「ありがとうございます、楽しみにしてますね。」

ニッコリ笑うミニョ。

「ミニョ、超~かわいい!!天使だぁ~!!」

両手を広げて抱きつきそうになるジェルミの首根っこをいち早く掴んだのは、テギョンだった。

「テギョンさん、お疲れ様でした。」

ミニョは、ペコリと頭を下げる。
顔を上げ、テギョンと顔を合わせたとき、ミニョの頬が一気に熱くなるのを感じた。

「ヒ、ヒ、ヒョン、離して・・・苦しぃ・・死んぢゃう・・・」

チッと舌打ちしながらテギョンは、ジェルミを解放する。

「へぇ~、ファン・テギョンって、ジェルミ相手でも、結構、嫉妬深いヤツだったんだな…コワイ、コワイ」

クククと袖で口元を隠して笑うミナム。

『こっちは、悪魔だ…』

ジェルミの目には、ミナムの体に悪魔の角としっぽが見えていた。
そして、テギョンを見つめたまま、真っ赤に染まったミニョの頬は、どう見ても、恋する乙女だった。

「ミナム、行こ…」

この甘い空気は、オレら、お呼びじゃないって感じ?
なんだ、コレ?
一度、ミニョにフラれてるのに…2度目のハートブレイクみたいな感じ…

ジェルミは、ミナムの肩に手をおく。

「ジェルミにしては、珍しく空気読めたか…」

ニヒヒ、悪魔がもう一度、オレに笑いかけた気がした。





★★★★



































「恋しくて…」*15*



着替えるために、ベッドルームに入ったミニョは、ドアが閉まると同時に、ガタガタと身体が震え、腰が抜けたかのようにズルズルとその場に崩れ落ちるように座り込んだ。そして、壊れたように鳴り響く心臓を、手でギュッと抑え込むようにして、大きく息を吐き出した。

『こ、これ…って、夢…?
やっぱり、都合のいい夢を見てるだけなの…?』

あまりにも幸せすぎる展開に、夢を見てるだけなのか、とミニョは疑ってしまい、確認のため、そっとドアを開けて、部屋の外を覗けば、ソファーに座るテギョンの姿が目に入る。

やっぱり、現実なんだと教えてくれる、その姿に安堵してると、視線に気づいたのか、テギョンとばっちりと視線が合ってしまい、ミニョは驚きのあまり、顔を隠し、音を立ててドアを閉めてしまった。

『あぁ・・・なんて、マヌケなことしてるんだろ・・・私。これじゃ、テギョンさんに、誤解されるに決まってるじゃないの…』

ミニョは、自分の失態に飽きれ、溜め息を吐きながら、やっとの思いでクローゼットを開け、服を取り出し着替えた。

ミニョは、もう一度ドアを開け、

「遅くなってすみません、お待たせしました。」

と、テギョンに声を掛けた。

テギョンは、ちらりと腕時計を見るとソファーから立ち上がり、ミニョに近づくと、手を差し出した。
ミニョは躊躇うように、テギョンの顔を見上げると、テギョンは、ミニョの手を掴み強く握った。

自分の手を包み込む、大きくて、温かなぬくもりをミニョは見つめていた。

「もう、絶対、離すなよ。わかったな?」

ミニョは、泣きそうになるのを堪えながら、ギュッと大きな手を握りしめ、何度も頷いた。


そして、部屋に帰ってきたミニョが覚えていたのは、ミュージカルの内容でも、食事の会話の内容でもなく、身体に染み込んだテギョンのぬくもりだけだった。

ミニョの厚手のコートにはほんのりと、テギョンの残り香が香る。
帰り際、別れを惜しむように、玄関でテギョンに抱き締められ、息さえも忘れてしまうようなキスをされたのだった。

そして、名残惜しそうに唇を離したテギョンが、目をギュッと閉じたミニョの紅い顔を、屈託のない幸せそうな笑顔で見つめていたのを、ミニョは、知らない。

そして、ミニョが目を開けたときには、テギョンが、額にキスを落とし、「おやすみ、また明日。」とドアを開けて出ていく後ろ姿だった。

ミニョは夢心地のまま、そのままソファーで眠りこけてしまったらしく、カーテンの隙間から覗く淡い日差しで、目を覚ました。

室内のひんやりとした空気に、クシュン…とミニョはくしゃみをした。
寒さで身体を震わせながら、時間を見ると、出社まではまだ時間があることを確認すると、暖房を入れ、ケトルでお湯を沸かし、今日のスケジュールを確認をする。

テギョンたちの撮影もあと3日。

撮影を終えたあと、テギョンたちは韓国に戻る。

そのとき、私は、何処にいるのだろう・・・






★★★★


キリのいい残り5話くらいで、終わらせたいけど、どうでしょう…

あとは、ミニョのこれからの決断かな…。
ミニョの性格上、きっと悩むだろうな…ということで、また次回です。


寒い日が続きますが、どうぞ、皆さま、ご自愛くださいませ。