NHK-BSで放送される、英国の音楽祭「プロムス」でお馴染みのBBC交響楽団を聴くのは、ずいぶん久しぶりだなあ…と思ったのだが、それもそのはずで、4年半ぶりの来日とのこと。
3月11日、サントリーホールでの公演は、ラフマニノフの“ピアノ協奏曲第2番”、マーラーの“交響曲第5番”という、なかなかの重量級プログラム。
音楽の印象というものは、その時の聴き手の心理状態によって大きく変わってくると思う。この日は、あの大震災からちょうど7年という特別な日。やはり、当時を思い出さずにはいられなかった。大地震があった二日後、同じサントリーホールでチェコ・フィルの演奏会があった。今回のBBC響と同じ、東芝グランドコンサートとしての開催だった。幸いにして、演奏中は大きな余震がなかったが、何とも言えない不安感がホールを支配していた。演奏者も聴く側も、あの空気感は忘れないと思う。
あの時に比べて、ゆったりとリラックスして聴けるのは、何と幸せなことか。それでも日頃は甘美さに酔いしれるラフマニノフの第二楽章が、震災の犠牲者を悼むレクイエムのように感じてくる。ソリストを務めた若手の実力派、小菅優の情感豊かなピアノのせいもあったかも知れない。
後半のマーラー、まずは冒頭の有名なトランペットに感心。第三楽章冒頭のホルンも同様だが、ドイツ系のオケとはひと味違う、輝かしい響きをもつイギリスのブラスの音を堪能。全体的には、放送局付オケ特有の機能性に裏付けられたパワフルな演奏で、どちらかと言うと、音楽よりも“音”そのものが目立ってしまうので、個人的な好みからは少し外れた感じ。
このプログラムでも、なおアンコールをやるのがBBC響流。夜の公演だと、終演が22時を過ぎたことがあるが、この日は昼公演なので安心。お腹一杯になったコンサートだった。