今年の3月28日に、上場企業のホープについて「ホープ、電力撤退後の姿は?」
という記事をこのブログに掲載しました。
その時点では電力撤退後の財務諸表が明らかでなかったのですが、
6月8日に電力撤退後で最初の決算発表がありました。
決算発表翌日、株価はS高。
翌々日(先週金曜)も上昇し一時200日線を超えました。
決算発表の内容はどうだったのか?
簡単に纏めたいと思います。
(1) 当期決算; 大幅な増収、赤字幅拡大
まず重要な事は、決算期の変更です。
6月から3月に変更しました。
この為、今回発表の2022/3月期は9ヶ月間のみの変則決算となりました。
短信では2021/6月期(前期)の12ヶ月間実績と2022/3月期(当期)の
9ヶ月間実績とを併記しており実力値の比較になってないので、
ここでは7月〜翌3月の9ヶ月間の実績を記載すると;
前期 当期
売上; 181億円 → 356億円
営業損益; ▲ 73億円 → ▲ 167億円
売上を大きく伸ばしましたが、赤字幅も大きく膨らみました。
この殆どはエネルギー事業によるもので、当期の数値も
3月25日のホープエナジー社の破産手続開始まではエナジー事業の
数値を含んでいます。
この全社数値からエネルギー事業数値を単純に除いた数値は;
前期 当期
売上; 11億5千万円 → 11億7千万円
営業損益;▲ 1億5千万円 → ▲ 2億4千万円
売上は微増、営業損益は少額とは言え赤字で、赤字幅も膨らんでいます。
この決算を受け、2022年3月時点での債務超過は56億円となりました。
(2) 安全性; 一見厳しく見えるが、それ程危機的ではない。但し…
流動比率は142%で、一般的に「余裕あり」と言われる200%と
「厳しい」と言われる100%との中間あたりでまあまあです。
現預金だけで流動負債の96%をカバーできており、
営業キャッシュフローもプラスで、資金面での不安は無さそうです。
不振のエネルギー部門を上手く切り離せた賜物です。
しかし、2022年3月末で 56億円の債務超過です。
2023年3月末までに債務超過を解消せねば、上場廃止です。
「会社が倒産せずに継続できるか?」という観点からの安全性を言えば
そんなに悪くなさそうですが、「上場を維持できるか?」という観点
からの安全性を言えば、即答し難い状況です。
2022年3月時点のバランスシートをよく見ると、長期負債の中に
「組織再編により生じた株式の特別勘定」というよく判らない項目で
約48億円が計上されています。
会社の説明を見ていると、ホープエナジーの破産手続が順調に進むと
この項目の殆どを消せそうな感じです(明言はされていませんが)。
もし全額を消せれば、債務超過は8億円程度に縮小できる事になります。
(3) 収益性; 赤字。だが改善が見込まれる。
上記(1)で述べた通り、エネルギー事業を除いても2022/3期の営業損益は
赤字でした。
しかし、2023/3期は営業黒字が計画されています。
営業利益率は約6%と低いが、それでも黒字化するという事は意義大です。
(4) 成長性; 乏しいと言わざるを得ない。
エネルギー事業を除いた売上/営業損益は以下の通り;
前期(12ヶ月) 当期(9ヶ月) 翌期(2023/3期)計画
売上; 19億5千万円 → 11億7千万円 → 約20億円
営業損益; +3千万円 → ▲ 2億4千万円 → +1億3千万円
エネルギー事業を除いた「広告」「自治体支援」などの事業は例年
4〜6月の売上/利益が大きく、通年では20億円前後の売上で推移していました。
当期の売上が凹んで見えますが、これは4〜6月を含んでいないからで、
同時期の数値を見れば他の年度からほぼ横這いです。
2023年3月期も同レベルの売上を計画しています。
一段の成長を図るには、何か新規軸が必要となりそうです。
総括;
① まずは債務超過を解消し上場を維持できるか? が勝負。
・2022/3月末の債務超過; 56億円
・エネ事業破産で消せるかもしれない額; 最大 48億円
・2023/3月期の利益見通し; 1億円
まだ6〜7億円足りません。
結局増資などで対応せざるを得ないと思われます。
② 上場維持と並行して、会社を大きく成長させられる様な新規軸が必要。
でないと、売上20億円前後、税後益1億円前後、という規模のまま
低迷し兼ねない。
6月9〜10日の株価上昇は2023/3月期が営業黒字である見通しを
評価したものと思われ、実際に黒字化する事の意義は大きいですが、
売上の伸びが小さく「飛躍」の絵は描けていないように見えます。
因みに6月10日時点の株価は 226円で、時価総額は25億円4千万円、
PERは 33.3です。
これが高いか安いかの判断は、各自にお任せします。
以上です。
尚、上記は限られた情報を元に推察した数値を含んでおり、
実際の数値は異なるかもしれません。
また、売り買いにいずれの意味に於いても投資推奨ではありません。
投資は自己責任でお願いします。