「給付と補償でみんなを助けるから、動くな。」+ある日本経済新聞のコラムより | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ


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10月2日より放送開始。

 TVアニメ『呪術廻戦』にキャラクターデザインなどで参加しております。

第1弾PV  演出を担当いたしました。

お楽しみに!

 

 

                                                     

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 記事タイトルはこちらの動画での三橋貴明さんの発言を少し変えたものです。

 

 オリジナルは

 「コロナ問題がはじまった当初から、安藤裕議員はじめ我々は言ってきたわけですよ。とにかく粗利を全部補償して、全員動くな、と。これを2週間やれば良い。相当違いますよ。」

 

 財政拡大でひとりひとりに給付金10万円を配り、企業には休業補償・100%の粗利補償をおこなう。一度だけではなく事態収束が明確になるまで継続しておこなう。

 そうすれば、「経済を回せ」策をやらなくても生活と企業を守ることができ、感染対策や医療への余力と柔軟性が生まれ、何度も再拡大させる愚かな状況を止めることができ、ワクチン普及後には素早く立ち直ることができる、と。

 

 本当に、くどいほど言ってきたわけです。それが偉いとかじゃなく、元々デフレ脱却や国土強靭化のために言ってきたことの延長だった。ウイルスの蔓延状況では、平常時の考え方で経済循環を促すことはウイルスの循環を促すことになるため、非常時の考え方に転換して、直接救うべきだ、と言ってきたわけです。

 

 「給付と補償でみんなを助けるから、動くな。」

 

 「動くな」なんて「過剰自粛」になるからダメだ、と言う人は前段の「給付と補償」が見えていないか、できないと思っている人でしょう。

 財政拡大はできない、と思っているから緊縮財政になるのです。だから、くり返し書いてきたように、「コロナは個々人の対策で大丈夫。自粛緩和で経済を回そう」は、政府の緊縮財政思考

に加担する結果になった。加えて、再拡大を繰り返す結果を招いたのだ。

 

 この病的な状況から脱却するためには、長期的な財政拡大路線への転換を大前提にする必要がある。

 

 +

 

 こんな記事を読みました。

 

日本経済新聞のコラム。「女性の自殺増、コロナでケアワークが重圧に」です。

 

 日本経済新聞のコラムで新自由主義を批判的に書いているのが「え?」と驚くポイントなのですが、女性の自殺者増加の原因が女性の家事・育児・介護が増えたことにあるのではないか、と考察しています。

 その根拠は、

《子どものいる女性の36%が「家事育児」に困ったとしているのに対し、子どものいる男性では15%と女性の半分以下にとどまる。さらに休校や保育園休園が理由で子どもが家にいる場合を見ると、女性は44%に跳ね上がった。》

 という今年4月の在宅緊急調査だという。

 緊急事態宣言は5月25日まで。

 保育園、幼稚園、小中学校などは6月から時間調整をしつつ再開されています。

 自殺者数が増加に転じたのは5月、大幅な増加は6月からです。記事では8月の増加をとりあげている。

 5月まで「ケアワーク」の重圧があったことは確かでしょうが、6月からは順次軽減されていたのではないでしょうか。ではなぜ、8月の増加と結びつけるのか。大見出しに掲げた割に根拠が薄弱ではないかと言わざるを得ない。

 

 加えて、後半にはこんな文言がある。長めに引用します。

 《新型コロナウイルスは、つくづく新自由主義的な感染症といえる。元からあった経済社会的格差があらわになり、若年層や女性に牙をむいているように見える。しかも、本来なら被害者であるはずの感染した人に「自己責任」が問われてしまう。このうえ過剰な「自粛」を要請する日本社会の気風が加わり、平素から家族のケアを担うことが期待される女性たちは重圧に苦しめられる事態となった。》

 

 どうでしょう。赤字強調したところ、順番に行きますか。

 《新自由主義的な感染症》ってどういうことだろう?(笑)

 感染症にイデオロギーなんてあるんだろうか? ないよね。新型コロナウイルスによって、新自由主義的な格差社会が明らかになった、ならわかります。しかし 《経済社会的格差》と新自由主義が引き離されている。新自由主義的なのは感染症ではなく政府の政治思想であり、格差社会は緊縮財政と新自由主義によって作られた。

 給付や補償をせずに経済を回す前提は個々人で感染対策をしっかりやること、だ。感染すれば、対策を怠った本人が悪いとなる。むしろ《過剰な「自粛」》を回避し、自粛緩和で経済を回す方法論こそ、《自己責任が問われてしまう》新自由主義的思考だと考えざるを得ない。論理がさかさまだ。

 最後のひとつが明言です。《日本社会の気風》。コラムは、このことばを引っさげて《社会をはらむ構造的課題を解決する必要があると強く訴えたい》と締めくくるのだ。

 「日本的」を悪い意味で使うのは新自由主義的な論者の特徴です。国、共同体、中間組織、伝統文化が大嫌いなのだ。解決方法はそれらを破壊する「構造改革」となる。

 

 さらに気になったところは、全体のことばづかいだ。

 短い記事なので読み直していただきたい。

 「女性」と書かれているが、「妻」「母」「夫」「父」ということばはひとつも出てこない。

 これらのことばは忌避すべき卑語なのだろうか。社会面のような記事の場合、女性・男性をもちいる規定があるのかもしれないが、コラムですからもっと柔らかい言葉を使っても良さそうだが全く使わない。「女性・男性」と言っただけではその背景が見えてこない。

 「ケアワーク」とはなんぞや? 10年以上前だと思うが、主婦の家事や育児の時間給を計算するといくらになるか…という話題があった。確かに、重労働であり、夫の協力が不足している問題は今もあると思う。しかし、いわゆる「男の仕事」の発想で妻・母としての仕事を金で計算することに違和感があった。お金に換算できないから重要なのであって、夫・父としての理解と協力が重要になるのではなかろうか。男側の価値観に寄せるかのように考えるのは、男性優位的じゃなかろうか、と思わせる。

 「女性・男性」という記号化した発想と、「ケアワーク」などと営利行為に結びつきそうな言い方をするところなどとっても新自由主義的だ。

 実際には、筆者自身が(無意識的だとしても)新自由主義的な思考なのではないか。

 

 と言いますか、新自由主義云々の問題じゃないんですけどね。価値観による視点が多くて経済問題の本質がぼやけている。

 

 いろいろ文句をつけましたが正しい指摘もあります。女性の非正規雇用割合が高く、コロナ禍で大量に解雇されている現実があるのは記事の通りです。女性の自殺者数が特に多いことは深刻ですから、救わねばならない。しかし、雇用環境悪化の原因は政府が財政支出を削っているからだ。新自由主義なるものは、緊縮財政をつづけるかぎりグローバリズムとともに避けられない麻薬のようなものです。「日本社会の気風」が弊害になっているとすれば、緊縮的な発想に馴染みやすく、本質を見ずに右に習えしやすいところでしょうが、それも良し悪し両面ある日本人の特質であって、否定する必要はありません。ただ、現代社会において、男女の役割分担を考え直していく必要はあると思うが、地域や家庭によって様々ですから、モデル化できるものだとは思いません。

 いづれにしても、社会基盤が様々な価値観を受け止められないほど脆く貧しい状態に堕していることが問題なのです。

 政治・経済をデータと全体状況に基づいて考えるならば、締めくくりはこうなるでしょう。

 

この「社会的な病」を克服するには、長期的な財政拡大路線への転換が大前提だと強く訴えたい。

 

 

 

 

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