五嶋龍 ヴァイオリン・リサイタル2018 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 たびたびオーケストラ公演への客演を聴いているので、そんなに久しぶりという気はしなかったのだが、3年ぶりという五嶋龍のリサイタルを聴いた。

 8月8日、台風が接近中のなか、サントリーホールに向かう。早めに帰宅しようとする人で、いつもより地下鉄は混んでいた。先日、大阪行きを断念したばかりというのに、今年は数少ない夏のコンサートが台風にたたられている。それでも熱心なファンで客席は満席。いつにも増して、女性客比率が高いのに圧倒されながら席についた。

 今年のコンサートは「忘却にして永遠に刻まれる時」と題されている。何やら難しいそうなテーマが隠されているようだが、お気楽に音楽を楽しむのが我が道だ。プログラムは、シューマンの“ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番”、イサン・ユンの“ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番”、ドビュッシーの“ヴァイオリンとピアノのためのソナタ”。

 五嶋龍は、デビューして間もない頃から聴き続けているが、成長してもピュアな音楽性は変わっておらず、いい意味でのマイペースを貫いている。だから聴く方もゆったりとリラックスして聴くことが出来る。例えば、先月にも聴いたばかりの樫本大進のシャープな音色は、聴く側も緊張を強いられるのだ。

 変わらぬ純粋さを保ちつつも、聴く都度に進化しているのが五嶋龍。念入りにチューニングを行った後、弾き始めるとすぐにその変化が分かる。音楽の深みとか、表現の幅とかが確実にかつ独自の進化をしている。ピアニストのマイケル・ドゥセクとの相性もいいようだ。

 アンコールには、極めてポピュラーな曲をもってきた。“美しきロスマリン”、“亜麻色の髪の乙女”、そして“序奏とロンド・カプリチョーソ”と三連発。しばし浮遊していた異次元世界から現実に戻された気分だ。終演後、外は台風の雨と風。さらに現実に戻って急ぎ家路についた。