ワレリー・ゲルギエフ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 初日 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。


 今秋は、ドイツのオーケストラの来日公演が豊作だ。シュターツカペレ・ドレスデンを皮切りに、NDRエルプ・フィル(旧北ドイツ放送響)、バイエルン放送響ときて、今度はミュンヘン・フィルだ。エルプ・フィルはパスしたが、近い文化圏にあるウィーン・フィルも聴いているので、ドイツ漬けの印象が強い。

 指揮はワレリー・ゲルギエフ。毎年12月に手兵であるマリインスキー管弦楽団との来日公演が定例化しているが、今年はミュンヘン・フィルの指揮台に立つ。マリインスキー管とは、2019年のチャイコフスキー祭りが予告されている。

 今年のミュンヘン・フィルの東京公演は、サントリーホールで2回。初日となった12月1日のプログラムは、ブラームスの“ピアノ協奏曲第2番”とマーラーの“交響曲第1番「巨人」”。ゲルギエフのドイツ物が敬遠されたのか、客席には少々空席が目立った。

 さて、ブラームスのピアニストはユジャ・ワン。昨秋のベルリン・フィル公演で、降板したラン・ランの代わりを務めたのを始め、このところ、有名外来オケとの共演が多い人だ。初めて聴いたのは、2006年のマゼール指揮ニューヨーク・フィルとの共演で、これはまた凄いジャジャ馬型ピアニストが出てきたもんだ…という印象だった。前回聴いたのは、2015年のヒメノ指揮コンセルトヘボウ管だったと思う。

 今回のゲルギエフとの組み合わせは、クセ者同士で意外と相性がいいかも…と思ったのだが、やはりなかなかの聴き物だった。以前にも交響曲を聴いているが、ブラームスに関してはオーソドックスなアプローチをとるゲルギエフの指揮で、ミュンヘン・フィルが本領を発揮。渋くてほの暗い音色がブラームスにピッタリだ。円熟味が出てきたワンは自由奔放さを封印して、しっとりと絡む。極めて密度の濃い、重厚感溢れる音世界が構築された。その分、ワンはソロ・アンコールで弾きまくった。

 マーラーは、ゲルギエフらしいアプローチ。精神面への深入りなどはせず、華麗なる音の絵巻を構築。このオケならではの妙技もあって純粋にオーケストラ音楽を楽しむ分には十分だが、マーラーに深遠さを求める向きにはイマイチだったかも。これが空席の理由の一つかな。