オンドレイ・レナルト指揮 プラハ放送交響楽団 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 プラハ放送交響楽団は、大好きなオーケストラの一つ。チェコを代表するオケとして君臨するチェコ・フィルが年々インターナショナル化して、本来の持ち味が少し薄れてしまったのに対して、プラハ放送響は昔ながらの響きを保っている。ウラディーミル・ヴァーレクの指揮の下、数々の名演の思い出があるのだが、ヴァーレクの引退後、少し足が遠のいていた。頻繁に来日公演を行っているのだが、招聘元の意向によるソリストとのカップリングばかりで、聴く気になれなかったのだ。  

 今回、行く気になったのは、指揮者のオンドレイ・レナルトとの最終公演になると聞いたからだ。もう30年以上も前になるが、かつての新星日本交響楽団(現在は東京フィルと合併)の定期会員だった頃、レナルトの指揮をよく聴いており、マエストロへの敬意もあってチケットを買ったのだ。

 前振りが長くなったが、足を運んだのは6月24日のサントリーホール公演。当日券なしの完売御礼に驚きつつ場内へ。プログラムは、スメタナの“モルダウ”、ラフマニノフの“ピアノ協奏曲第2番”、そしてドボルザークの“交響曲第9番「新世界より」”。

 ずいぶん久しぶりとなるレナルト御大は、さすがにお爺ちゃんになった印象。データを確認したら今年で76歳だった。それでも指揮振りは変わっておらず、いたってオーソドックスなアプローチで実直な音楽を紡ぎ出していく。

 “モルダウ”の出だしで、ハープが強烈な一音を放ったのにちょっとビックリだったが、序奏が終わって弦が歌い出すと、思わずニンマリ。この曲は、やっぱりこの音色じゃなくっちゃね。

 ラフマニノフは、先週も聴いたばかりだが、全くアプローチの違う演奏だった。ピアニストは、初聴となるヴァディム・ホロデンコ。ウクライナ出身の31歳で、外面的な派手さを求めるようなタイプではなく、じっくりと音楽を創っていく。指揮者やオケとの相性も良好で、深みのある世界観を楽しめた。

 後半の“新世界より”は、凄みすら感じさせる名演だった。オケのメンバーが全力で弾いており、時にワイルドな響きになるのだが、決して荒れた音にならないのがチェコのオケならでは。聴く機会の多い人気曲だが、よくある消化試合みたいなやっつけ仕事とは次元が違う入魂の演奏を堪能した。

 それにしても、このオケはいい音で鳴る。やはり弦の音色がプラハ放送交響楽団一番魅力たっぷりだが、木管も金管も素晴らしい。

 アンコールは定番の“スラブ舞曲”。第10番と第15番が演奏され、満席の聴衆から盛大な拍手を浴びていた。