<人間的繋がりを重視する日本?> 
たびと 「御社は一代で終わる宿命」という本当に救いのないコメントですみません。でも,短善さんの会社の見られ方は,実は社名はどうでもよく,やはり「短善さんがやっている会社」すなわち「短善カンパニー」ということなんですよ。
短善 私が身を引けば,W社という名前は残っても,結局「短善カンパニー」は無くなってしまうということなのですね。
たびと D社は,自社や直系の関係会社に優秀でいつでも小回りが利いて,安く使える技術者が豊富にいれば,安易に頼る必要はないのです。
短善 それが社内にいないし,育ててもいないから,D社も苦労しているのですね。でも,どんな会社でも小回りが利いて安ければ取引OKというわけではないのですよね。
たびと もちろんです。どうしても作業実績が必要です。なぜ実績を重視するかは初対面の会社の技術力を評価する能力が取引口座開設権限をもつ調達部門にないからなのです。直契約の新規参入は非常に難しいのは,参入会社のレベルの問題ではなく,新しく取引をすることの良否,特に技術面で判定する能力の無さが原因なのです。参入したい場合は,実績のある会社経由で,何かあった場合は経由会社の保証を受けて仕事を貰うしかないのです。
 
<多重請負は無くならない?> 
短善 それが,結局3次請け,4次請け,場合によっては5次請けといった多重請負が無くならない理由なのです。
たびと 貴社がD社と直契約ができていることは,元S社社員で,S社で実績をもっていることもあり,D社と直接取引が可能となったのです。私も「絶対必要な会社」だと,調達部門には強く伝えましたよ。
短善 ありがとうございます。D社との直取引が無くなれば,わが社は今はどうなっているか分かりませんでしたね。しかし,そういうときこそ後継者ほ育てるチャンスだったのですが,D社からくる仕事をどうこなすかで精一杯で,社員の総合的な育成は完全に後手に回りました。
たびと なぜ,短善さんの会社のような小規模ソフトウェア専門会社が苦労するか,私の見方を話しても良いですか?
短善 「多分長くなりそうなので,この次にしてください」なんて,言いませんから,お話しください。
 
<たびとの長い持論始まる> 
たびと 日本のIT技術者,それもソフトウェア技術者の育成方針に大きな欠陥があり,そのツケが今日本のIT産業を世界から見て低い競争力となっているのです。
短善 そんなに日本のソフトウェア産業のレベルは低いのですか?
たびと 相当低いと思いますよ。個々には,素晴らしいソフトウェアエキスパートは,もちろん日本にもたくさんいると思います。すごいソフトを短期間に作っちゃうようなスーパープログラマの数も,決して他国と引けをとらないぐらい数はいると思います。
短善 ただ,そのすそ野が広がっていないということですか?
たびと その通りです。富士山の山の形のように,頂点にいる人の何倍かが八合目にいて,さらにその何倍かが五合目にいるようなきれいに構成のスキルレベルとなっていないのです。
(14話につづく)