去年より良くなる年へ・「まぼろし」とは | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

*岡田麿里監督作品『アリスとテレスのまぼろし工場』*

副監督で参加しています。

2024年1月15日よりNetflixで世界同時配信開始。

英語版タイトルは"Maboroshi"です。

 

 

「未来へ、未来へ、君だけでゆけ」

 

 

 

 

 

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今年初のブログ記事です。

今年もよろしくお願いします。

 

「アリスとテレスのまぼろし工場」

1月15日よりNetflixで世界配信がスタートします。

 

劇場公開中は個人的な見解を控えていましたが、この映画の企画を受け取った時からずっと書きたかったことを記したいと思います。

 

概要を紹介します。

太字にしたところはボクの受け止め方です。

主人公たちが生きる見伏市は、ボクらが生きている現実とは違います。製鉄所の火災と神山とされる山の崩落で時が止まった世界。1991年の初頭で停止してしまい、外への連絡も、物理的に出ることもできなくなった孤立した世界です。

その世界のバランスが崩れるとヒビワレが生じる。ヒビワレが町を覆えば住民ごと消えてしまうだろう。ヒビワレとヒビワレの元になる異常を埋めるため、神機狼が出現。これを消してしまうことでバランスを維持している。

佐上衛の説明によれば、いつか現実と合流することができるという。その時のために、時が止まった状態を保持しておくのだと。ヒビワレを生み出さないよう、神機狼に食われないよう、日々の生活を記録して変化を拒否し、この世界のしきたりを疑ってはいけない、積極的に停止する生活をつづけてきた。

そんな不自然な状況なのに、10年以上のあいだに習慣化して、慣れてしまった。

人々はもうこの世界が普通になってしまったのです。

しかし

それは「まぼろし」だった。

見伏市とその住民は現実には存在しないまぼろしだったのです。現実世界に合流することなどできない。いづれヒビワレが止められなくなって消滅してしまう運命だ。

現実から紛れ込んだ「五実」という少女。

彼女だけはまぼろし世界から出せるかもしれない。現実にいる自分たちのためにも、この町もろとも消してはいけない。

そう考えた正宗たちは、自分たちがまぼろしだと自覚したことで、まぼろし世界での生き方を見つけるのです。

 

ボクの受け止め方と書きましたが、岡田監督のテーマでもあり何度か確認した重要な要素です。

 

さあ、いかがでしょう。

 

日本の状況とそっくりじゃありませんか。もちろん現実の日本が、です。

 

30年も不況が続き、不況に慣れてしまい、不況であることを話題することも嫌がられ、不況の原因や改善策(緊縮財政や財政拡大策)を示せば排除圧力が発動する。

いまの日本に必要なのは、経済状況としてまとめられる生活水準・格差問題・少子化問題・環境問題・教育環境・医療環境・雇用環境・科学技術開発状況・インフラ状況・防災減災の進捗などなどなどが劣悪化している。個別にではなく、日本全体の現実として自覚することです。劣悪化させる政治をずっと選んできてしまったんですよ。ボクも一部加担してしまった。

現状を自覚し間違いは認めること。そうしてはじめてこの世界と対峙することができる。改善へと動き出せるのです。自分だけでなく将来を救うために。

 

「アリスとテレスのまぼろし工場」を制作するにあたって、ボクがこの作品のテーマだと考えたことです。

岡田監督は、前作の「さよならの朝に約束の花を飾ろう」でもそうでしたが、出来事を包む大きなテーマや問題点を直感的に盛り込んでくる。意図的にではなく直感なんですよね。

 

政治状況に直接絡めるのは嫌がられます。ボクはどんどんやって良い、やるべきだと考えるのですが、いちスタッフが勝手なことはできませんからね。

世界配信を機に、その一部を記しておこうと考えた次第です。

 

 

元日から能登半島地震と、地震の調査に出ようとした海上保安庁の飛行機と民間旅客機との衝突事故と、気が滅入る出来事がたてつづきに起きました。

震災はまだ終わっていません。被害の全容もまだわかりません。

亡くなった方々へのご冥福を祈り、ご家族へのお悔やみを申し上げます。

少しでも早くひとりでも多く救われますように。

力強く復興できますように。

ただただ祈ることしかできません。

 

東日本大震災の時、走り描きした絵です。

政治に対する見方はこの時から変わりません。

 

 

 

政府には、国民全員を救う役割と責任を果たしていただきたい。

 

みんなに楽しんでもらえる作品を作りたい。

 

今年こそ、去年より良くなる年にしたいものです。

 

 

 

 

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河合隼雄著