ダイヤモンドプリンセス客室の空調は外気70%をカット。30%の内部循環エアだった。 | F1っぅ放送作家 高桐 唯詩のブログ

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70年代から業界で働き、F1総集編26年。ル・マン、パリ~ダカ、ツール・ド・フランスなど冒険好き。現場経験多数。基本は詩人だがレース関係が長いので、クルマ関係者だと思われている。
ちょっとおしゃれで、インテリジェントな、時々泣ける話を目指します。

私は2018年から都内の大病院に入院し治療を受けてきた。
病棟は極めて快適な温度と湿度が保たれ、相部屋だが院内感染など
なかった。

 

           (大黒ふとうのダイヤモンドプリンセス)

 

病院には病室に対して、厳しい決まりごとがある。

医療法第20条:病院、診療所または助産所は、
清潔を保持するものとし、その構造設備は、衛生
上、防火上及び保安上安全と認められるようなも
のでなければならない。

 

          (先日の大学病院。空調はばっちりです)

 

また、医療法第23条では、病院環境に関して、
“病院、診療所又は助産所の構造設備について、
換気、採光、照明、防湿、保安、避難及び清潔その他衛生上遺憾のないように必要な基準を厚生労働省令で定める。
(臨床環境医学27巻第2号より)

 

当然、最新のフィルター技術が注ぎ込まれ、ウイルス対策もしっかりしている。(と信じている)

 

 

さて、私の友人には飛行機好きな方がたくさんいる。
毎週海外に出かける人も多い。

旅客機は高度1万2千メートルという酸素の薄い地域を飛び外気温はマイナス70度近い。

 

では、そこのあなた?

 

旅客機の空気は一体どこからやってくるのか知っていますか?

答えは、エンジンの空気取り入れ口から。
雑に言うと、取り入れた空気を一旦高温にして、冷やし、キャビンに送り込み、使った空気は外に排出する。そんな感じです。

 

【飛行機の空気に関する論文の一部】

 

高々度を飛行する航空機において、機外環境の変化にかかわらず機内を乗員・乗客にとって快適に維持するためには、「与圧」「換気」及び「温度調節」の3つが必要不可欠な基本機能となる。

(中略)航空機に搭載される空調システムは常に清浄な空気を適切な温度で供給しなければならない。


特に「与圧」は、キャビン(客席)やコックピット(操縦席)の機内空間を、
日常活動ができる気圧に維持することであり、3つの機能の中では最も重要となる。

 

例えば、12000mを巡航する航空機にとって、万一「与圧」の機能が停止し、機内空間が機外と同じ圧力(約0.2気圧)まで減圧してしまうと、数秒で生命が脅かされるという危険な状態となる。

 

「換気」についても、狭く密閉された機内空間では、機能が停止すると二酸化炭素の濃度が急激に上昇し、短い時間で呼吸に支障がでるレベルに達する。

このため「換気」は、規定に定められた空気量(一人当たり約250ℓ/分)が確保されなければならない。

機外空間は、地上1気圧の熱帯の高温多湿環境から、
航空機が巡航する成層圏下層の約0.2気圧で、
極地より寒冷な-70℃という環境まで存在する。

このため、航空機に搭載される空調システムは、この広範囲の変化にも対応し「与圧」「換気」「温度調節」の3つの機能を発揮しなければならない。
このように、航空機において、その機能を発揮するためには、
他分野の空調装置とは異なったシステム設計が必要となる。

(中略)

エンジンから抽出される圧縮空気を「抽気」または「ブリードエア」と呼んでいる。

(公財)航空機国際共同開発促進基金 【解説概要17-5-8】

 

中国武漢から日本人とその家族を避難させたANA機も当然このシステムであり、密室のようで密室ではない航空機の空調に助けられ、感染者は少なくて済んだと推察できる。(私の私感です)

 

 

さあ問題はダイヤモンドプリンセスです。

 

三菱重工で作られたこの巨大な大型客船は、どのような空調システムを持っているのか?
私はそこに異常な興味を抱いた。

 

当時携わった人の論文を読むことができた。

SNS上では「塩害対策のため、エアコンは内部循環も多用する」という書き込みもあり「ほんまかいな?」と思っていたが、次の論文の中に、フレッシュエアーと、内部循環があると、しっかり書いてある。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanrin/17/0/17_KJ00004883109/_pdf/-char/ja

 

 

読めばお分かりになるとおり、

客船は新鮮空気量(100%)を設計条件とすることが多いが、
本船に代表されるメガ客船においては省エネ対策として(中略)
キャビン30%、公室・階段室50%、ギャレについては衛星と臭気対策のため100%の条件である。と書かれている。

 

つまり2週間以上留め置かれ、


ゲストがいた部屋は「外気が70%カットされた残り30%の空気の内部循環」で満たされていたということか?

 

      ( 夢のクルーズのはずだった。新型コロナウイルスめ!)

 

私は専門家ではないので、なんとも言いようがないが、
海の上で新鮮な空気を吸って、どうして、新型コロナウイルスが広がるのか不思議でならなかった。

 

もし感染した原因がこの30%の内部循環にあるとしたら、とても悲しいことだ。

 

船を作るときに、日本の病院並みのフィルターや、消毒環境があったら、もっと良かったのではなかろうか。

 

また日本の空調会社が工事を手掛けていたら、もう少しきめ細やかではなかったろうか?

 

ダイヤモンドプリンセスの空調に関しては、どのマスコミも
触れていない。ここはもう一回、検証すべきことだろう。

私自身はダイヤモンドプリンセスの環境対策にケチをつけるつもりはない。
この会社のゴミに対する取り組みなどは立派なものと言える。
そのURLはここ。

https://www.princesscruises.jp/environmental-responsibility/


蛇足。

昔の戦艦や、客船などは空調もプアーだった。

機関室は灼熱地獄。赤道を通る船も、冬の海も外気オンリー。
タイタニックだって暖房はあったろうけど、快適なエアコンはなかっただろう。

ダイヤモンドプリンセスにしても、ようやく今、こうなっていて、大型船の空調はまだまだ研究されなければならないだろう。

 

じゃあまたね。

 

バイバイ。