ワレリー・ゲルギエフ指揮 PMFオーケストラ | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。


 暑い夏はクラシック系コンサートもオフシーズンだが、毎夏に開催される貴重な公演もいくつかある。そのなかの一つ、ザ・シンフォニーホールで開催される「サマー・ポップス・コンサート」は、チケットを買っていたものの、台風が襲来。これが何と東から西へという前代未聞の進路をとり、大阪への移動行路とピッタリ一致してしまったため、今回は遠征を断念した。

 そんな事情で、ますます貴重なコンサートとなったのが、PMFオーケストラの東京公演。昨夏は、サントリーホールが休業中だったので、ミューザ川崎での開催だったが、今年はサントリーに戻っての開催だった。

 8月1日、連日の猛暑続きで、陽が落ちても空気が暑いなかをホールに向かう。当初、出演が予定されていたオーボエ奏者がキャンセルになったため、曲目変更があり、この日のプログラムはヴェルディの“シチリア島の夕べの祈り”、バーンスタインの“ハリル”、そしてマーラーの“交響曲第7番”となった。

 まずは“シチリア…”だが、良くも悪くも面白い演奏だった。速めのテンポで突き進むゲルギエフの指揮で、ヴェルディ特有の歌心は飛んでしまい、強調気味のリズム感は、どこかロシアのバレエ音楽を思わせるもの。好きな曲なのだが、聴き慣れたものとは全く異なる音楽が生み出されていた。

 今年2018年は、PMFの創設者レナード・バーンスタインの生誕100周年にあたるメモリアル・イヤー。初聴となる“ハリル”は、ヘブライ語でフルートの意味とのこと。ソリストのフルート奏者と、小編成ながら多数のパーカッション類を含むオーケストラで演奏。鎮魂歌として作曲されたとのことだが、劇的に変化する不思議な展開は、揺れ動く心情描写らしい。

 後半はマーラー。ゲルギエフは、手兵のオケと同様に鳴らしまくるので、時折アンサンブルの乱れが気になるものの、若者らしいエネルギーに満ちた演奏が楽しめた。第4楽章では、さすがのゲルギエフもおとなしくなり、素朴なマンドリンの音色が、美しくホールに響いて心にしみる。

 低調だった昨年に比べて、なかなか楽しめた2018年の公演だった。