昨日5/16、上場企業のAbalance 、略称エーバラの元執行役員が
インサイダー取引の疑いで逮捕されたとのニュースが報道されました。
逮捕された堀内氏は2023年1月にIR担当執行役員としてエーバラに入社。
それ以前の経歴は以下の通りです(エーバラ公表資料);
一時は東証や大証にも勤務し、以後も多数の企業のIR担当を歴任。
当然ながらインサイダー取引規制の詳細や罰則など熟知しているはずで、
そんな人がなぜ手を染めてしまったのか?
なぜバレないと思ったのか?
本当に理解に苦しみます。
株価と堀内氏の動きを図で見ると;
報道によれば、堀内氏は2023年1月の入社直後の
2023年1月上旬に同社のベトナム工場新設の情報を得て
公表前の1月中旬に 19,400株を約5,300万円で購入。
→ 平均単価を計算すれば、2,732円。
その後の2月10日にIR担当としてベトナム工場新設計画を公表。
以後、株価は急上昇し、5月17日には最高値 13,460円に到達。
→ この時点で売っていたら、2億812万円の儲け!
だが当時はまだ執行役員だったので、この時点では売ってないでしょう。
問題が社内で発覚し(総務が株主名簿を管理しているので
バレて当たり前だと思うのですが)、7月に退職。
→ この頃の株価は 9,000円程度だったので、ここで売っていれば
1億2千万円ほどの儲けになります。
もし売らずに今まで持っていたとすれば、現在の株価は 2,148円なので
儲けはゼロで含み損を抱えてる事になります。
→ そうだとすれば、損して罰を受けて、まさに泣きっ面に蜂
さて、インサイダー取引の罰則はどの程度か?
① 刑事罰;
(a) 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方
及び
(b) インサイダー取引によって得た財産の没収
→ 注目!「利益」でなく「財産」です。
つまり、今回の場合、もし退職時に9,000円で売って
1億2千万円の利益を得たとしたら、没収されるのは
1億2千万円ではなく売却代金 1億7千万円超全部です。
購入時に使った 5,300万円が丸損になります。
② 課徴金;
上手く売り抜けて大儲けした場合は上記①-(b)で全部持って行かれますが、
まだ売ってなかった場合や、売ったけどタイミングが悪くて
あまり儲からなかった場合も、課徴金があります。
→ (重要事実の公表後2週間の最高値 - 買付け価格) × 買付け数量
今回の場合、公表2月10日から2週間以内の最高値は 5,420円。
買付け価格との差は 2,688円。
→ 19,400株分で5,200万円が課せられます。
→ 過去5年以内に別件で課徴金納付命令を受けた事がある場合、
課徴金は 1.5倍に増額されます。
①-(b)が②より大きければ課徴金は無し。
そうでなけれ①-(b)との合計が②になるように課徴金が調整され
合計で②の金額が請求される事になります。
インサイダー取引はバレやすい一方、発覚した場合の
罰則金や課徴金が大きく、決して割に合いません。
今回の場合、堀内氏には悪気はなく、
・執行役員に就任したので当然のように自社の株を買った。
・工場新設の件でこんなに株が上がるとは思わなかった。
など言い分はあるのでしょうが、疑われる行為を行なって
しまった訳です。
「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」
ことインサイダー取引に関しては、疑われる事のないように注意が必要です。
インサイダー取引規制の対象は;
①役員、従業員、パート、アルバイト
②取引先や取引交渉中の相手方
③3%以上の議決権を持つ株主
④許認可に関わる公務員等
⑤公認会計士、弁護士等、契約している人
⑥上記①〜⑤を辞めて 1年以内の人
⑦上記①〜⑥から情報を聞いた人(第一次情報受領者)
上記の①〜⑥の人は、自分で関係者だと分かってるでしょうが、
問題は⑦です。
うっかり耳にして関係者になってしまう事があります。
そういう場合、そういう銘柄の株は売買しないように
気をつけましょう。
以上です。
尚、上記の数字はネット情報に基づいて試算した推定値であり、
実際の金額は全く異なるものになるかもしれません。
間違いがあった場合はご容赦お願いします。