ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルのサントリーホール第二日。12月2日のプログラムは、プロコフィエフの“ピアノ協奏曲第3番”とブルックナーの“交響曲第9番”。
この日も共演のピアニストはユジャ・ワン。昨日にも増して、なかなか派手な衣装で現れた。
前日のブラームスも予想以上だったが、スリリングな面をもつプロコフィエフは、ワンが本領を発揮。卓越したテクニックとクリアで華麗な響きを存分に堪能出来た。ゲルギエフもブラームスよりも得意曲とあって、好サポートでオケを鳴らす。
かつてのチェリビダッケ時代をはじめとして、ミュンヘン・フィルによるブルックナーの名演の数々を聴いてきたが、ゲルギエフのブルックナーを聴くのは初めてだ。マーラーと似たアプローチで、存分にオケを鳴らしまくる。荘厳な音の洪水に身を委ねている分には心地よいのだが、名演だったかと言われると微妙な印象。オケが鳴れば鳴るほど、その内側にあるべきものの希薄さを感じてしまう。マーラーだったらさほど気にならないのだが、これがマーラーとブルックナーの違いか。ゲルギエフという指揮者にとって、ブルックナーはあまり相性が良くないのかも。
それにしても、同じミュンヘンのオケなのに、バイエルン放送響とミュンヘン・フィルはこうも違うかと思うほど、音色に差がある。質実剛健というか、重厚でほの暗さのあるミュンヘン・フィルは、これぞ伝統的なドイツ・オケの魅力がたっぷり。
当日は日曜日のマチネー公演だったのだが、残念ながら客席はかなりの空席があった。コアなブルックナー好きが、ゲルギエフを敬遠したのか…と想像してしまった。