RIZAPグループ - 2024年3月度 第3四半期決算 | 投資家リプリーの気まぐれブログ

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「結果にコミット」

スポーツジム運営で有名な上場企業 RIZAPグループが

2月14日に2024年3月度 第3四半期(Q3)決算を発表しました。

 

それを受け、Z(旧ツイッター)上で色んな意見が

飛び交っていると聞き、興味を持って決算内容を見てみました。

 

さて、「株価にコミット」できそうな内容なのか?

決算内容に触れる前に、まずは株価の推移を見てみましょう。

 

 

(1) 株価推移

 

月足です。

2017年に急上昇しましたが、その頃に大きな損失を計上、

株価は反転急落。

2020年に底を打ったものの、以後は低い位置で低迷しています。

 

 

日足です。

今、話題のChocozapが好調との報道を受けてか徐々に上昇。

そして2月14日の決算発表を受けて更に上昇。

現時点では、主要な移動平均線が全て右肩上がりで

しかも日数の順に並ぶという「パーフェクトオーダー」です。

 

では、RIZAPグループってどんな会社でしょう?

 

 

(2) RIZAPグループって、どんな会社?

 

この問いに多くの人は「フィットネスの会社」と答えるでしょう。

でも、決算書を見る限りでは、これは違うようです。

 

「個人の『自己投資』に関わる事業に幅広く投資していく会社」

という感じで、66社の連結子会社を持ち、それらを以下の

3分野に分けて管理しているようです。

 

 (a) ヘルスケア・美容

 (b) ライフスタイル

 (c) インベストメント

 

RIZAP社は(a) ヘルスケア・美容に含まれています。

 

上記3分野の売上比率は次の通りです(当年度Q1〜3実績);

つまり、第1の分野は「ライフスタイル」であり、

RIZAP社が所属する「ヘルスケア・美容」は第2の分野です。

RIZAP社の売上(Chocozapを含む)はこの「ヘルスケア・美容」の

およそ半分程度です。

 

グループ内で最大の売上を誇るのは「REXT」という

「ライフスタイル」部門の企業で、昨年度の実績は

RIZAP社の2.4倍程でした。

 

 

では、今年度Q1〜3の決算を見てみましょう。

 

(3) 2024/3年度 Q3決算

 

 (a) 当期損益; 増収、だが営業赤字。

 

  売上は前年同期比 7%増。

  営業損益は 48億円の赤字で、前年同期の 11億円より

  赤字幅が膨らんでいます。

 

  これだけ見れば相当悪く見えますが、四半期別に見れば

  下図の通りで、過去3つの四半期で連続して赤字だったのが

  このQ3で黒字化しています。

  

  大本営発表によれば、黒字化の要因はChocozap事業が黒字化

  した為との事。

 

  しかし、それだけでしょうか?

  3分野毎の営業利益の推移を見てみました。

  

  赤い星を付けているのがこのQ3です。

  Chocozapが含まれる水色の部分はまだ赤字です。

  赤字幅が大幅に減少したのはChocozapのお陰かもです。

  だが、それよりも目立つのはオレンジ色の部分、

  「ライフスタイル」部門の黒字化です。

 

  Q3の黒字化はChocozapだけでなく、ライフスタイル部門の

  貢献によるところが大きかった模様です。

  

  いずれにせよ、Q3の黒字化を受けて当年度通期見通しの

  営業損益を従来の 45億円の赤字から 18億円の赤字に

  上方修正しました。(売上は変えてません)

 

  決算発表後の株価上昇は以下2点が評価されたものと思われます。

  ① Q3単独では営業黒字。

  ② 通期見通しを上方修正。

  

 

 (b) 安定性; 結構厳しい。

 

  流動比率が 73%と非常に低く、危険水域にある。

  これは、今後1年間に現金化できる予定のもので

  今後1年間に払う予定の金額をどれだけ賄えているか?

  を示す指標で、一般的に100%を下回ると「危険」と

  見られます。

 

  前前年度末は 117%、前年度末は 89%、そして今年度Q3末は

  73%とどんどん悪化しています。

 

  なぜこうなったか?

  2022/3、2023/3年度の期末と今回発表の昨年12月末の

  バランスシートを簡単に図示したのが下図です;

  

  流動比率は、流動資産(一年以内に現金化予定のもの)の

  流動負債(一年以内に返済予定のもの)に対する比率です。

  流動比率が下がったという事は、現金化予定の資産が減り

  返済予定の負債が増えたという事です。

 

  色々ある項目の中で大きく動いたのは以下の4つです;

  ① 有形固定資産が増えた。

   → Chocozap本格開始が2022/9なので、

    Chocozapの店舗増が最大の要因かもしれません。

  ② 純資産が減った。

   → 儲かってないから仕方ありません。

  ③ 現金が減った。

   → 店舗増を進めて機材等に多額の投資を行った資金を

    利益でカバーできず(損してるので)、手元の現金で賄った

    と推察されます。

  ④ 借金が増えた。

   → 資産の増加を手元の現金だけでは賄いきれず、銀行等からの

    短期借入金を増やして賄ったと推察されます。

   → 借金は借金でも「長期借入金」で賄っていれば

    流動比率に影響ありませんが、「短期借入金」で

    賄ったので、このような状況になった模様です。

 

  一年以上使う予定の機材を買う為の資金ならば長期借入金

  (一年以上返さなくてもいい借金)で賄った方が良いのですが、

  そうしなかったのは;

  ・短期の方が金利が安いから?

  ・銀行が長期を嫌がったから?

  のどちらかでしょうか…

 

  一方、売掛債権回収期間が 1.5ヶ月と短く、しかも

  仕入債務支払い期間が 3.9ヶ月と長いので、

  売上が伸びたら資金が楽になる構図。

 

  また、当社資料によれば下記の通りChocozapの黒字化により

  借入金増加ペースはピークアウトとの事。

 

  従い、今後は資金の安全性も増していくと期待されます。

 

 

 

 

 (c) 収益性; 厳しい。

 

  Q3は営業黒字化したとの事だが、Q1〜3累計ではまだまだ大赤字。

  黒字化が今後も続くかどうかは未知数。

  

  ポイントは;

  ① Chocozapが好調と言っても、同事業が含まれる

   「ヘルスケア・美容」部門はQ3も赤字。

  ② Q3の黒字は「ライフスタイル」部門によるものだが、

   この部門についての資料が少なく、ここの損益改善が

   継続的なものか一時的な理由によるものか見えずらい。

 

  という事で、Q4以降の損益を見てみなければ

  収益性が根本的に改善しているのか見えずらい状況。

 

 

 (d) 成長性; Chocozapがどこまで貢献するか?

 

  四半期毎の分野別の売上推移は下図の通り;

  

   Chocozapが含まれる「ヘルスケア・美容」部門は青色で、

   確かにChocozapを本格的に始めた2022/9 (赤い星の辺り)

   から売上は確実に伸びている。

 

   だが、全社売上の36%を担う「ヘルスケア・美容」部門の、

   その半分程度を担うRizap社の、更にその一部がChocozap事業。

   Chocozapの現状の売上は全社売上の10%程度と推察される。

   

   Chocozap売上が倍増しても全社売上が10%程度増えるに過ぎず、

   全社の規模で見れば爆発的な上昇には繋がりにくいと推察される。

   (あくまで個人の意見です)

 

   より売上の大きなライフスタイル部門をどう成長させていくか?

   の戦略が今ひとつ見えにくく、当社の成長性は見え難い。

 

   Chocozapにしても、次の2つのジレンマを抱えていると

   推察される;

 

   ① 店舗辺りの売上はいずれ頭打ちになる。

    → 店舗辺りの売上を増やすには、その店舗の会員数を

     増やす必要があるが、会員数が増え過ぎると混雑して

     マシンを使い難くなり、Chocozapの最大の魅力の

     「隙間時間にさっと行ってさっと済ます」が

     成り立たなくなる。

    → 実際に知人(20代女性)のChocozap会員は、最近は

     ジジババが長居して「ずっとザップ」してて

     隙間時間に行っても「チョコザップ」できない事が

     多い… と嘆いていました。

 

   ② 店舗辺りの売上が頭打ちになっても売上を増やし続けるには

    店舗数を増やし続ける必要がある。

    → 店舗を増やすと、敷金礼金や機材の購入などで

     初期投資が大きく、厳しい資金繰りを更に圧迫する。

     今のように資金繰りが厳しい状況下では

     店舗増のペースを落とし、既存店で資金を

     回収して資金を貯める事が必要かもしれない。

 

   新規店と既存店の比率の推移は下図の通り;

   

   このように、既存店の比率が増えてきた事が

   Chocozap事業黒字化の大きな要因だと推察されます。

   「新規店」も5ヶ月経ったら「既存店」になる訳で、

   今後の出店ペースはこの比率を睨んで既存店率を

   落とさないように配慮しながら進める事が重要。

 

   当社自身も中期経営計画の中でChocozapの店舗数と

   店舗辺りの会員数のコントロールが重要であると

   意識しているようです。

   

  

   ここで;

   ① 資金繰りと新規店舗数の兼ね合い。

   ② 店舗辺り会員数と顧客満足度の兼ね合い。

 

   この2つの兼ね合いを上手くコントロールしていければ、

   Chocozap事業が大きく成長して会社全体を引っ張っていく

   ようになる可能性は、十分にあると思います。

 

 

結論;

① Q3黒字化と通期見通し上方修正とにより株価は上昇。

② 今後も収益が改善するかどうかは次の2点次第;

 ・Chocozapを上手く成長させられるか?

 ・それ以外の多数の事業、特に主力のライフスタイル分野の

  事業群の成長戦略をどう描くか?

③ Chocozapの成長に関しては、以下の2つの兼ね合いを

 上手くコントロールできるか次第;

 ・資金繰りと新規店舗数の兼ね合い。

 ・店舗辺り会員数と顧客満足度の兼ね合い。

  

 

尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、

別の見方をされる方もおられるかもしれません。

また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや

勘違いが含まれているかもしれません。

 

いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。

数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。

 

 

以上です。