空飛ぶタイヤ | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

走行中の大型トラックからタイヤが脱落、直撃を受けた歩行者が亡くなってしまう事故が発生。整備不良が原因とされた運送会社は窮地に立たされるが、類似の事故があったことから、真実を追及する孤独な闘いが始まる。

人気作家、池井戸潤の小説が原作。この作家が得意とする、実例を参考にした社会派エンターティメントで、観る前からおおよその予想がついてしまうが、その通りの内容と展開で進行する。

2時間という上映時間の制約内に収めるため、ダイジェスト版を観ているような“薄さ”はあるが、まずまず無難にまとめたのは本木克英監督。

この手の作品の主軸は、隠された真相の追及というミステリー要素だが、そこに絡んでくるのが、人間の“良心vs邪心”という横糸。“組織の論理”のなかで、正義を貫くか保身に走るかは、実際に会社勤めの経験がないと実感が沸かない要素。今回も、終映後に学生と思われるカップルが否定的な感想を語っていたが、社会に出てから観直すとよいだろう。

登場人物が多いので、出演する俳優も多数。長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生らの起用は、社会派娯楽作に女性客を動員する目的もありそう。対する女優陣は少なく、深田恭子、小池栄子、谷村美月ら。いずれも脇役的な扱いで、ここにも企業社会の根強い男性優位が感じられる。

大企業(あるいは大きな組織)が抱える闇の側面と、それを維持する“忖度”という悪しき文化。さまざまな利権をめぐる駆け引きや裏工作は、いつの世も変わらないのは、最近のニュースが証明している通り。

長い物に巻かれるか、反旗を掲げてホサれるか、一匹狼になるか…。人生の選択はさまざまで、自らの生き方を見直しながら観るのも一興な一本。まあ、推薦 ○。(20187月鑑賞)