ソシオネクスト 、株価と決算 | 投資家リプリーの気まぐれブログ

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株式投資に関して気になった事、調べた事などを気まぐれにアップしていきます。

ソシオネクストの株価の動きがネットで話題です。

 

そもそもどんな会社なのか、株価の動きや決算は

どんな感じか、見てみました。

 

 

(1) どんな会社?

 

 ソシオネクストは、「SoC」と呼ばれる半導体チップを

 開発・販売する企業で、富士通とパナソニックのSoC事業を

 引き継いでできた会社です。

 いわゆる「ファブレス」で、工場は持たずに

 製造は外注しているようです。

 

 「SoC」とは「System on a Chip」の略で、

 一個の半導体チップの上にシステムの動作に必要な機能の多く、

 あるいは全てを実装する設計手法の事を言います。

 また、この手法で作られたチップそのものも「SoC」と

 呼ばれています.

 

 「SoC」には主に下記の2種類があります;

  ①ASSP: 特定の用途の為に設計された汎用品

  ②ASIC: 特定の顧客の用途の為に特別に設計された特注品

 

  例えば、スマホの画像処理。

  「画像処理」という用途の為に設計され、

  そのチップ一個で画像処理ができてしまい、

  どこのスマホメーカーでも使う事ができる半導体チップ、

  こういうのが「ASSP」です。

 

  ASSPの場合、チップメーカーが開発/製造(外注含め)し、

  スマホメーカー各社に販売する事になります。

 

  でもASSPでは、スマホメーカーは「画像処理」という機能では

  他社と差別化ができません。

  「画像処理」で差別化したいと考えるスマホメーカーは、

  独自の技術でチップを開発し自社のみで使おうとします。

  このような場合に使われるチップが「ASIC」です。

 

  ASICの場合、スマホメーカーが論理設計を行って仕様を確定させ、

  その仕様に合わせてチップメーカーが物理設計を行い、

  製造し(外注も含め)、スマホメーカーに販売する事になります。

 

  上記では「画像処理」を例に挙げましたが、その他にも

  コンピューター関連や通信機器、電気製品など

  様々な分野でSoCは使用されています。

 

  ソシオネクストは当初から「ASSP」と「ASIC」とを

  取り扱っていますが、ここ数年は「Solution SoC」という

  独自のビジネスモデルに注力しています。

  これは、通常の「ASIC」の様に顧客が自分で論理設計を

  行うのではなく、その段階からソシオネクストが入り込んで

  顧客と共同で開発するというものです。

 

  こうする事で、ハードとソフトの連携を最適化し、

  より高度にカスタマイズされたSoCを開発できるとの事です。

  また、ASICを開発する能力がなくASSPを使うしか

  なかった様な新興企業なども、ソシオネクストが

  初期から協力する事でASICを開発する事ができます。

 

  この「Solution SoC」がソシオネクストの強みで、

  このビジネスモデルを駆使して、特に自動車、

  データセンター、そしてスマートデバイスなどの

  分野に注力している模様です。

 

  そして、最近は、チャットGPTが巻き起こした

  生成AIブームの中で、AIに使用される半導体チップの

  担い手としてソシオネクストが期待されている、

  という事のようです。

 

 

(2) 株価の動き;

 

  ソシオネクストは2022年10月上場。

  公募価格は 3,650円で、初値は 3,835円。

  以後はほぼ右肩上がりで上昇、特に本年5月頃から

  上昇スピードを上げ、6/21に最高値 28,330円を記録。

  この時点のPERは 54.5

  

  だが、翌日6/22には反転下落し、最高値から約20%安の

  22,720円で引け。

  そしてその翌日の6/23には前日終値比 ▲11%〜+7%と

  大きく振れた結果、終値は▲1%の22,490円で着地。

  この時点でのPERは 43.3

 

  週明け以降の動きが気になりますね。

 

 

(3) 2023年3月期決算;

 

 それでは直近(4/28発表)の決算内容を見てみましょう。

 

 (a) 収益; 実績は大幅な増収増益。

 

  2023年3月期の売上は前年比 65%増、

  営業利益は 2.5倍超に増加。

 

  だが4半期別の推移を見ると以下の通り

  (売上の単位は億円)

  

  売上は2023/3期Q3までは順調に伸びていたが、

  直近のQ4は直前のQ3より下がっている。

 

  営業利益率も2023/3期Q1をピークとして四半期毎に

  下がっており、Q4には10%を切ってしまった。

 

  通期では大幅な増収増益だったが、Q4だけを見ると

  ちょっと冴えない… という結果だった。

 

 

 (b) 安全性; まあ良好。

 

  「一年以内に支払わなければならない債務が、

  手持ちの現預金や一年以内に回収できる資産で

  どれだけカバーできているか」を示す流動比率が 190%で

  一般的に「安全」と言われる「200%」に近い。

  

  無借金経営で、営業キャッシュフローは大幅な黒字。

  売掛債権回収期間は 2.5ヶ月でこの業界では

  常識的な範囲内。

 

  上気より、安全性は良好と考えられる。

 

  但し、在庫期間が 5.5ヶ月と長い。

  特注品中心のビジネスなので作ればすぐ売れるんじゃ

  ないか(逆に言えば、作ったのに売れない場合は他に

  転売できないので不良在庫になり易い)と思うので、

  これは少し心配。

  今後の推移を注視すべきと思う。

 

 

 (c) 収益性; 良好だが下落傾向

 

  売上総利益率は 46%、営業利益率は 11%、

  ROEは 18%と良好。

 

  だが前述した通り、営業利益率は2023/3年度に

  入ってから下降傾向にあり、

  直近のQ4は 10%を切ってしまった。

 

  但し、翌2024/3年度の営業利益率は11%に戻る見込み。

 

 

 (d)  成長性; まあまあ良好。

 

  2023/3期の売上は前年比 65%増と大きく上昇。

  この最大の原因は;

  ① 2019年度以降に獲得した大型商談の量産が本格化した事。

   → 獲得した商談が売上に効いてくるまで結構時間がかかる模様。

  ② 売上増の制約となっていた生産能力を確保できた事。

 

  2024/3期の売上は前年比 4%増に留まっているが、

  これは為替を堅く見積もっているため(詳細後述)。

 

  中期的には、売上は年平均成長率 10%台後半、

  営業利益率は10%台前半から半ばを目指している。

  → まあまあ良好な収益性/成長性と言えるが、

   「めちゃめちゃ高成長」という訳でないし、

   「めちゃめちゃ高収益」でもない。

 

 

 (e) 為替の影響;

 

  当社の資料によれば、2024/3期見通しの為替前提は115円/$。

  2023/3期の平均レートは135.5円/$。

  為替感応度は、1円の動きで売上は 13億円、営業利益は 3.5億円。

 

  実際のレートは、4月以降は常に 130円以上で、現在は143円。

  仮に平均レートが135円になるとすれば、2024/3期の数字は

  売上で 260億円、営業利益で 70億円改善する可能性あり。

  この場合、通期の売上は 2,260億円、営業利益は 295億円

  になる計算で、売上は前年比 17%増、営業利益率は 13%となり、

  2024/3期見通しも中期計画に沿った数字になる。

 

 

結論;

① 決算は、収益実績は通期では大幅な増収増益だったが、

 直近のQ4は収益性、成長性、共に冴えなかった。

② 2024/4期の見通しは冴えないが、これは為替を堅く

 見ているからで、実力は概ね中期計画に沿った感じ。

③ 中期計画は、まあまあ良好な収益性/成長性を示しているが、

 株価を激しく上昇させる程の高収益/高成長かは疑問。

 

 

個人的な意見;

6/23終値で計算したPERは 43.3

一方、直近の決算発表翌営業日(5/1)の終値は 10,840で

その時点のPERは 20.9

 

それ以降、会社としては特に株価上昇材料を

出していない中で、地合いの良さと生成AIブームに

乗った形で、約40日程で株価は2倍以上に上昇。

→ 期待先行で上がり過ぎでは?

 

中期計画の収益性/成長性を考えると当社の株価が

長期的に青天井で上昇し続けるとは考え難い。

長期投資家としては、高買いには気をつけた方が

いいんじゃないか?と思います(あくまで個人的意見です)。

  

以上です。

 

尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、

別の見方をされる方もおられるかもしれません。

また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや

勘違いが含まれているかもしれません。

 

いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。

数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。