スマレジが6月13日の引け後に2023年4月期 通期決算を
発表し、翌14日に一時ストップ安となりました。
なんでそんなに売られたのか?
株価の推移と決算の中身を見てみました。
(1) 株価
(a) 週足
2020年以降の当社株価は、上図に記載した決算発表のタイミングで
上昇・下落・上昇・下落、とトレンドを変えてきた様に見えます。
・2020年3月、2020/4期Q3決算発表後に上昇
・2021年9月、2022/4期Q1決算発表前後から下落
・2022年6月、2022/4期Q4決算発表後から上昇
以後の最近の動きは日足で見てみます。
(b) 日足
2023年3月15日、2023/4期Q3決算を発表。
翌日はストップ高、翌々日も大きく上昇したが、
それ以後は徐々に下落。
そして、6月に入ってからは決算期待からか上昇、
だが6月13日の2023/4期決算発表を受けて
翌14日には一時ストップ安。
その翌日にも下げてと翌々日に戻して通称「死んでま線」を
形成、以後は3日間はほぼ横這い。
では、決算内容を見てみましょう。
(2) 2023年4月期 通期決算
(a) 決算結果; 大幅な増収増益。
売上は前年比 43%増、営業利益は 31%増、と
申し分無い結果を残した。
だが、翌期(2024/4期)見通しは、
売上は 30%増を維持するが、営業利益は
僅か 2%の伸びに留まる見込み。
純利益に至っては 28%の減益見通し。
→ これは、当期(2023/4期)に子会社を吸収合併
した事による特別利益(抱き合わせ株式消滅益)と
法人税調整益とを計上し当期の純利益が
前年比 99%増と実力以上に膨らんでおり、
翌期はそれが剥落した背景もあるが、減益は減益。
四半期別の推移は以下の通り;
売上は、2021/4期以降は概ね右肩上がりで増加。
例外的に以下の2期の売上が特に大きい理由は以下の通り;
・2020/4期Q2;
2019年10月の軽減税率導入によるレジでの消費税計算の
複雑化を受けてPOSレジ導入/買い替え需要が爆発して売上急増。
・2022/4期Q4;
2021年12月に買収した「ロイヤルゲート」社の売上が
フルに連結された為に売上増加。
営業利益率は、後述の例外的な2期を除けば、
2020/4〜2021/4期は概ね 25〜30%の高収益を誇っていたが
2022/4期に入って営業利益率が急激に悪化。
それが、2023/4期に入って 15%程度に安定。
営業利益率が例外的に低かった2期の理由は以下と見られる。
・2020/4期Q4;
コロナによる緊急事態宣言で苦境に陥った加盟店を支援。
(加盟料減免など)
・2022/4期Q4;
大量の広告宣伝費の投入。
広告宣伝費の四半期別推移は以下の通り;
株価は;
・高収益だった頃は、株価上昇。
・営業利益率が下落した頃は、株価下落。
・営業利益率が安定した頃は、株価上昇。
という流れの様に見える。
(b) 安全性; 良好。
「一年以内に支払わなければならない債務が、
手持ちの現預金や一年以内に現金化できる資産などで
どれだけカバーできているか?」を示す流動比率は
372%で、一般的に「安全」と言われる200%を
大きく上回っている。
営業キャッシュフローもプラス。
無借金経営。
売掛債権回収期間は 1.1ヶ月、在庫期間は 2.3ヶ月で
いずれも常識的な範囲。
これらより、財務の安全性は良好と見られる。
(c) 収益性; 良好。
売上総利益率は 60%、営業利益率は 15%と悪くない。
だが、以前の25%を超える高収益時代を知ってる人から
見れば、物足りないかもしれない。
ROEも19%と良好。
しかし、2024/4期の見通しでは営業利益率は12%に
悪化する見通し。
(d) 成長性; 非常に良好。
2023/4期の売上は前年比 43%増、
過去5年間の売上年平均増加率は31.5%、
2024/4期も 30%増を計画。
当社の 2023/4期の売上 59億円の内、43億円がサブスク売上。
(月額利用料など。当社は「ARR」と呼称)
当社は、このサブスク売上を今後も年率 30%超の増加を計画。
この為に多額の広告宣伝費を投入し続ける計画で
その間は営業利益が伸びない可能性大。
→ 当社の中長期計画にあったキーワード;
結論;
① 2023/4の決算自体は極めて良好で、安全性や成長性も申し分無し。
② だが、2024/4の営業利益率は下落を計画。
③ 今後も、売上(特にサブスク売上)の高成長を追求し、
その為に減益覚悟でアクセルを踏む。
④ 過去の株価推移を見ると、営業利益率が下がる局面では
株価も下がっていた。
⑤ 現在の株価 2,320円で算出されるPERは69.8 → 結構高い。
今後、売上が伸びても利益が横ばいに終わるなら、
株価が上がるとPERも上がってしまう。
という事で、今回、株価が落ちた理由は、
翌期の営業利益率の下落、純利益の減益、それと
今後も利益の増加は当分の間は期待できない事、
だと思われます。(勝手な推察です)
さて、株価は利益が伸びない事を嫌気して
今のレベルから更に下がるのか?
それとも売上増加期待で反転上昇するのか?
どちらでしょうね。
以上です。
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。