ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 現役の女性ヴァイオリニストのなかで、最もお気に入りなのがヒラリー・ハーン。衝撃の日本デビューだった2000年のベルリン・フィルとの共演以降、来日公演は(東京だけだが)ほとんど聴いているが、聴く都度、新鮮な驚きと発見がある。

 2018年の来日では、久しぶりのリサイタルを開催。しかもプログラムがバッハの無伴奏オンリーだ。天才肌のハーンは、そのカリスマ性ゆえに、共演者との相性が難しい。特にリサイタル公演では相方のピアニストが定まらず、これまで何人も変わってきた。だから、リサイタルでは、1~2曲演奏される無伴奏曲が一番聴き応えがある。それ故、今回は待望の公演というわけで、東京オペラシティ・コンサートホールにおける2公演のチケットは、即完売になっていた。

 プログラムは、初日の12月3日が、ソナタ第1番、パルティータ第1番&第2番。二日目の12月5日が、ソナタ第2番、パルティータ第3番、そしてソナタ第3番。

 いつものことながら、弾き出すと同時に、聴く者を自分の世界に誘い、虜にしてしまうのがハーンの音楽。正確無比なテクニックで安定感は抜群。最初に聴いた時、アナログ録音からデジタル録音に変わったようなクリアさと、研ぎ澄まされた切れ味を感じたものだ。しかし、デジタル特有の冷たさのようなものはなく、極めてナチュラルな音色を紡ぎ出す。

 あれから18年が経過。二児の母になったこともあってか、若い頃の特徴だった、ピンと張り詰めたような緊張感は薄まり、より自然体の音楽になった。この傾向がより強く感じられたのが、二日目となる5日の演奏。程よくリラックスした感じで弾いており、時に祈りの境地に達するようなバッハの音楽の深遠さを浮き彫りにしていた。

 何はともあれ、幸せな時間を過ごせた2公演だった。