オイシックス・ラ・大地の2024年3月期 通期決算が
本日5月14日に公表されました。
決算内容を見る前に、株価の動きを月足で見てみます。
月足
500〜600円程度で安定していた株価が2018年に入って上昇開始、
2020年以降はコロナ特需に上手く乗って更に上昇、
2021年9月には最高値 5,220円に達し、約4年でほぼテンバガー!
だが、そこで頭打ちで同年11月に急降下。
翌2022年6月に 1,400円台で底を打ち反転上昇、
2023年5月に 3,000円台まで戻したが、そこから再度急降下。
2023年11月以降は 1,100〜1,500円辺りで低迷しています。
直近の動きを日足で見てみます。
日足
昨年10月以降は緑の通り 1,100〜1,500円のレンジ。
もっと短いスパンで見ると本年2月以降は黄色の線の通り
下降トレンドのレンジに入っているようでした。
これが本日、引け後の決算発表を前に下降のレンジを
少し上抜け、ここで決算発表を迎えました。
それでは決算の中身を見てみましょう。
1) 当期決算: 大幅な増収増益。
a) 売上は前年比 29%増、営業利益は 54%増。
売上と営業利益率の四半期別推移は下図の通り。
売上は2020/3期 後半から2021/3期 前半にかけて拡大。
これは、コロナ禍初期の宅配需要急増が主要因。
以後はほぼ横這いになっていたが、当年度のQ4にほぼ倍増。
→ これは、本年1月に当社とほぼ同規模の「シダックス社」を
子会社化し、連結を開始した為。
一方、営業利益率は以前は 6%前後だったものが、
2022/3期 Q4に赤字転落。
→ 新設の物流センターのトラブルが主因。
それ以後は、2023/3期 Q4は例外的に営業利益率が低かったが、
→ 特別PR費 11億円をかけたため。
それ以外は概ね 3〜4%で推移。
しかし当年度のQ3には 6.9%に上昇
→ 食材の切れ端などの有効活用や物流費の改善などが進展。
だが当年度のQ4に 1.4%に下落。
→ シダックスの営業利益が 7.2億円上乗せになったが、
のれん償却で4.7億円(今後も継続)と
シダックス子会社化に要した 3.8億円(一過性)が
かかり、計 1.3億円の持ち出しとなった。
→ 一過性の費用を除いても営業利益率は 2.1%と低い。
→ 厚木冷凍倉庫の移転費用(一過性)なども悪化要因だった。
2月13日に公表した当年度の業績予想に対しては、
売上はほぼ予想通り(1%上振れ)、営業利益は 22%上振れた。
→ 厚木倉庫の移転費用を予定より抑えられたため。
2) 安全性: 結構厳しそう。
a) 流動比率は 98%と、一般的に「厳しい」と言われる100%を
少し下回った。
これは、シダックスの子会社化に伴い、無形固定資産が
約400億円も増えたのに(内訳は顧客関連資産が257億円、
のれん代が 136億円など)、増資などせずに手元資金や
借入金で賄った事による。
特に、借入金に関しては 146億円は長期借入金としたが
150億円を短期借入金とした事が効いている。
b) 営業キャッシュフローは…
オイシックスは少なくとも過去6年間は常にプラス。
シダックスはプラスになったりマイナスになったりだったが、
マイナスの年も金額はオイシックスのプラスの金額より
ずっと小さいので、両社合計ではプラスを維持できると見込める。
c) 売掛金回収期間は2.0ヵ月、在庫期間は0.6ヵ月で、危なげない。
d) 流動比率は厳しいものの、営業キャッシュフローがプラス
(日銭が入ってくる)なので、何か非常事態が起こらない
限りは問題はないと思う。
しかし、非常事態が起きても耐えられるように改善すべき。
その為には無形固定資産などは長期借入金など
すぐに返す必要のない資金で賄うべきで、
銀行などと交渉しこの点を改善していくべきと考える。
3) 収益性: 低い。
a) 売上総利益率は前年度は 48%、当年度は 42%と安定的に高い。
だがシダックスは 13〜14%と低い。
→ オイシックスはBtoC主体なので利益率が高かったが、
シダックスはBtoB主体なので利益率が低めなのはやむなし。
→ 2025/3期以降はシダックスをフルに連結するので、
オイシックスの連結決算でも売上総利益率は
低下すると思われる。
b) 営業利益率は上述の通り低い。
→ 2025/3期は 2.7%の見通し。
今後、シダックスと物流共有化などを通じてコストを下げるなど
利益率改善を図っていく模様。
4) 成長性: 成長戦略を推進できれば高成長が期待できる。
年間の売上推移は下図の通り;
a) 2021/3期までは既存のBtoCサブスクビジネスが順調に成長し、
2017/3期からの 4年間で売上は年平均 44%増加。
だが、以降はほぼ横這い。
b) それ以外のビジネスにも色々取り組んではいるが、
大きくは伸びなかった。
しかし、2024/1月のシダックスの連結子会社化により
2024/3期にはシダックスの3カ月分の売上が乗っかり、
売上は急増した。
c) 2025/3期にはシダックスの売上の1年分が乗っかる事になり、
売上は更に急拡大する見通し。
…とここまでは良いが、問題はこの後。
当社の事業ポートフォリオは下図の通り;
当社によれば、上記の内の「(A)食のサブスク」の部分を
現在の売上規模(900億+550億円)を 2030/3期には3,000億円に
伸ばす事を目指すとの事。
→ 実現すれば、年平均成長率は 12.9%となる。
総括;
① 2024/3期と2025/3期は、シダックスの連結子会社化により
大幅な増収増益。
② それ以降も成長し続けるかどうかは、
成長戦略を着実に実行できるかどうか次第。
③ 収益性は今は低い。
しかし、オイシックスとシダックスとの物流合理化など
コスト削減により収益性の改善も見込めそう。
④ 2025/3期の最終損益見通しは前年の 4,120百万円から
3,200百万円に22%減益となっているが、これは
2024/3期には 1,978百万円の特別損益を含んでいる為。
(これは殆どがシダックスの連結子会社化に伴うもの)
→ これを除くと 2025/3期も実質的には増益となる。
このオイシックス、株式投資に興味ある方は、会社の事をより良く
知るためにも、一度サービスを試してみてはいかがでしょうか?
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。
以上です。