フランツ・ウェルザー=メスト指揮 クリーヴランド管弦楽団1 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 久しぶりのクリーヴランド管弦楽団の来日公演。今年は全5回にわたるベートーヴェン・チクルス。全部聴きたかったのだが、日程の都合がつかず、今回は第3夜からの参戦となった。  

残念ながら、空席が目立った6月5日のサントリーホール。この日のプログラムは、“序曲「コリオラン」”、“交響曲第8番”、そして“交響曲第5番「運命」”。

最初の音が出た瞬間、アメリカのオーケストラらしからぬ、カドのとれたまろやかな音色に思わずニンマリ。1970年代の名指揮者、ジョージ・セルの在任中に徹底的に鍛えられた鉄壁のアンサンブルは今も健在。弦と管が見事に融合し、全く隙のない高い密度の音場は驚嘆すべきものだ。

奇をてらわず、オーソドックスな振り方をするフランツ・ウェルザー=メストとの相性もよく、美音に浸っているうちに、ヨーロッパのオペラ座付きオケを聴いているような気になってくる。

最もポピュラーな交響曲である「運命」の出だしは意外にも難しく、伝統ある名門オケでも微妙に乱れる時があるのだが、この日の演奏は完璧にスタート。圧巻の名演を繰り広げて、聴衆から熱狂的な拍手を受けていた。

この名演を聴き逃すとは…。空席の目立つ客席が何とももったいないと思った、ハイレベルな演奏会だった。