「公助」から自己責任へ・緊縮財政 残酷物語 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

 

 

 

『さよならの朝に約束の花をかざろう』

岡田麿里監督 P.A.WORKS制作の長編アニメーション映画。

ボクはパート演出・作画監督で参加しています。

 

公開は2018年2月24日

http://sayoasa.jp/

 

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本日のエントリーは古い映画のタイトルみたいになっちゃいましたが、現実の、今のお話。

 

その前に

新聞を眺めると、選挙後の野党の動きが続いています。

 

与党勢力を維持した自公に対して、野党は少数多頭状態でまとまった勢力にならない可能性があるためでしょう。

 

帰国した小池百合子氏「進退見極めたい」、希望の解党は否定 午後に両院議員懇談会(産経新聞)

http://www.sankei.com/politics/news/171025/plt1710250018-n1.html

《党代表としての進退は「皆さんと話し合い、創業の責任もあるので見極めたい」と述べた。解党論については否定した。》

 

小池都知事は、選挙直後には代表を続けると言っていたが、今日になって「話し合いの上、見極める」と流動的になってきた。

落選候補だけでなく当選議員も含め、擁立した235人の大半から猛烈な批判が出ているのでしょう。

 

目立つ演説だけ出ておいて投開票日に日本を離れる驕りきった姿勢は勝っても負けても糾弾されてしかるべし。

これで党代表を下りることになったら、二度と国政へは出てこれないでしょう。

 

 

一方、立憲民主党。

無所属議員や民進党残留組との合流話が出ていますが、枝野代表は受け付けない模様。

 

立憲民主、野党結集に距離 「数合わせなら期待消滅」

《枝野幸男代表は24日、国会内で開いた両院議員総会で「永田町の数合わせにコミットしていると誤解されれば期待はあっという間にどこかに行ってしまう」と強調した。》

 

この姿勢は支持します。

 

その賛否はおくとして、基本的な政治理念を中心に据えて党をまとめる本来の姿にはこだわってほしい。

自民党もかつての民主党民進党も、基本的な理念を置き去りにして前者は政治ビジネス、後者は政権打倒を目的に転化した。

権力を持てない後者は離散集合を繰り返すグダグダが続いてきたのだ。

いざ政権を奪取したら船頭多くして船山に登るのごとく瓦解した。

 

数や権力志向でなく、政治理念でまとまって対案を出す政党に育っていけば、自民党の軸のなさ、政治をビジネス化するご都合主義体質が国民に明らかになるでしょう。

  *ビジネスそのものは悪くないですよ。政治をビジネス感覚でやるのが間違いなのです。

 

そうなれば、自民党内のまともな政治家たちが議論を喚起するチャンスが生まれます。

 

公助・共助・自助

と言うことばがあります。

 

【自助】:他の力に依存せず,独力で事をなすこと。

【共助】:互いに力を合わせて助け合うこと。互助。

【公助】:公的機関が援助すること。特に、個人や地域社会では解決できない問題について、国や自治体が支援を行うこと。

(大辞林、大辞泉)

 

本来、この3つは役割の違いであって、優先順位をつけるものではないと思いますが、政府の考え方は違っているようです。

 

 

平成18年度 厚生労働白書 第3章

「社会保障制度の基盤の整備と地域・職場の在り方の見直し」(PDF書類)

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/06/dl/1-3a.pdf

《もとより、人は働いて生活の糧を得、その健康を自ら維持していこうと思うことを 出発点とする。

このような自助を基本に、

これを補完するものとして社会保険制度な ど生活のリスクを相互に分散する共助があり、

その上で自助や共助では対応できない 困窮などの状況に対し、所得や生活水準、家庭状況などの受給要件を定めた上で必要 な生活保障を行う公助があると位置づけられる。》

 

首相官邸の文書を見ても共通していました。

 

つまり

1)基本に自助

2)補完として共助

3)さらに対応できないことに公助

 

という順番になっています。

 

 

そうだろうか。

 

優先順位ではなく、個人や家庭・地域や事業体・自治体や国(政府)…の役割の違いだろうと思うのだ。

 

上記白書、平成18年は西暦2006年です。

すでにデフレ不況に突入していた。

所得の縮小によって税収が減り、公共事業や社会保障の財源問題が盛んに問題視されていた頃です。

 

「痛みを伴う改革」を謳った小泉政権とも重なる時代だ。

 

緊縮財政は公助を削減する方向に傾きます。

小さな政府論。公共部門の民営化。地方分権。民間の競争力による成長。そんなお題目で政府の支出削減が正当化された時代です。

 

「公助」の削減は、安倍政権も見直すことなく継承しています。

 

 

公助・共助・自助 の関係はどんな時のためにあるのか。

災害を例にすればわかりやすい。

香川県坂出市の解説が適切かつ端的だったので紹介します。

 

自助・共助・公助の連携と協働

http://www.city.sakaide.lg.jp/site/bousai/renkei.html

 

「公助」は堤防のような存在。

それだけだと、もし堤防が川や海の水で決壊したり乗り越えた時、大惨事になります。

「共助・自助」によって事前の避難準備や救援体制を整えておかねばならない。

 

坂出市では、災害を最小化するために

1)行政による基本的なインフラが十分構築されていること。

2)地元企業や学校、病院、警察・消防などが平時から連携できる体制。

3)家庭や個人でできる最大の準備を生かし、周辺住民と助け合う。

ことが必要だと解説しています。

 

「公助」の地盤があって、その上に「共助」を張り巡らし、「自助」で手をつなぐようにお互いを助く。

 

これは優先順位ではなく、土地の上に社会があり個々の生活が成り立つという私たちの普段の生活実態の延長と捉え、政府や地方行政(公助)・地域や事業体(共助)・家庭や個人(自助)の「連携と協働」によって生活安全保障を構築しようとする姿勢だ。

 

実にまっとうだと思う。

 

坂出市は瀬戸内海に面した土地で、市内を流れる綾川は今年の台風18号による決壊のおそれで464世帯に避難指示が出た。

日本国民が住むほぼすべての土地は同様の危機に毎年見舞われている。

 

だからこそ

「公助」のインフラ整備

「共助」の対応

「自助」の危機意識

の三方が「連携と協働」できるよう、同時併行で、常に充実させる必要があるのだ。

 

 

日本政府は、これに優先順位を付け、「公助」を削減し、「自助」を増やせと言う。

(消費税増税も同一線上の発想…)

 

これは日本の国土風土を考えていない姿勢だ。

これでは、災害で助からなかったのはその人の努力不足、自己責任ということになってしまう。

…そう、すでにそう言ってますよね。

民主党政権と変わらず、「地方創生」は地方が競争してアイディアを出さなければ政府は予算を出さないと言っている。

 

「公助・共助・自助」に優先順位を付け、まず「自助」をやれ、というのは政治の責任放棄だ。

 

 

防災は命と直結する最も重大なものですが、普段の生活に密着した経済でも同様の傾向があります。

 

社会保障は経済基盤とつながっています。

 

安倍政権では、介護報酬など社会保障費の削減を行っています。

 

給与所得控除の見直しも検討されている。

 

会社員の給与所得控除見直し議論 政府税調

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171023/k10011194771000.html

 

会社員だけが控除を受けるのは働き方の多様化に即していない、という口実ですが。

そもそも、正社員を抱えられないデフレを継続させ、非正規やパート・アルバイトを増やした責任は誰にあるのか。デフレを脱却できない歴代内閣だ。

 

それを、実質増税になる控除見直しで私たちに押し付けようとする。

「公助」を削減して「自助」でやれ、という姿勢だ。

 

さらに、配偶者控除が来年から変わります。

 

配偶者控除(立教大学が検証した資料)

http://www2.rikkyo.ac.jp/web/taki/contents/2015/20150923.pdf

 

これによると、現在配偶者控除の適用者は1400万人ほどで、減収額は約6000億円だそうです。

 

配偶者控除の改正は、1000万円以上の配偶者控除をゼロにし、その代わりこれまで103万円以上で不適用だった控除額38万円を、夫と配偶者の所得に応じて段階的に減らすもの。

一見、プラマイゼロで中低所得者にはお得に思えますが(実際お得な所得層はある)、マクロで考えれば、政府の支出削減だ。

 

6000億円の減収分を少しでも減らして税収を増やそうとするもの、マクロ的には増税になる。

 

これも、女性の活躍できる社会という口実で行われる。

言い換えれば、女性…配偶者が働かざるをえない(貧相な)社会の構築だ。

 

 

なぜこんな考え方になるのか。

 

コンビニバイト時給の張り紙を眺めてて腑に落ちました。

 

深夜〜早朝帯の時給を高くする代わりに、昼間帯は安くする。

こうして全体(マクロ)の人件費が増えないよう調整しているわけだ。

正社員を減らせばさらにコストを減らせる。

ビジネスとしては正しい。

 

しかし

政府が同じ感覚でやって良いのか。

 

良いわけがない。

 

 

所得控除の見直しなど、正社員の給与パート・アルバイト合わせて「同一賃金」にするものだ。

 

安倍政権の言う「同一労働・同一賃金」とは、低きに合わせる政策なのでしょう。

 

 

そうやって、政府支出を削っていけば、国民の生活がどんどん貧しくなっていきます。

 

社会保障、防災減災、国防など大きなものから、町の個人店のような小さなものまで、じわじわと潰されていく。

 

コンビニの収益が4ヶ月連続で減少しています。

大規模チェーンでもこの有様。

 

 

会社の統廃合、自社が派遣会社や外資系に買われた。

プロジェクトの参画企業が増えて複雑化してめんどうになった。

個人店が減ってチェーン店が増えてきた。そのチェーン店も撤退した。

近場の商店や居酒屋が営業時間を短縮した。

給料が上がらない。

学校の給食がまずい。

・・・

 

そんな生活実感をお持ちのあなたは、日本経済の衰退、国民の貧困化…

緊縮財政による残酷物語の目撃者だ。

 

 

 

 


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