ドーモ、皆=サン。俺だ!
今回のアンティークコインはこちら。
 
◆イタリア ナポリ&シチリア ミュラ 2Lire 1813年 
なおグレードは六十二。

イタリア 2リレ 表 タイプA

表は肖像と名前、年号。

 

イタリア 2リレ 裏

裏は額面とリース。

 

そしてもう一枚。

イタリア 2リレ 表 タイプB

 

※フラッシュをたいたため、それぞれ褐色がやや強く写っている。

 

これらは手替わりだと思われる。肖像面をよく見て欲しい。
比較しやすい様に並べて黄色の線を入れたものが以下。

 

コインの比較

 

上段は肖像画の後頭部とOの文字の位置関係。
左のコインは後頭部とOの文字にわずかに間隔があるが、右は間隔がほとんどない。
下段はナポレオンの文字。
左のNAPOLEONEの文字の間隔は狭く、右は文字間隔がやや広い。

あと年号1813の後ろにドット「.」のありなしの違いがある。
 
以上のことから、これらは手替わり、もしくは別タイプだと思われる。
なおNGCもPCGSも手替わりとして分けているようには見えなかったし、Numistaにもこのコインのタイプや手替わりについての記載はなさそうだった。(※私の確認がイマイチで記載を見逃している可能性はある)
 

もしかしたらこれらの手替わりはイタリアコインに詳しい方ならご存知のことかもしれぬし、イタリアコインカタログには載っているかもしれない。
イタリアコインに詳しい方、 是 非 ご 教 授 く だ さ い !
(補記:このコインには手替わり2種があることをコメントで教えて頂きました。ありがとうございます!)

 
とりあえず、このコインを手に入れることができて嬉しいし、さらに手替わり発見して満足!
…と、自己満はこれぐらいにしてすこしは皆=サンの役に立つ情報を書こうと思う。
 
まずこの2リレ、小さい銀貨だからと侮ってはいけない。
未使用や準未クラスが少なく、そしてなかなか出てこない。コレクター泣かせだ(涙)
プライスガイドにも未使用や準未の値がついていなかったりする。

 
2023/4に落札された、AU Detail(スクラッチ)でも800ユーロ(手数料入れると960ユーロ?)だったことをふまえると、状態の良いものがいかほどかは察してもらえるのではと思う。
他にも2018年に状態の良い裸コインが1600ユーロ(手数料入れると1920ユーロ?)で落札されたり、もっと遡れば10年前にも良さそうなものの取引記録があったりするのだが、さすがにそこまで昔になると参考にならないので割愛する。
(ついでに補足すると、この時代のイタリアのコインは打刻時の圧が弱めなのか凸部分がしっかり出ていないものが多々ある。なのでMS60台でもでっぱりがないものも結構あったりする。なので、裸コインを買う場合は真贋に加え、摩耗なのか単に弱打ちで凸がでていないだけなのか判断できる眼力が必要そうだ。)
  
  

最後にこのコインのジョアシャン・ミュラについて。(歴史好きでない方は読み飛ばしてください!)
ナポレオンの麾下で元帥の一人。ナポレオンの妹のカロリーヌと結婚し、ジョアシャン・ナポレオン・ミュラと改名した。(ナポレオンの姓はボナパルトなので、ジョアシャン・ボナパルト・ミュラとも。) だもんでナポレオンの義弟であり、ナポレオン一族の一人ともいえる。
また、ナポレオンからナポリ王位をあたえられ、ジョアッキーノ一世と名乗った。
そのためこのコインの銘文にはジョアッキーノ・ナポレオンと記されている。またコインの説明としてジョアッキーノ・ムラートと書かれることもあるが、いずれもミュラの事を指す。

ちなみに、ナポレオンの妹と結婚したことから逆玉成功と思いきや、実はカロリーヌのほうからアプローチをかけたとか。さすが人気者で伊達男、陽キャといったところか。
 
そんな彼もナポレオンには「敵に向かえば最も勇敢な男、しかし会議では決断力に乏しい。」と評されたそうだ。
しかしナポリを治めた際にはナポレオンの意向と反してもナポリ国民のための政策をとったりするなど国民からの人気は高かった。彼の廃位、死後にもミュラ派と呼ばれる勢力が残るほどだ。有能無能と簡単に評することができない魅力が彼にはある。
 
ちゃんと調べていないのでここからは話半分に聞いてほしい。
ナポレオンの兄弟姉妹はヨーロッパの各地で統治者になったため彼らのコインは色々とある。だが、ナポレオン麾下で統治者になりコインを残した人は少ない。私が知っているのはミュラとベルナドット(スウェーデン王、カール14世ヨハン)ぐらい。
彼らのメダルはあるかもしれないが、個性豊かなナポレオン軍団のコインがないのはちょっと残念ではある。

(補記:コメントで教えてもらいました。ナポレオン麾下ではベルティエのコインもあるそうです。ありがとうございます!)

 

 
ここからは蛇足。(あとで消すかも。)
オークションの担当者はコインについて様々な知識があり、話を聞くと参考になる。 しかしコインの種類はとても多く、全てのコインについて網羅的に深く知ることなど不可能に近い。 もし、手替わりや特筆すべきことがあるならば、出品する際に伝えてくれると助かるとのこと。

 

 
そんなこんなで今回は以上。サヨナラ!