本日3月7日、RIZAPが立会外分売を発表しました。
予定期間は 3月15〜19日
分売実施日や分売価格は、上記期間のいずれかの日の
前営業日大引け後に決定されるそうです。
決定後の申し込み期間が短いので、興味ある方は
証券会社の関連情報をまめにチェックしておいた方が
いいと思います。
さて、「立会外分売」とはどういう事か?
分売する事がどんな意味を持つのか?
先日、RIZAPの財務分析の記事をこのブログにアップした事から
これも何かの縁だと思い、RIZAPのリリースを見てみました。
(1) そもそも「立会外分売」とは何か?
大株主が自分の持ち株を売りたい時、株式市場で売ると
大量の売りが出る事になり株価が暴落する恐れがあります。
これを避ける為、証券会社に頼んで値段を決めて市場外で
買いたい人を募って販売する、という方法があります。
これが「立会外分売」です。
(2) RIZAPの今回のケース;
2023/3末時点の発行株式数は、556,218,400株
筆頭株主は瀬戸社長の資産管理会社で、持分は 177,374,400株(31.9%)
瀬戸社長個人は第2位の株主で、持分は 147,986,000株(26.6%)
実質的には瀬戸社長が計 58.5%をコントロールしている格好です。
この内、瀬戸社長個人の持分 27,755,200株を、立会外分売にて
証券会社経由で一般株主に売却しようというものです。
(3) 瀬戸社長の持株比率は下がるのか?
この立会外分売だけなら、瀬戸社長の持株比率は下がります。
ただ、立会外分売により瀬戸社長は多額の資金を得る事ができます。
仮に、今日の終値 485円で売れたならば、134億円超の資金を
瀬戸社長は得る事になります。
この資金を使って、瀬戸社長は以前に得ていた新株予約権を
行使する予定との事です。
行使価格は 194円で株数は 55,000,000株。
瀬戸社長はRIZAPに 106億円超を支払う事になります。
これにより、RIZAPの発行株式数は約10%増えます。
筆頭株主である瀬戸社長の資産管理会社の持分比率は
31.9%から 29.0%に希薄化します。
しかし、瀬戸社長個人の持分は、2,775万株超を売って
5,500万株を増資で得るので、結果 26.6%から 28.7%に増えます。
資産管理会社の分と合わせて 58.5%から 57.7%へと
僅かに下がりますが、半分以上を握った大株主の立場は維持できます。
この一連の動きにより、瀬戸社長個人の持分は増え、
資産管理会社の分と合わせた比率は微減で済み、
瀬戸課長は 134 - 106 = 28億円の現金を得る事になります。
坊主丸儲けです。
(4) RIZAPにとってはどうなのか?
立会外分売そのものは、株主が変わるだけなので、資金的には
RIZAPには影響ありません。
ただ、現在は札幌証券取引所に上場しているRIZAPが、
将来は 東証プライムへの上場を計画しているとの事で、
立会外分売により流通株式数を増やして実現に近づける
という意味はあるようです。
RIZAPに対し、より大きな影響を与えるのは、立会外分売の
後に予定されている 新株予約権の行使です。
これにより、RIZAPは 106億円の資金を得る事になります。
このブログの2月22の記事で財務状況が結構厳しいと
記載しましたが、これが多少はマシになりそうです。
どれくらいマシになるか?
「今後1年間に現金化できる予定のもので
今後1年間に払う予定の金額をどれだけ賄えているか?」
を示す指標である「流動比率」は一般的に 100%を切ると
「危険」と見られるのですが、
RIZAPは昨年12月末時点で73%でした。
かなり厳しい状況です。
106億円相当の増資は、試算では流動比率を 85%に改善する
効果があるようです。
マシになりますが、まだまだ 100%には届かず、
厳しい状況である事は変わりません。
また、RIZAPのリリースによれば、増資で得た資金の一部を
瀬戸社長の資産管理会社からの借入金の返済に充てるとの事。
この会社から実際に幾ら借りてるかは判りませんが、
借入の極度額(上限)は 55億円。
RIZAPは 369億円の長期有利子負債を抱えているので、
上記の資産管理会社からは極度額いっぱいまで借りている
可能性が高い。
その場合、これを返済してしまうと、流動比率は 79%となり
12月末の 73%からそんなに改善しない印象を持ってしまう。
という事で、今回の立会外分売と増資は、RIZAPにとっては
東証プライム上場へ一方近づける事、資金繰りの助けとなる事、
という効果はあるものの、インパクトは大した事はない、
と思えます(個人の意見です)。
(6) 株主にとってはどうなのか?
瀬戸社長にとっては、上述の通りボロ儲け。
その他の株主にとっては;
① 約10%相当の希薄化というデメリット。
② 上記(5)に書いたRIZAPにとってのメリットが
株価に影響してくる可能性。
→ 特に106億円のキャッシュの一部を
チョコザップ店舗増の資金に使える事。
これらメリットとデメリットとをどう捉えるか?
は、個人の判断にお任せします。
3/15 追記
立会外分売が終了しました。
結果は、株価 377円で、株数は 6,040,100株。
瀬戸社長が調達する資金は約23億円。
ここから相当額の所得税/住民税が引かれます。
税金を無視し、瀬戸社長がこの資金を全額使って
新株予約権を行使した場合;
- 筆頭株主である資産管理会社の持分; 31.9% → 31.2%
- 第二位株主である瀬戸社長の持分; 26.6% → 27.1%
両社合計; 58.5% → 58.3%
RIZAPグループが得る資金は最大23億円で、
資産管理会社からの借金が極度額いっぱいの55億円だとすると
得た資金は全額この返済に充てられるので、チョコザップの
店舗展開に使えるようなお金は残らないと推察されます。
(個人の推察です)
尚、上記は筆者個人の考え方に基づいたもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字や内容には筆者の下記間違いや勘違いが
含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
中身はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。