今年始めた山登りであるが、すでに4つの山に登って、ある程度のスキルはついたと思い、本格的に寒くなる前に今年の総決算として熊本県最高峰に挑もうと考えたわけだ。
国見岳(くにみだけ)は、九州山地中央部の向霧立山地に属する山である。標高は1,739mであり、熊本県最高峰。九州本土では祖母山(1,756m)および市房山(1,721m)と並ぶ屈指の高峰であるが、交通の便が悪い地域に位置する。日本三百名山、一等三角点百名山の一つに数えられる。
国見岳へのアクセスはいくつかあるが、今回は「樅木コース」を登ろうと思う。山深い「五家荘」よりもっと山奥にある「五勇谷橋ゲート」の先にある登山口である。
熊本市内から2時間ほどかかるということで、今回の起床は5時。
まだ家族は寝静まっているので、静かにコソコソと準備し、そそくさと家を出る。
途中でいつもの登山セット(朝メシのパン、おにぎり、水、栄養ドリンク)を購入し、登山口へと向かう。
熊本市から御船町~甲佐町~山都町から国道445号を五木村方向へ進む。
はじめは広い道路だが、すぐに狭くなる。すでに夜が明けてあたりは明るくなってはきているが、山道なのでヘッドライトは付けたままで進む。
「対向車くるなよ~」とつぶやきながらドンドン進んでいくと標高もドンドン上がってくる。もう周りの山の頂上も視界に入るほどの高さである。
「山登りしなくていいじゃん」と思うくらい登り続ける。
二本杉展望所を過ぎると少し道が広くなるが、ところどころは狭小な箇所があるのであまり飛ばさないように。
県道159号線「樅木・平家の里」の交差点の看板があるのでその方向に左折する。ここからはまた狭い道が続くのでゆっくり進もう。
狭い道を悪戦苦闘しながら進むと「樅木の吊り橋」を経由しつつ県道159号線から五勇谷橋ゲート(登山口)へ向かう林道との交差点にでる。

けっこう広い。
この交差点から登山口方向に進むとすぐにY字の交差点あり。

左側に進む。「全面通行止」の看板がわきにあるが、気にせず進む。
ここからはもっと道幅が狭く、道路も悪路になる。途中に本当に住んでいるかは分からないが民家がある。そこまではなんとかガードレールなどで安全策は講じられているが、その先になるとガードレールがなくなり、道路は陥没箇所もあり、山からの水も道路に流れているという、まさに「林道」となる。もちろん自動車の離合ができる場所もかなり少ない。車は軽自動車かコンパクトカー、もしくはRV車などがよい。
私の場合、元来能天気なうえにツメが甘いので、こんな狭小な地域にミニバン(アルファード)でやってきてしまった。
まぁこの時は幸いなことに対向車がまったくなかったのでよかったが、できれば大きい車は避けた方がいいかもしれない。
五勇谷橋ゲートまでは見落とさなければキチンと表示(国見岳登山口)があるので迷うことはない。対向車に気をつけて安全運転で進んで行く。

やっとの思いでゲート近くの駐車広場に到着。すでに登山者であろうの車が停まっている。駐車はゲート前は避けて、舗装道路の切れ目手前の広場にしよう。
このゲートの先は工事現場となっており、ゲートのすぐに車を停めてしまうと工事関係車両の妨げになる。この日も工事関係の方々がゲートを開けて車で仕事に向かわれていた。休みの日なのにご苦労様です。
近くには澄んだ水の川が流れており、マイナスイオンが出まくっている。
そんな中で登山準備だ。

今回から新規投入される登山用手袋として購入した「手を大切に、でも指先がないけどね君」だ。
登山用として販売されていたわけではなく、普通のホームセンターのDIY用品で見つけた手袋である。指先がないのを選んだのはiPhoneを使えるようにである。
さて準備も万端、ゲートの脇を抜けて林道を進む。
熊本最高峰に挑む、国見岳山登り出発っ!
目標としていた山だけに登れる嬉しさに浮き足立っての出発だが、あまり調子乗らないようにしよう。
少し進むとちょっと造りに不安のある橋(これが五勇谷橋?)を渡るとコンクリート舗装の道となる。

看板発見。300m先に「登山口」があるようだ。
その300m先に、なるほど国見岳登山口を発見。しかし、この新しいはずの登山口に「(旧)」と後書きしてある。注意書きのように「キケン!新道をご利用下さい!」とある。
なるほど、ここからは登れそうにないほど道だったらしいところが崩壊しており、決して登れるような状態ではない。それに上の方には切り倒した杉の木がゴロゴロしており、危険極まりない雰囲気である。
これが新登山口なのに…もっと新しい登山口があるのかな?
ということでそのまま舗装林道を進む。
しばらく歩くと林道がヘアピンカーブになっている。

そのカーブしたところに「新登山口」を発見っ!
おおっ やっぱりここが一番新しい登山口だね!
まぁ、この登山口は差し詰め「新・新登山口」となる。さっきのが「旧・新登山口」、そしてこの林道をもっと行った先にあるのが「旧登山口」となるのかなぁ。
などと、どうでもいいようなことを考えつつ、登山口に入る。
まずはじめの登りから杉林を抜けるまでの登山道は極めて急斜面だ。
「よじ登る」という表現が大変適切な箇所である。
杉林を抜けると勾配が少し緩やかになる。それでもけっこうな急勾配だ。

しばらく進むと「旧・新登山道」との交点にたどり着く。

下る時に間違ってこの道に入らないためだろう、杭で柵のごとく表示してある。
この旧新道との交点を過ぎるとなだらかな道となる。ここで一旦休憩する。
いつもより寒いと思って一枚多く着込んできたが、やはり最初の登りで大汗をかいてしまった。
ここから先は斜面だが、それほどでもない。これまでの山登り経験がモノをいっているのか、淡々と登ることができる。
ちなみに周りは木々に囲まれているので眺望はよくない。しかし、木々の間から見える遠くの山の高さでかなりの標高まできていることは確認できる。
斜面を登っていると「旧登山道」との交点に到着。

旧登山道も使えないわけではなさそうなので、時間に余裕がある人や急斜面を避けたい人はコチラを利用してみてもよいだろう。
この交点を過ぎるとしばらくはなだらかな稜線を歩く。

最初は木のトンネルのようになっているが、それを抜けると木々の密度が少ない開けた場所になる。
ここらの尾根伝いの登山道にはそうとうな樹齢の木々があるが、台風などの強風のためだろうか、ところどころでその大木が道を塞ぐように倒れている。自然界の厳しさを実感できる。

道の途中でとんでもなく大きな「サルノコシカケ」を発見。
この辺は国有林で上右写真のように注意書きがあるので、持って帰ろうと考える人がいないためにここまで大きくなったのであろう。とにかくでかかった。あれなら確かにサルも腰掛けれると思う。
この辺は特にアップダウンも少なく(ちなみに下る箇所は一箇所のみ)、なだらかに登っているので散策もできて、いい登山道だ。
ここいらで休憩するかな…。
そうこうしていると岩場が現れた。

岩場が現れたということは山頂が近いのか?
岩場からは再び急斜面となる。

急勾配だが、道がジグザグに作ってあるので登りやすい。しかし場所によっては滑りやすいし、ここにも倒木が道を塞いでいる箇所もある。注意して登って行こう。
これを登りきると国見岳の山頂なのだろうか?
時間的には早いが、岩場といい、この勾配といい、多分この上が頂上だ。一気に登ってしまって上で休憩しよう!
ということで、先ほどの休憩から1時間は優に過ぎているが、頂上まで頑張ることにした。
この斜面は延々と続く。まだかまだかと思うが、なかなか終わらない。
やっとの思いで斜面を登りきると…

ぜんぜん頂上ちゃうやん…
あまりの疲労感のために言葉がなぜか関西弁になってしまったが、とにかくここは頂上ではない。
木々の隙間から微かに見える、ここより高い山が…国見岳山頂なのだろう。
まぁ…確かにそんな簡単には終わらないわな…。
ということで、ここで休憩することにした。
ここは木々もまばらで、休憩するにはもってこいの場所である。座り心地の良さそうな石を見つけて大休止。
あぁ…タバコが美味しい…
木々の間から見える他の山々の高さがここより低いか同じくらいである。そうとうな標高まできている。鳥のさえずりや風に揺れる木々の音が心地よく、なかなか喧騒な都会の中では味わえない環境に疲れも少しずつ回復する。
さて、HPもほぼ完全回復したところでまた登り始める。
ここからは平坦で木々もまばらな行程を進む。

道すがら不思議な木を見つけた。大人ひとりが入れるような空洞ができた木だ。面白いので写真に撮ったが、雨宿りによさそうだ。
この先の岩場は頂上を通らずに回り込むように進む。でもせっかくなのでこの岩場にも登ってみたい…けど、帰りに寄ることにする。
最後の勾配が待ち受ける。今度こそ最後のようだ。

勾配の途中で人口の柵が見えてくる。この柵は野生の鹿から植物を守るものらしいが、こんな柵の資材をここまで持ってきた人に感服する。大変だっただろうなぁ。
この柵の右側を沿って登って行く。左側も行けないことはないが遠回りである。
山頂近くはほとんど岩だらけ。背の低い木々をかき分けて進んで行くと…

国見岳山頂に到着~♪
さすがに山頂までの距離はいままでで最長だったし、これまで登った山々での経験をフルに活かせる登山道だったような気がする。
今までにない達成感を感じながら写真を撮りまくる。
誰もいないので自撮りもパシャパシャ。

ひと通り写真を撮り終えたら落ち着いて風景を楽しむ。しかし、周りが山しかないために方向がイマイチ分からない。こんな時はコンパスだ。
雲が多いので遠くの山は見えない部分もあるが、とにかく360度視界良好である。
自分より高い山がないので九州山地の最高峰に来たという実感を味わえる。

そういえばお腹が空いたなぁ~ということでお昼にしよう。
ってか、ちょっと寒くない?
ここは標高1,739mもある。寒いわけだ。
しかし、ここは慌てず騒がず持ってきたパーカーを着る。これでまだまだ山頂を満喫できる。

国見岳山頂にある看板。ここから他の山にも縦走できるようだ。
しばらく山頂を満喫していたが、他の登山客が登ってきたのでそろそろオイトマすることにする。
降り口の先にもうひとつ岩場の展望良好な場所があったので行ってみる。

頂上が見晴らし良すぎなのであまり変わり映えしない写真になってしまったが、ここからの風景も素敵だ。
帰り道に寄る予定をしていた頂上手前の岩山だが、ルートを外れてもすぐに戻れる位置にあるので登ることにした。

ここからの風景も変わり映えしないが、こっちの方が少し紅葉が進んでいるように思う。ちょっと得した気分になった。
そのまま岩山の山頂を帰り道方向に道無き道を進むとルートに戻れる。でも足場が悪いので自信がない人は来た道を戻った方がいいかも。
降りは早い。急勾配はさておき、基本的になだらかな勾配と平坦な道なのでけっこう軽快に降ることができる。

そういえば登山道の途中に「国有林につき伐採や採取…うんぬん」の看板とあわせて「レスキューポイント」の看板もたくさん見かけた。
実はここは携帯電話が通じる(と思われる)ポイントなのだ。
少なくともこの上写真の「304」ポイントはDocomoの3Gで電波を拾うことができた。もしもの時はこの地点まで急ぎ、連絡するようにしよう。
降りで気づいたのだが、登ってきた道が結構な急勾配だったということ。
私はこれまで短い期間で3つの山を経験し、急勾配や岩場登り、それに危険な道などを体験しているのであまり気がつかなかったが、この国見岳は初心者にはキツイ登山行程なのかもしれない。
勾配もさることながら、標高差からくる体調の変化などもある。いろいろと考えたうえで挑戦していただきたい。
と、そうこうしているうちに最後の急斜面の杉林に入った。とりあえずここで休憩しておこう。
ここからはいくら降りとはいえ、急斜面なので体力を使う。特に太ももと膝に相当な負担がくる。ここで少し体力を回復させておく。
そしてその急斜面をゆっくりゆっくり降って…
麓に到着~
とうとう目標にしていた「国見岳」を今年登ることができた。
でも、やっぱり天気がすこぶるいいときにもう一度登ってみたいなぁ~
車を停めたところで着替えを済ませて近くに流れている水場で手と顔を洗う。

冷て~っ!!
でも気持ちいいなぁ。
それからもと来た道を帰るわけだが、帰りももちろん狭い道なので気をつけて帰ろう。
昼間はけっこう対向車がくるので安全運転に心がけよう。

朝は気づかなかったが、ここ五家荘の山深さはハンパない。
昔、平家の人々が源氏に追われてここまで来たというが、確かにここまでくると見つかることはなかっただろう。っていうか、こんなところまでよく来たなぁ~とビックリする。源氏の平家狩りってそうとうなもんだったんだろな…(汗)
時間があればこの五家荘を楽しんでいくのもいいかもしれない。
私は朝が早かったので、これで失礼する。
帰って寝る。

今回のルート(クリックして拡大)
おわり