<顧客別保守チームはどのチームも仕事の内容が類似?> 
たびと 「相手の担当分野を犯さない?」というような,チーム間や担当間の境界線の存在を,依頼先にことさら強く意識させるのは良くないと私は思っています。
保品 ということは,こちらは依頼したいときでも「何ならそちらの仕事もバーターでやりますよ?」というスタンスでの依頼ですか? 何かすごく卑下し過ぎのように僕は感じます。
たびと 「卑下し過ぎ」と感じますか? それにお答えをする前に,一つお聞きします。チームや部門のミッションが異なっていても,共通する仕事はいっぱいありますよね。
保品 チームのミッションは違っていても,同じような仕事が大半であるチームは僕の周りにも確かにありますね。
たびと 保守チームの場合,担当する顧客が異なるだけで,対象システムが同じなら,同じことを別チームでやることも珍しくありませんよね。
保品 おっと,そうですね。それなら,たとえチームは違っていても,ほとんど仕事の内容は同じになるかもしれません。
たびと そんな組織関係なら,お互いに余計な壁の意識を作らず,卑下なんて言わずに,一方が忙しい時には,連携して応援しあう関係のほうが良くありませんか?
 
<要員不足ではチーム間に良くない壁を作らない> 
保品 ですが,競争心を上司から煽られたりすると,こちらだけがいつも応援する側になってしまうのは,どうしても損な役目と考えてしまいますね。
たびと 同期で優秀な社員が複数いると,適正なチーム規模というような名目でわざとチームを分け,同じようなことをさせて競わせる組織運営をすることもあります。実は私が以前部長級の役職だったとき,条件がそろったのでそういう競争をさせたことがあります。
保品 でも,純粋にソフトウェア保守業務を中心に考えた場合は,そのような競争は条件がそろわないと安易に行わないほうが良いのですよね?
たびと 競争させるには,対応するリソースに競争させるだけの余裕があることが大きな条件です。私が競争させたときは,たまたま若手がいつもの年より多く参画してきて,チーム内でのいろいろ創意工夫を検討・議論する余裕があったのです。
保品 リソース不足というその逆のケースでは競争させてはダメなんですね。
たびと 「競争させれば生産性が上がるからリソース不足の対策になるはず」と余裕も全くないのに安直な考えでやらせてしまうのは,非常に良くないと私は考えます。
保品 そんな上司はうちの会社にいっぱいいそうです。チームの双方のリソースが足らないときは,助け合うほうが重要という発想は微塵もなく。
たびと ただ,助け合える場合でも,依頼元が依頼前に工数を掛けている証拠とその結果を具体的に示すべきです。自分たちでやれなくはないが,相手チームのほうが手馴れていて,生産性や品質に優れているところに絞ってお願いするのがポイントです。
 
<依頼元ができる努力が伝わるようにすれば依頼は簡単?> 
保品 何もせず,いきなり「緊急なので後はすべてお願いしたい。よろしく」となれば,依頼を受けた側は「誰でもできる準備までも含めやらされる」と思うとたまったものではないですね。強みのある技術分野の補完ではなく,単なるマンパワーの融通ならやりたくないですよね。
たびと さらに,依頼側が何か「どうしよう。どうしよう」とオロオロした状態で依頼すると「おい,他の案件は大丈夫か?」と余計な心配をされてしまいます。
保品 そんな依頼元の混乱を見せないために「依頼を請けられないはずはない!」と上の力を借りて偉そうに依頼するのは,もっとアウトということですね。
たびと 依頼側がより権限の強い上司を使い,強制的に他チームにやらせることも,ある種のヒューマンスキルに含める人もいますが,私はその考えは好きではありません。
保品 僕も上層部の力を利用して他の組織を動かすことがヒューマンスキルの重要ポイントだとは思っていません。
たびと さらに,実態を無視し,説得力や交渉力のみがヒューマンコミュニケーションスキルだというなら,そんなスキルをひけらかしても,技術力がいかに低レベル化かを依頼先に見透かされてもよいということになります。
保品 お互いのチームや組織に対する技術力・品質・生産性などの実力に対する尊敬と信頼の念が重要で,「相手に負けるな」とハッパをかける上司の言うとおりに動いては,協力し合う関係は生まれにくいということですね。
たびと チーム内も同じです。私はリーダや管理者のときでも,担当者より優れた実務技術者でもあり続ける意気込みを持ち続けようと努力しました。担当者に任せる場合でも,自分ができる作業として具体的手順を指示して,担当者にもっと良い方法があるかの意見や考えを聞きました。
保品 担当者を信頼して,たびとさんのイメージを伝え,相手の考えを聞くのですね。
たびと ただ,こちらが手順を提示すると,中には「私を信頼していないのですか?」と突っかかる担当者もいました。そういう担当者のほとんどが,手順検討など事前の準備をほとんどしていないケースでしたね。それを見透かされるのが嫌で突っかかるのです。
保品 依頼先が「依頼元側でここまで調べてくれたんだ」という気持ちになってくれれば,協力度や信頼関係も増してくるわけですね。
たびと それもありますが,案件の切迫感が,こちらが何をしてきたかで相手に具体的に伝わるのです。すでにしっかり対応や検討をしていれば,説明が上手い下手はあんまり気にする必要はありません。
保品 依頼前に何もしていないと相手に感じられてしまうと「丸投げかい?」「担当チームとして責任放棄?」「ちゃんと管理しているの? 対応優先度も分かっていない?」と依頼を受けた担当の対応モチベーションは下がるばかりですね。
(20話につづく)