北朝鮮は「戦後レジームからの脱却」を目指しているのか | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

 

『さよならの朝に約束の花をかざろう』 http://sayoasa.jp/

岡田麿里監督 P.A.WORKS制作の長編アニメーション映画。

ボクはコア・ディレクター/作画監督で参加しています。

 

2月24日より上映中。

現在 4劇場で上映中! 

劇場情報(5月16日更新)をチェックしておいでくださいね。

http://sayoasa.jp/theater/

 

現在まで通算で125劇場で上映していただきました。

 

海外でも上映がはじまります。

北米を拠点とするELEVEN ARTSさんのツイートによれば、7月20日から公開予定。

https://twitter.com/ELEVEN_ARTS/status/983819936555401216


P.A.WORKS発刊『さよならの朝に約束の花をかざろう』

井上俊之原画集 6月中旬発売

《原画集には1カットずつコメント書きました。 購入特典として私と平松さん堀川Pのコメンタリー付きの原画を撮影した動画を見ることができますよ! よろしくお願いします。》

井上さんのツイッターより https://twitter.com/181ino/status/1001495100088664064

P.A.WORKSサイト http://paworksshop.jp/shopbrand/ct36/

 

最新予告「巡り合う世界篇」

 

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米朝首脳会談(シンガポール・サミット)から2日が経過し、国内外の評価がいろいろと出ています。
 
意見は真っ二つに割れている印象。
・何も決まっていないし決める気もなさそうから無意味だ
・朝鮮戦争終結の方向性を示していることは有意義だ。
 
ボクは、今のところ、後者の感触を持っています。
 

朝鮮戦争は1950年にはじまりました。

その直接原因は第二次世界大戦終結からはじまります。

大東亜戦争(第二次世界大戦アジア太平洋の部)で日本が敗戦し、日本統治下だった朝鮮半島は、1948年に、38線以北をソ連が、以南から日本までをアメリカが軍事占領することで分断された。

同年8月、アメリカはイ・スンマン(李承晩)を首班に大韓民国を建国させ、翌月ソ連はキム・イルソンを立てて朝鮮民主主義人民共和国を建国させた。

北朝鮮はソ連(と中国)の衛星国

韓国はアメリカの衛星国

となり、これが朝鮮戦争と冷戦へつながっていくのです。

 

近現代史でみた場合

朝鮮半島の南北両国には70年の歴史が積み重なっている。

日本との関係では100年です。

 

北朝鮮問題は、ずっとこの文脈で対立を繰り返してきた。

1989年に冷戦が終結して以降も、背後のアメリカとロシア・中国との対立関係が「瀬戸際外交」を生み出し、対立を継続させてきた。

 

そんな歴史の上に、史上初の米朝首脳会談が実現した。

 

この首脳会談は、第二次世界大戦による「戦後レジーム」を修正する契機になり得ます。

 

キム・ジョンウン委員長は、中国と(おそらくロシアとも電話か何かで)事前に会談し、ムン・ジェイン韓国大統領と境界線を越えて会談し、米朝首脳会談を行った。

アメリカは、「核戦争」をちらつかせながら中国に再三北朝鮮を抑えるよう要請。

中国の習近平主席が独裁体制を強化し、さながら「習王朝」を実現したことも、会談を実現させるのに大きく働いたのだろう。

北朝鮮への軍事圧力と経済制裁が効いていることと、トランプ大統領が東アジアへの軍事支出を減らす意向をチャンスと捉えた「決断」だったのではないかと思う。

 

戦争を終わらせれば、アメリカは北朝鮮の資源や労働力でビジネスができます。

中国式の部分解放です。

これはうまくいかないだろうと見る識者もいますが、ひとまず横に置きましょう。

 

トランプ大統領が言う「平和と繁栄」は米朝貿易や投資を意味します。

我々のような民主主義国の感覚では「すぐに」できると思えませんが、独裁国なら急速に行うことが可能です。まさに中国式です。

 

北朝鮮の指導者と時に対立してきた中国も、旨味があればこれを許すでしょう。

中朝会談でこういった方向性が確認された可能性がある。

キム・ジョンウン委員長は、社会(共産)主義の「戦後レジーム」に依存して成り立ててきた自身の立場を、より独立国としての立場に修正できる、と考えているのでしょう。

と言っても、民主主義国になるわけではないので、ここを誤解してはいけません。

 

いずれにしても

アメリカと北朝鮮は、冷戦体制(「戦後レジーム」)への固執を改め、新たな枠組み構築に動き出した、と今のところ理解することができます。

80年代からの非核化への取組みを概観すると、北朝鮮がアメリカ本土に届く核ミサイルを持った可能性が高いことが、トランプ大統領を動かした大きな一因でしゎう。

北朝鮮が核抑止力を持つ至った現在は、以前とは状況が違うのです。。

 

アメリカは、「最大限の圧力」という「戦後レジーム」のやり方を修正し

北朝鮮は、これまでの敵視外交を修正しはじめたのだと言えるでしょう。


非核化が「検証可能で不可逆的」なのか、人権問題など、こまかいことは「どうだっていいんだよ(*)」。

まず、これまでの意識を修正していくこと、これが両者に共有したことだったのではないか。

東アジアにおいて、第二次世界大戦後、冷戦終結後の「戦後レジーム修正」、その可能性にこそ、意味があると考えます。

 (*)トランプ大統領談(佐藤健志さんのツイッター参照)

https://twitter.com/kenjisato1966/status/1007117887721504768

 

よって、

・朝鮮戦争終結の方向性を示していることは有意義だ。

という感触を持つに至りました。

 

 

さて、「戦後レジームからの脱却」と言いつつ、戦後レジームそのものの「日米同盟」を強化してきた日本政府の、特にその方向性が強い安倍政権の対応やいかに。

 

金正恩氏「日本と対話を進めたい」 トランプ氏に発言

https://www.asahi.com/articles/ASL6G3HGFL6GUHBI01W.html

《米朝首脳会談でトランプ氏は日本人拉致問題などを取り上げた。そのうえで、日朝首脳会談を念頭に、「日本とも対話すべきだ」と強く正恩氏に促したという。

 これに対して正恩氏は「日本とも対話を進めたい」と応じたという。会談の具体的な議題や時期について言及したかどうかは、現時点では明らかになっていない。ただ、正恩氏は、これまで北朝鮮が拉致問題に言及する際に繰り返してきた「解決済み」という考えは示さなかったという。》

 

ボクが想定した「最悪」から一段階改善する見込みが出てきました。

しかし

問題は、日本政府の対応です。

 

拉致問題相「対話のための対話では意味がない」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180614/k10011477671000.html

 

記事中には

 

ロシアのプーチン大統領は正恩氏に、フォーラムに合わせてロシアを公式訪問するよう要請している。この機会を利用し、日朝首脳会談を模索することも考えられる。

 

とありますので、アメリカ・中国・韓国・北朝鮮に続いて、ロシアも「戦後レジーム修正」に向かう可能性がある、と想定できます。

米中露が影響力を保持しながら戦後レジームを修正していく契機として北朝鮮を活用していくのではないか、と。

 

一方日本政府は 「対話のための対話では意味がない」 と繰り返している。

これは安倍首相が繰り返してきた姿勢で、岸田外相も表明しています。

それが、米朝首脳会談が行われて2日経った今日でも変わらず繰り返されている。

さすがに、呆れますね。

複数の想定をして議論してこなかったのでしょうか?

 

この姿勢を修正しなければ、「最悪」に戻るでしょう。

日本政府が、(数人だとしても)拉致被害者解放を阻害することになりますよ。

 

 

北朝鮮を巡る関係国のうち、日本だけが「戦後レジーム」にしがみついている。

だとすれば

東アジアにおける日本の指導力など期待しようがありません。

…はじめからありゃしませんけどね。

 

かてて加えて、日本経済は緊縮財政・構造改革・規制緩和・グローバル化を修正する気がないようなので、衰退していきます。

東アジアでのプレゼンス(存在感)など失われ、安い労働力と土地や水源が好きなだけ取られていくのです。まさに発展途上国だ。

 

 

米中露首脳は、それぞれ自身の指導力を削ぐことなく、北朝鮮の立ち位置を修正して、「戦後レジーム」で膠着した状態を解きほぐし、より多くの利益を得ようと模索をはじめたといえよう。

 

従来のレジーム思考で成功するか失敗するかを云々してもはじまらない。

「日本優生論」で希望的観測に帰結させる思考回路も修正せねばはじまらない。

 

日米同盟にしがみつき、「戦後レジーム」にしがみつく日本のあり方を考え直しましょう。

 

日米同盟を否定・破棄するのではなく、修正していくことは可能なはずです。

「0/100」思考ではなく、中間の適切な地点を探りましょう。

それこそが「戦後レジームからの脱却」。「日本に適切な憲法」の再考につながる。

 

北朝鮮から学ぶ器量と覚悟を持ちましょう。

 

 

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