欲しい物を探す。 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

手、足、顔… 部分アップのカットではその部分の動きに収まりがち。
「フレーム」の外、体全体を意識すると(正確さだけでなく)表現の幅が広がります。
その時に画角やレンズ感も加味できると尚おもしろい。

上手くいかないな…と思ったところから試行錯誤していると、ある瞬間に気持ちのいいツボに「来る」ことがある。

上手くいかない時は画面に見えてるところだけで考えている場合が多いです。
ロングの画でもその外側に何があるか想像してみると人物などを配置しやすくなるし、芝居の設計(周囲にある小物や照明効果など)に面白いアイディアが浮かんだります。

絵コンテに描かれていなくても、思いついたアイディアを付加することで、そのシーンの表現力が格段に広がって強くなることは、よくあります。

どうすれば、そのようなアイディアが出てくるんでしょう。
ボクの場合は、現実にある些細な出来事がヒントになることが多いです。

アスファルトの道路にあるガスか水道用の小さな丸い穴に、土がたまって草花が育ってたりするようなミクロなことが「作品」に昇華するのがこの仕事のおもしろいところでして、ヒントはどこにでもあるし、身近な友人の癖や、電車で揺られてる見ず知らずのサラリーマンの背広のシワを「なるほど、腕を上げるとこうなって襟の後ろはこう盛り上がるんだな…」とか、酔っ払ってご機嫌な女の子の仕草から「これだ!」とアイディアをもらえたりするわけです。

アンテナを高くして、誰もが(自分すら)「つまらない」と見流してしまうことから、あえて拾いあげることで新しい表現が生まれるのかな、と思ってます。


自分が既におもしろいと思っている「フレーム」の外に意識を持っていってみると、デッサンとかパースとか理屈以上に欲しいものが見つかるかもしれません。

自分は何を描きたかったのか。
思いもよらない所に落ちているかもしれないのです。