読売日響に続いては、もう一つ、在京オケを聴いた。こちらも日フィルではなくソリストが目的。ウィーン・フィルの名コンサートマスターとして知られたライナー・キュッヒルが出演するのだ。ウィーン・フィルを退団後、積極的に日本で演奏活動をしてくれるのは嬉しい限り。
5月27日のサントリーホール。日曜日のマチネーというのに、残念ながら満席にはなっていない。プログラムは、小林研一郎が得意とするチャイコフスキーで、ヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番というスッキリしたもの。
さて、前半はヴァイオリン協奏曲。キュッヒルは弾き始めると同時に、自身の小宇宙を創ってしまう。聴衆はその中に取り込まれ、ただただ聴き惚れるばかり。この人は、何を弾いても“キュッヒル節”とでも言うべき、独特の味わいになるから面白い。コバケンも偉大なソリストをリスペクトして、きっちりとしたサポートに徹していた。
後半のチャイ4は、コバケンのおハコ。年齢を感じさせない“炎のコバケン”オーラ全開で突き進んでいく。コバケンが振った時の日本フィルは、総じていい演奏をするが、集中力が最後まで持続しない場合が多い。しかし、この日の日フィルは大健闘。疾走感溢れる第4楽章まで、聴き応え十分の快演を繰り広げた。
アンコールは、しっとりとグリークの“「ペール・ギュント組曲」~オーゼの死”。そして、チャイ4の第4楽章ラストのクライマックスを再演した。