「岸田内閣」早くも暗雲垂れ込む? | Tempo rubato

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お楽しみに!

 

 

                  

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27日にモデルナワクチン2回目を接種しました。

心配してた副反応は微熱と軽い頭痛、関節痛で、通常の風邪程度の感覚で、4日目の今日はほとんど回復しています。

まー、お守りみたいなものなので、これまで同様に感染しないよう気をつけながら仕事に励みますよ♪

 

 

さて

9月29日、自民党総裁選挙の投開票がおこなわれ、岸田候補が当選しました。

 

 

岸田氏当選は大方の予想通りで、ボクも岸田氏だろうなあと思ってたので意外ではなかった。意外だったのは、党員・党友票で河野氏が1位(169票)で高市氏は半分も取れない3位(74票)だったこと。議員票では河野氏は3位(86票)に下がり、高市氏が2位(114票)に入れ替わった。

議員ではない民間の党員・党友では河野氏の人気が高く、高市氏は浸透していなかった。議員の方は選挙を考慮し、または安倍首相が支援したこともあって票を取れたのだろう。

 

高市氏は、新自由主義政策で有名なマーガレット・サッチャー氏を目標としている。所得税の累進性を廃止して一律10%にするなど税制や、サプライサイドの経済対策など、実際の主張から新自由主義的な特徴が明確に現れている。

河野氏の改革志向は小泉進次郎氏と同様、表面的な新自由主義路線だったが、安倍前総理の再登板を懇願し、アベノミクスの完遂を主張した高市氏は…本人は無意識かもしれないが…根深い新自由主義者と言えそうだ。

 

そんな高市氏を、どういうわけか総裁決定後に「岸田・高市 新自由主義同盟」と言い出した人物がいる。藤井聡教授だ。

 

 

ホント、コロナ禍でおかしさが露顕しましたねえ。「日本のジャンヌ・ダルク」とまで持ち上げた高市氏が通らなかったもんだから、岸田氏の脱新自由主義に乗っけて「当方負けてませんもん」てな感じなんでしょうか。

すでに書いたように、本人が安倍晋三氏に再出馬を懇願し、アベノミクスでやり残したことをやると明言してた候補ですよ。なのに、本文中に安倍晋三のあの字も書かれてないのが不自然すぎます。高市氏から安倍路線の新自由主義をなかったことにしたいのでしょうか。だとすると、さすがは『コロナ禍をなかったことにしたい「ゼロコロナ論」』の藤井教授と言わざるを得ませんね。

 

 

閑話休題

議員票と党員・党友票で差が出た状況をもう少し掘ってみましょう。

 

一般的な自民党支持者で安倍氏を熱心に支持しつづけた人たちは、「愛国者」「靖国参拝」「憲法改正・自主防衛」「反中国・韓国」、ネット的な言い方でまとめれば「日本スゴイ!」な人たちと言えるでしょう。

高市支持で河野叩きの人たちは、高市氏でなきゃ日本は終わる、みたいな勢いでしたね。

第二次安倍政権発足前後も、そのような盛り上がりが凄まじかった。

しかし、安倍内閣が半年一年と経つごとに様相が変わってきました。特に、経済に注目したボクのような人々は、13年の参院選から消費増税決定で、決定的に安倍内閣批判に転じました。

そもそもなぜ安倍総裁(当時)に期待したかと言えば、消費増税見送り〜凍結、TPP不参加など、脱緊縮財政&脱新自由主義路線を期待するに十分だと思えたからです。消費者物価指数2%上昇の達成を目標に量的緩和と財政拡大をおこなう。これが「三本の矢」の二本、残り一本が新自由主義的な成長戦略だった。実際にやったのは量的緩和と成長戦略だけと言ってよい。財政拡大は初年度しかやらなかったのです(最後、コロナ禍で70兆円支出したのは評価します)。下野中に経済を勉強したと言い、経済理論的な目標を定めたものの、実際の行動は緊縮+新自由主義路線だった。これが、安倍路線の実態です。

ただ、経済を重視しない愛国的な支持層は熱心に安倍氏を支持し続けました。経済に注目する層と、愛国的な層の中間、おそらく大多数の中庸な支持層は約束と違う経済政策や不祥事等で不安にかられていたと想像します。

14年頃から二度、Twitterフォロワー数が連続減少する現象を分析してみたことがありますが、アイコンに日の丸を付けた熱心な安倍支持者がどんどん抜けていった。不安を持つライトな安倍支持層も相当数抜けていったと思われます。一方で、ボクと同じように安倍批判に転じた人たちは残ってくれている。その延長で推測すると、党員・党友票で高市氏が河野氏の半分も取れなかったのは納得がいきます。

つまり、党員・党友の多くは安倍路線に失望していたのでしょう。だらこそ、安倍氏の支援を受け安倍路線継承を明確にした高市氏は党員・党友票を取れなかったのだ、と。

 

「プライマリーバランス黒字化目標の凍結」「日本は財政破綻しない」

三橋さんや中野さんなどから経済を学んでいる人間としては、アタリマエのことですが、高市氏がこれを主張したのは高く評価したい。しかし、一般的な自民党支持層(党員・党友)にとって決定的な条件ではなかったのです。経済理論に着目したのは極々一部の層でしょう。したがって、党員・党友票は「人気者」の河野氏に倍以上、岸田氏にも大差をつけられた。

30日配信のチャンネル桜の討論は「岸田総裁誕生と衆議院選突入」てなタイトルでしたが、高市氏を直接支援した長尾敬議員が参加した前半は、落選残念会の様相を呈し、参加者は(三橋さんはそうでもないが)「次の総裁こそ高市さん」と口々に述べていた。その理由が靖国参拝や皇統尊崇ですから、一般庶民とも大半の自民党議員とも乖離してますよ。

長尾議員と安藤議員は、PB黒字化目標凍結や財政破綻しない主張が党内でどれだけ浸透していたか聞かれると、あまり浸透してなかったと答えた。議員ですら理論的な主張で選んでないんですから、一般の党員・党友はそれ以上に、意識しなかったでしょう。

 

*追記。アップしてから討論の後半を聞きましたが、「高市さんなら〜」に比して岸田総裁についてはちょっとしか話題になりませんでした。三橋さんが懸命に経済政策に話を持っていこうとするも叶わず、最後は水島社長のアメリカ陰謀論で終了。やれやれ、草莽も呆れますよ。

 

再び閑話休題(笑)

議員の方は選挙がありますからね。安倍前首相が支援するなら高市氏をと考えて不思議でない。候補四人が異口同音アベノミクスを継承と言うほど、安倍晋三の存在は大きいのだと思う。派閥の圧力はさほど強くなかったので、石破-河野より安倍-高市だよなーと、算盤をはじいた結果でしょう。政策論より選挙で勝てる方、という「政治的」理由です。

決選投票で高市氏が2位になったのも、そんな政治的な勘定だったと思われます。まー、勝ちが硬い岸田氏に乗り換えた議員もいたんでしょうけどね。

 

理論的な主張が正しくても実際の行動が一致するとは限らない。これが安倍失政の教訓だと再三書きましたが、投票結果にもそれが出たんじゃないでしょうか。

 

そもそも「岸田・高市 脱新自由主義同盟の勝利」なんかじゃありません。

戯言はよせと言いたい。

明確に脱新自由主義を表明したのは岸田氏だけですし、もうひとりあげるなら安倍路線の反省を述べていた野田氏ですよ。

 

「財政拡大路線へ転換」第一歩は、理論や理屈よりも行動で示していかねば実現できないと考えます。岸田総裁には、政策転換への第一歩を任期いっぱいかけてでも踏み出していただきたい。

 

 

さてさて

4人の候補の中では岸田氏が一番マシだと繰り返し書いてきました。

じゃーなんで「早くも暗雲垂れ込む」なのだ?と思われるでしょう。

政策実現には人事が重要です。

ボクは、「新自由主義の河野・高市同盟」は入れてはいけないと考える。

竹中平蔵氏ら、新自由主義的な民間議員もパージし、改革組織を白紙撤廃して作り直すべきと考える。

現実的には総理総裁一代でそこまでできると思いませんが、はじめの一歩で甘い処置をすると次世代が大変ですので、十分気をつけてもらいたい。

…と思ってたら、こんなニュースが飛び込んできました。

 

 

まだ党人事の段階ですが、あれあれ?と思う人選がいくつかありました。

甘利氏はUR都市をめぐる口利き疑惑で秘書が告発された。口利きの見返りにUR機構から1200万円の現金を受け取ったとされ、あっせん利得処罰法違反の嫌疑を受けた。甘利氏は関与否定したものの特命大臣を引責辞任しています。

総裁選で尽力したから選んだんでしょうが、大丈夫でしょうか。

 

党の主要人事では、他に麻生太郎氏が副総裁、というのも大きなニュースですね。「自民党は変わりそうにない」という印象を持たれそうです。財務大臣を続投しないなら「良い麻生」に戻って財政出動に肯定的になってもらえると良いんですがね(笑)。

総裁選候補者からは、高市氏が政務調査会長。河野氏は広報部長。

前例に従えば、この麻生・高市両氏の入閣はなくなりました。おそらく河野氏も入らないでしょう。

 

内閣官房長官に松野博一氏。松野氏は第二次安倍内閣で2016年8月から一年間、文部科学大臣を務めているが、あまり強い印象がない。財政出動には「どちらかと言うと賛成」の人らしい。

総務会長に福田達夫氏。祖父と父が元総理の世襲議員。TPP反対派。

選挙対策委員長に遠藤利明氏。スポーツ振興に熱心で、TPP反対派。

国会対策委員長に高木毅氏。「下着泥棒」の疑義が持たれ、選挙のたびに噂が出回るそうだ。TPP反対派。

組織運動本部長に小渕優子氏。コロナ対策では被害の大きい東京圏として地元群馬県の事業者にも支援が行き渡るよう提言したそうだ。TPP反対派。

*追記 財務大臣に鈴木俊一を起用で調整中とのこと。顔を見て分かる通り鈴木善幸元総理の息子です。岸田氏の推薦人で新自由主義路線からの転換に賛同していた。前向きな財政政策が期待されます。TPP反対派。

今朝までに名前が出た人を調べていくと、高市氏も含めて6人がTPP加盟に反対していました。TPPはアメリカが離脱して「TPP11(CPTPP)」となり、当初の条約とは変わっている。しかし最近、EU離脱後のイギリスが加盟申請、中国と台湾が加盟を巡って対立が生じるなど、再びざわついているので、かつてのTPP反対派がどう影響を及ぼすか気になるところではあります。

 

甘利氏や麻生氏の役員就任を見ると暗雲垂れ込みますね。

党の人事なので野党やマスメディアの追求は内閣人事ほどではないでしょうが、お金の問題など掘り返されると、政策議論が霞んでしまう懸念はあります。

 


「小泉政権以来の新自由主義路線を転換する」…これは「加藤の乱」の雪辱を果たす意味合いとも重なります。岸田氏は20年越しにその一歩に足を上げたと言えます。とは言え政治ですから、前内閣や総裁選で世話になった政治家を無下に断れないので、政策論の整合性だけで人事はできません。小選挙区制と派閥弱体化のデメリットです。

内閣とその関連組織では、慎重かつ脱新自由主義的な人事をお願いしたい。

 

このように、理論的なお題目で転換するのは無理だし、政治家一代ですっかり転換するのは無理なのです。時間をかけて実のある政策を実行し、転換の芽を育てていかないといけない。

 

 

 

ボクが密かに(?)応援してるのは今枝宗一郎議員です。地元豊川市選出というよしみもありますけどね。彼は若くして財務大臣政務官になり、インフラ投資に積極的で、安藤裕議員の勉強会にも参加しています。

岸田総裁決定を受けて、早速「企業への粗利補償や、 国民の皆さん全員への給付金、 雇用所得を守り抜く対策」「将来に向けて、減税や賃金の上がるイノベーション生産性向上」を実現すべく提言書をまとめるとツイートしていました。

 

 

このような若手議員に道を切り開き、政策転換を実現するのが岸田総裁の長期的な仕事であり、喫緊の課題はCOVID-19の感染拡大を防ぐため、人流抑制に協力できる継続的な財政支援の実行です。

 

暗雲を吹き飛ばす仕事をしていただきたい。

 

 

 

 

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