築土構木の思想 | Tempo rubato

Tempo rubato

アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

11月中旬に(一旦)終了したYouTubeの「土木チャンネル」
主催しておられた藤井聡先生は京都大学大学院工学科教授で第二次安倍内閣で内閣参与を務め、レジリエンス研究ユニット長としてまとめた「列島強靭化論」は国土強靭化基本法の元になった。

その「土木チャンネル」の第一回。「土木を語る」のコーナーがこちら。



まずは言葉の意味
土木工学=civil engineering
civil=市民 cvilization=文明…の基盤を作る学問が土木工学

土木=築土構木 前漢時代の古典「淮南子」から来た言葉といわれる。
人々が助け合い、みんながちゃんと生きていけるようにする行為。
つまり民の安寧の基盤を作るのが土木。

ゲーテ『ファウスト』で絶命直前のファウストが夢想し「瞬間よ止まれ、汝はいかにも美しい」と述べたのが、土木に従事する人々の姿。
(ファウストは土木工事で生じる立退き問題の難しさにも言及し人々が助け合える安寧を理想とする。)

土木は現代では主に公共事業として行われます。
あっちを立てればこっちが立たず、ということはどんなことにも起こり得るが、…めんどう臭がったり、もっともらしい理屈をつけて、イデオロギーで…やろうとしなければ、文明は衰退していってしまうわけですね。

土木=築土構木の意味は、国民の安寧と文化を維持・強化・継承するための取組みなのですね。

土木・建設 公共事業 地方再生・・・何のために?

「首都直下型地震の被害想定」 http://www.asahi.com/special/syutochoka/
『首都直下地震の被害対策を検討してきた国の有識者会議は2013年12月19日、30年以内に70%の確率で起きるとされるマグニチュード(M)7級の地震で、最悪の場合、死者が2万3000人、経済被害が約95兆円に上るとの想定』

地震の被害は電力や水道・ガス、鉄道・道路の寸断など数週間から数ヶ月続くと考えられています。
首都に物資が来なくなります。

東日本大震災後、東北の人々の一部が関東や中部、西日本へ移住しました。
(一年後の人口調査では岩手宮城で震災直前を100として99ほどに。福島で97ほどに減少。今はもっと増えているでしょう。)

首都圏だけでなく、東海~東南海で連鎖して大地震が起きた場合も想定が必要です。
今度は東北や北陸、西日本に助けてもらわないといけない。

活動期に入っている長野周辺の火山が噴火したら風向きからして長野静岡から北関東一帯が被害を受けると言われます。

今の各地方に、太平洋ベルト地帯に集中した人々を受け入れられるインフラのどれだけが揃ってると言えるのか?

人口は戦後に一旦増えた後、一貫して都市部へと流れてきています。
加えて、約20年間も散々予算を削り続け、競争原理で地方を捨てさせておいて自分らが困ったら「地方の皆さん助け合いましょう」とか言うんでしょうか。

助け合うには大都市圏が地方から人や物を吸収するのでなく、地方ごとに適した文化を発展・継承して豊かになってもらわないと無理でしょう。

そのための土木です。

地方創生・国土強靭化
安倍内閣では「地方創生」を掲げています。
国土強靭化もある。
築土構木の意味に書いた通り、単に道や鉄道を作るってだけではありません。
企業の本社を地方移転する場合の減税も検討していると言われますから、東京一極集中を緩和する考えは持っている。

しかし、同時に、地方交付税の「別枠加算」や「歳出特別枠」の廃止も検討しているという。
リーマン・ショックを機に1兆2650億円に増額された補助はデフレから立ち直らない中で漸減され、消費税増税後になって、ついに廃止の検討。

政府支出の削減を優先し、地方支援を削るというわけです。

景気回復を掲げてるから大丈夫?
なら回復後にやって下さいよ。それなら文句も言いません。
デフレの悪影響を都市より強く受け続けている地方支援を先に切るのは解せません。

プライマリーバランスの黒字化を目標に掲げ、緊縮財政を改めようとしない政府に、プラマイゼロ、あるいはマイナスに落ちていく政策の組み合わせを見直すことは出来ないのでしょう。

日本の文化を守ってきた公共事業は悪者にされたまま。
TPPは農林水産、製造業、医療、著作権など広い分野で関税やルールをアメリカ基準へ改めさせる。
構造改革・規制緩和は日本の文化を打ち砕きます。

「岩盤規制を打ち破る、私のドリルを止めることは出来ません」
でしたっけ?

「景気回復、この道しかない。」「瑞穂の国の資本主義」「日本を、取り戻す。」
と言いながら
同じ人が、片方ではデフレを悪化させ、国民を貧困化させ、地方を捨てさせ、文化を壊して発展途上国化させるような政策を選択していく「めまい」現象。

同時にやるとマイナス効果になる政策の選択を「政治判断」「焦らずじっくりやっている」ように自己肯定し勘違いしているのは安倍首相や政府とその周辺の「民間議員」ではないのかと、言わざるを得ない状況です。

文化を守り、国民が助けあって暮らす基盤作りのために必要なこと。
なぜ、できなんだろうか。

第三次安倍内閣が発足
藤井先生は今次も参与として活躍されるのだろうか…?というのは置いといて。

今夜発足した第三次安倍内閣はどういう方向へ行くのか。
内閣改造から間もなく突然の解散・総選挙を行ったのは消費税増税の悪影響が深刻になったら勝てないと判断したからでしょう。延命解散・総選挙といわれる所以です。
政治は「民意」の信託がなければ続けられません。

国民が「政府は無駄(公共事業とか、政治家の数とか、公務員の給与とか)を削れ!」と考えていれば、政府は景気回復に必要な正しい選択ができなくなります。
例え、適切な選択を知っていても民意を得られないとなれば、できません。

政府に見直しを促すには、まずは国民の多くが、基本的なことを知っていく必要がありそうです。

それはざっくり言ってこういうことです。

お金は使うと消えるのではなく、誰か(私)の消費が、他の誰かの所得になる。
国家財政は家計や会社経営とはまったく違う。
自国通貨建ての「借金」は気にしなくて良い。
財政均衡・緊縮財政を止めさせ、積極財政による景気回復で財政再建が実現可能。
全体的な経済成長によって格差の解消や社会保障の充実、地方経済の好転が実現可能。

これだけでもまず思考を入れ換えてみましょう。
くわしいことは後から学んでも大丈夫です。

「ムダを削れ」と思い立ったら、何がムダで何が悪いのか考えてみる。
(すべてがムダじゃない、なんて言いません。)

何のためにそんなことを?
国民のため、家族のため、友達のため、まずは自分のためを考えるのです。
自分 だけ のため、に終わらせないように。


「土木チャンネル」には”目からウロコ”のおもしろいお話や対談がたくさんあります。
「第二次土木チャンネル」を実現させるためにも再生回数をブンブン上昇させましょう!