今年の6月、このブログに下の記事をアップしました。
この中で「月々の収入が足りない方は、毎月分配金を受け取れるタイプの
投信を買ってはどうか?」という趣旨の事を書きました。
そこで、ここでは「毎月分配型投信」について詳しく説明します。
(1) 投信の分配金とは;
投信(投資信託)とは我々投資家から資金を集め、
運用会社がその資金を運用して資産を大きくしていく…
という仕組みの金融商品です。
運用会社は数々の「ファンド」を立ち上げ、
ファンド毎にテーマや運用手法、手数料などを決めており、
投資家は好みのファンドを何口か買う事により投資をしています。
運用して増えたお金は以下のいずれか、または両方の
方法で処理されます;
① 投資家に儲けとして払う → これが「普通分配金」
② ファンド内に残して運用する → 再投資し複利効果を狙う
どう処理するかはファンド毎に決まっています。
分配金として払う場合も、その頻度は年に1回、半年に1回、
四半期に1回、毎月1回、とファンド毎に異なります。
毎月払うものを「毎月分配型投信」と言います。
一方、ファンドの運用が予定通りにいかず、利益が足りない
場合もあります。この場合、ファンドは、元本の一部を
削って分配金に回します → これを「特別分配金」と言います。
投信の「分配金」とは、上述の「普通分配金」と
「特別分配金」との合計です。
利益から捻出される「普通分配金」には 所得税+住民税
計 20.315% (2022年現在) がかかり、我々が受け取れるのは
税金分を差し引いた金額です。
(NISAで購入した場合は税金はかからず、満額受け取れます)
元本を削って捻出される「特別分配金」には
上記の税金はかかりません。
実際に分配金を受け取る際には一部が普通分配金、
一部が特別分配金、となり一部だけに税金がかかっている
場合も結構あります。
分配金の合計額が同じでも、普通分配金と特別分配金との比率が
変われば投資家が受け取る金額も変わる事になります。
(2) 毎月分配型投信に向いている人;
毎月分配型投信の最大のメリットは、毎月分配金がもらえる、
つまり、毎月 追加収入が得られる事です。
一方で、デメリットもあります。
上述の通り、ファンドは資金を運用して得た利益を分配するか、
或いは再投資して複利効果を狙います。
分配金に回すお金が多いと再投資に回すお金が減り、
複利効果を得にくくなります。
また、分配金に特別分配金が含まれている場合はファンドの
元本の一部を削って分配するので、その分、ファンドの
運用資金は減り基準価額が下がります。
つまり、毎月分配型投信のデメリットは、毎月毎月;
① 分配金を払う分だけ複利効果が落ちる。
② 特別分配金を払った場合はその分 基準価額が下がる。
という事です。
まとめると、毎月分配型投信は;
(a) 毎月、追加収入が得られる。
(b) でも、元々の資金は増え難い、むしろ減り易い。
→ 資産形成目的の長期投資には向いていない。
という事です。
では、どういう人に向いているか?
「資産を増やしていくニーズがそれ程には高くない、
一方で月々に使うお金はもっと欲しい」
という人です。
例えば;
・十分な資産はあるけど、月々の収入が少ない人。
・60才になって雇用延長したくない人。
→ 厚生年金などが入る65才まで分配金で食い繋ぐ。
・60才になって雇用延長して収入が減ったが、生活スタイルを
変えたくない人。
→ 収入が減った分を分配金で補填。
・親が資産家の若者。
→ 老後資金は親の遺産で賄えそうなので、老後の心配より
今の月々の収入を増やす事を重視。
・年功序列的要素が残っている企業の従業員。
→ 老後資金などの資産形成はもっと昇給してから考えればいいので、
今の時点では月々の収入を増やす事を重視。
こういう方々には、毎月分配型投信が向いていると思います。
では、具体的にどんな投信があるのか?
その前に、どの金融機関で探せばいいのか?
(3)どの金融機関で探すか?
(a) ファンドの選択肢と購入時手数料;
幾つかの金融機関で取り扱っているファンドの数を調べたところ、
11月18日時点で以下の通りでした(全種類のファンド数);
銀行は取り扱い数が少なく、証券会社は多いようです。
・みずほ銀行 ; 251
・三菱UFJ ; 578
・SBI証券 ; 2,656
・マネックス証券; 1,278
・AUカブコム証券; 1,622
・楽天証券 ; 2,641
また、投信を購入する時の手数料に関しては、銀行の場合は
手数料がかからないもの(ノーロードと言います)と
1〜3%程の手数料がかかるものとが混在していますが、
証券会社は少なくとも上記の4社は全てノーロードでした。
ここでは選択肢が多く、かつ全てノーロードである
上記4つの証券会社に注目する事にします。
(b) 手数料;
投信の手数料には以下の3種類があります;
① 買った時にかかる手数料;
→ 上述の4つの証券会社では全てゼロ。
② 保有している時にかかる手数料;
→ ファンドによって異なる。
SBIが扱うファンドの場合、年間 0.69%〜2.09%
120万円保有してたら年間 8,280円〜 25,080円。
(結構差がある)
③ 売る時にかかる手数料;
→ ゼロのファンドが多いが、課するファンドもある。
SBIが扱うファンドでは売る金額の最大 0.75%
120万円分を売却した場合、9,000円程度。
上記の②と③は、幾つかのファンドをチェックした限りでは
証券会社が違っても手数料は同じでした。
全て同じかどうかは検証してませんが、多分同じか、
異なっても大差はなさそうです。
(c) 毎月分配型投信の検索;
上記の4つの証券会社のHPで毎月分配型投信を検索しようと
しましたが、2社のHPではそういう検索はできませんでした。
(検索する方法はあるのかもしれませんが、私には見つけられ
ませんでした)
簡単に検索できたのは SBI証券とマネックス証券。
この 2社が取り扱っている毎月分配型投信を検索すると、
SBIには 678、マネックスには 321のファンドがありました。
マネックスで扱っているファンドの殆んどがSBIでも扱われており、
同様にAUカブコムや楽天でも多くの同じファンドが扱われていました。
どの金融機関を選ぶか?
取り扱いファンド数の多い、かつ検索し易い所を選ぶか、
或いは、既に口座を持っている所を選ぶか、
お好み次第かと思います。
(4) ファンドの種類;
以下の様なものがあります;
① 主に国内株式に投資するファンド。
→ 毎月分配金を捻出せねばならないので、
指数連動型の様なものは少ないようです。
割安株を重視していたり、オプション取引や為替取引を
組み合わせて利幅を取ったりしている様です。
② 主に国内REITに投資するファンド。
③ 主に国際株式に投資するファンド。
→ 海外のみ、または海外と日本を組み合わせたものがあります。
→ 高配当株、小型株、割安株に注目しているものなど色々あり、
オプション取引や為替取引と組み合わせたものが多いです。
④ 主に国際債券に投資するファンド。
→ 毎月分配金を捻出せねばならないので、高利回りの
債券が中心になります。つまり、途上国の債券、
投資適格に達していない企業の社債、などが多く、
為替取引と組み合わせたものが多いです。
⑤ 主に国際REITに投資するファンド。
→ オプション取引や為替取引と組み合わせたものが幾つかあります。
⑥ バランス型。
→ 株式、債券、REITなどを組み合わせています。
どの分野を選ぶか、好みに合わせて選べば良いと思います。
(5) 分配金利回り;
今回の目的は「分配金を追加収入にする」なので、
毎月分配型でも分配金が微々たるものだと意味がありません。
そこで、SBIとマネックスとが扱っているファンドの中から
分配金の利回りが年間 10%以上のものだけを選び、
リストにしました。
ちなみに「年間 10%以上」とは、例えば 120万円分の投信を
購入すれば年間 12万円、つまり毎月 1万円の分配金を受け取れる
という事です。(実際に受け取れる額は税金を差し引かれた金額です)
また、利回りは「分配金 ÷ 基準価額」で計算しています。
今回は11月18日の基準価額で計算していますが、
基準価額は毎日変わるので買いたい時に計算したら利回りが
10%を切っていた… という事もあるかもしれませんが、
その点はご容赦下さい。
利回りは2通り記載しています;
(a) 過去12ヶ月間の分配金合計が基準価額の何%か?
(b) 直近の月の分配金を12倍したものが基準価額の何%か?
(a)=(b)のファンドは、過去1年間、毎月同じ金額の分配金を
払ってきた可能性が高いです。
今回の目的「毎月の追加収入を得る」に合致しそうです。
(a) > (b)のファンド(表では黄色に色付け)は、
この1年間で分配金の額を下げたと考えられます。
それでも利回りは10%以上なので、今回の目的にはかなっていますが、
「分配金額を下げた = 収益力が落ちた」のかもしれないので、
要注意です。
(a) < (b)のファンド(表では青に色付け)は
この1年間で分配金の額を上げたと考えられ、その背景が
収益力が上がった事であれば、魅力的です。
但し、何らか理由で直近の月のみがたまたま多かっただけ
かもしれないので、過去の分配金推移をチェックした方が
良さそうです。
特に直近の利回りが極端に大きいもの(ピンクに色付け)は
1つは普段の月の分配金は 15円/口だが直近の月だけ 515円/口と
大きかったもの、もう一つも普段は 20円/口で3ヶ月に一回だけ
300円/口、となっており「毎月の安定した追加収入」という
目的には合ってないかもしれません。
尚、分配金の額は突然変わる事があり、ここで記載した利回りも
突然変わる可能性がありますので、ご注意下さい。
(6) 個別ファンドのリスト;
種類別に下記します。
リストにはファンド毎に「上記4社の内のどの証券会社で買えるか」
も記載しています。
① 主に国内株式に投資するファンド。
② 主に国内REITに投資するファンド。
③ 主に国際株式に投資するファンド。
④ 主に国際債券に投資するファンド。
⑤ 主に国際REITに投資するファンド。
⑥ バランス型。
リストは以上です。
毎月分配型投信に興味がある場合、特に月々の収入増を
目的としている場合、上記のファンドも選択肢に
なるのではないかと思います。
但し、これは投資推奨ではなく、あくまで「情報の提供」です。
また、数値には記入ミスなどがあるかもしれませんが、
予めご容赦下さい。
(7) トータルリターン;
リストの中に「トータルリターン」を記載しました。
「トータルリターン」とは、基準価額の上下と過去の分配金合計、
両方を合計してどれだけ勝ってるか負けてるか?を示す数字です。
11月18日時点での1年前に買った場合、及び3年前に買った場合の
数値を上の表に記載しています。
ファンドの種類別に纏めて図示したのが下のグラフです。
一つの点が一つのファンドのトータルリターンを示しています。
赤い線が損益ゼロ、上が勝ち、下が負け、となります。
1年前に買った場合;
国際株式は勝ってるファンドが多いですね。
国際債券は上下に大きく振れています。
国際REITは負けが多いですが、2つだけブラジルレアルの
為替を組み入れたものが大きく勝っています。
国内やバランス型は振れ幅が小さめです。
3年前に買った場合;
1年前に買ったものと比べ、振れ幅が小さめです。
株式の国内と国際、及びバランス型は勝ってるのが多いです。
REITと債券は勝ち負けが拮抗している感じです。
上記、11月18日からの1年と3年とに期間を切ってファンドのタイプ別に
成績を見てみました。別の期間で切れば全然違う姿になるかもしれません。
また、上記の成績はあくまで「過去」のもので、今後の成績は
過去とは全く異なるものになるかもしれません。
特に分配金の額や利回りは「過去」のものに過ぎず、
今後は変わっていく可能性を常に持っています。
とはいうものの、毎月分配型投信にどういうファンドがあるのか?
過去の成績はどうだったか?
などを知っておくのもファンド選びの参考になるかもと思い、
この記事を書きました。
上記には筆者の勘違いや記入ミスなどがあるかもしれません。
実際に投資される際は、データを自分でチェックの上、
自己の責任と判断により行って下さい。
皆さんに爆益あれ!