TPPと言葉の乱れ | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

あんまり時間がないのでササッと投稿です。

 

TPPが衆議院特別委員会で可決されました。

 

TPP国会承認議案など 衆院特別委で抗議のなか可決

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161104/k10010755881000.html

 

これでTPPが決まったわけではなく

このあと、衆議院本会議と参議院での審査と採決があります。

 

政治家が使う言葉はムチャクチャなものが多いのですよね。

 

小泉元首相は自衛隊の海外派遣の議論で、非戦闘地帯の定義を問われ「自衛隊がいるところが非戦闘地帯」であると述べて話題になりました。

もはや失笑すらできない言葉ですが、安倍政権でも似たような言葉遣いがされています。

 

また、経済では、「もはやデフレ状況ではない」が「デフレ脱却は道なかばである」、なんて意味の分からないこと言っていました。

デフレーションの定義は物価の下落が2年以上継続する状況です。

下落が止まって横ばいならデフレーションではないと強弁できなくもないですが、デフレによる景気低迷状況にかわりありません。

 

デフレ突入以来、20年ほどつきまとう緊縮財政・節約思考では、デフレ状況を脱却するための正しい経済政策を行えない。それでデフレ状況が続いているわけです。

 

現実から目をそらし、事の本質から逃げて取り繕おうとするから言葉遣いが乱れるわけですね。

 

ようやく支出を増やす方向に向いてきましたが、緊縮思考の本質は変わっていません。

政府が支出を拡大し、国内に投資することで経済成長へ持っていく、このごくシンプルで歴史的にもまっとうな政策ができないことが平成時代の大問題です。

 

 

さて

本題のTPP

これも、ここ20年来つきまとう政治問題…グローバリズムの総決算のようなものです。

 

日本での正式名称は「環太平洋戦略的経済連携協定」で、英語のTrans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、でTPPです。

条約名を文章にすればこうなります。

環太平洋(諸国)における戦略的経済連携を行うための協定

 

TPPの基本は関税の撤廃、共通ルールの設定です。

これによって加盟国が貿易をしやすくすればウインウインになれる(はず)だぜヒャッハーー♪…というものです。

 

しかし、日本においては

 

TPPで得られるメリットよりデメリットのほうがはるかに大きく、取り返しがつきません。

 

 

TPPの経済効果は2.7兆円と言われました。

10年間で、です。

これは1年で2700億円で、GDPの0.1%にも満たない額です。

 

そもそも、日本は貿易で成り立っている国ではありません。

政府はしきりに「貿易立国」という言葉を使いますが、ウソです。

 

日本の輸出・輸入の対GDP比率はどちらも10%ほどです。

輸出が少し多くて経常収支が黒字なのでこれをもっと増やせば豊かになるはずだ、という発想なのですが、TPPの経済効果はGDPの0.1%未満しかないので、たいして役に立ちません。

 

貿易依存度ランキング(輸出入合計額の対GDP比率)

http://www.globalnote.jp/post-1614.html
 

日本は208カ国中、184位です。

 

日本が輸入に頼っているのは原油・天然ガス、輸出では自動車や部品で、どちらも20%くらい。

しかし、なんにしてもGDP比10%程度のなかの話ですからねぇ…。

 

日本は国民の需要と国民のための供給力で成り立っている国なのです。

貿易はおまけです。

 

そんな国がGDP比年0.1%の経済効果を得ることにどれだけの意味があるんでしょう。

 

どんなものにもメリットとデメリットがあります。

貿易もまたしかりです。

 

TPPでは、関税や規制によって守ってきた日本の農業や医療、サービス、公共投資、(アニメ・マンガを含む)著作権などなどが共通ルールに(順次)変えられます。

 

条約は国内法の上位にありますから、TPP加盟国で最大のアメリカにとって有利なルールで日本の国内法が変えられます。

安倍政権はTPP発効を見越して、すでに国内の規制をガンガン緩和しています。

いわば、大股開いてる状況が作られているわけで、TPPいらっしゃ〜〜いな状況ですから、決まればアメリカのルールに置き換わっていくことでしょう。

 

TPPのデメリットを打ち消す国内法を作れば、それはアメリカ企業に不利益となりますから、ISD条項の発動で訴えられて敗訴になり、ルールを(国民の利益を守るために)変えることができない。

アメリカとの貿易協定でカナダが訴えられ敗訴した事例が複数あります。

 

 

日本国民が長い長い時間をかけて作ってきた習慣、法律や規制が、条約によって破壊される。

これは

文化破壊です。

 

言葉の乱れは言葉だけにとどまらない、私たちの生活の根底を乱し、破壊へと導くことにもなる。

 

 

安倍首相を熱烈に支持する方々はどうなんでしょう?

民主党政権でTPPが議論された時、徹底的に反対していたはずですが、安倍政権になり(反対してたはずなのに)参加交渉を積極的にし始めると「安倍さんならイイよ」言わんばかりに態度を変え、経済的にメリットがないとわかっているので、「中国包囲網だ!」とか「日米同盟の強化のため!」とか経済と関係ない理屈をつけて容認していました。

もはや言葉が意味をなしていませんね。

 

*メリット・デメリットがあるのに、様々な論点がゴッチャになってデメリットが見えなくなる、または、自らゴッチャにして見ないふりをする。

ここでも「2サイクルな現象」が起きています。

 

言葉の乱れは意識の乱れをも生じさせます。

 

 

アメリカ大統領の候補二人はTPPに反対しています。

トランプ氏は離脱する可能性があります。

ヒラリー氏はさらに日本に厳しいルールにするよう再交渉してくる可能性があります。

なので、TPPの観点ではトランプ氏に大統領になってもらったほうが良いんですが、ちょっと待って下さいよ、と。

 

アメリカ大統領の差配に頼って良いんでしょうか?

ボクらの生活のことですよ?

 

 

ボクら国民の主権を脅かすTPPには

国民の意志でもって「ダメだ!」と声を上げなければいけません。

 

 

 


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