2/19 アテネ
2/19 アテネ
朝目を覚ますと、ベットに人が寝ていた。
視線を感じたのか、その人はガバッっとベットから身を起こし、
「今何時ですか?」と日本語で一言。
日本語、そう日本人の女の子であった。
また日本人のルームメイト。
意図して配置してるのかもしれない・・・
さて、その彼女と出掛けに少し話をした。ここに来た経緯や、出身等お互いのこと。
そうしているうちになんだかんだで意気投合し、一緒にアクロポリスへ行くこととなった。
「食べる?」とちぎって渡された朝食代わりのパンに、ちょっと気分の高揚をおぼえながら、
久々に陽気のアテネの町を歩く。
アクロポリスへの道はもう慣れたもんで、あっという間に門の前についてしまった。
入り口の係員に開いているか聞くと、「10時には開くよ」とのこと。これだけギリシャにいてアクロポリスを見ずに帰国するという悪夢は回避されそうで、ほっと胸をなでおろした。
10時まで少々時間があったので、二人でベンチに座って待った。
その間朝の続きではないが、彼女といろいろ話をした。
学生生活や、就職活動、ゼミ、地元の話。たわいもない話を、パルテノン神殿の前で繰り広げた。
会話のネタも尽きたころ、時間は10時を大きく過ぎていた。 しかし、門が開く気配はない。
入り口に近づくと、他の観光客が何やら係員と話しており、「ドデカ!」といっているのが聞こえた。
ドデカ、ギリシャ語で12。
どうやら12時には開門するらしい。
それを聞いた彼女は、「アテネにはまた来るから、先にコリントスに行く」と言い出した。
そうか。
時間もあったので、シンダグマ駅まで送って行った。
笑顔で手を振り、彼女は改札へ消えていった。
あっという間であったが、旅先で感じたとても穏やかで心地よい時間だった。
またどこかで会えるといいな・・・と。
シンダグマ広場で別れる
昼食にギロを食べ、パルテノン神殿に戻ってきた。
そして、門は、開かれていた。
待ちに待ったアクロポリスの遺跡群は、自分がどことなくあこがれていた古代遺跡のシンボルであり、感動も別次元だった。
パルテノン神殿
アクロポリスの丘からアテネの景色を眺めていると、これまでの旅の思い出がどっとあふれてくる。荘厳にそびえるパルテノン神殿は、柱一つ一つに紀元前の重みが感じられた。 パルテノン神殿を見物後、デュオニソス劇場、ゼウス神殿、古代アゴラ、アッタロスの博物館と一気に駆け抜ける。
アクロポリスに咲く桜 アクロポリスからリカヴィトスの丘を望む
さすがに、有名な観光地だけあって人も多い。東京で言ったら東京タワーみたいなものだろう。移動途中、同世代の日本人の若者に「地球の歩き方持ってます?」と声をかけられた。よくよく聞くと、パトラに行きたいとのこと。「とりあえず駅に行ったらいいよ」とアドバイスだけしておいた。彼は無事パトラにたどり着いたのだろうか。
試合開始五時間前。
旅の最後のイベントが待っていた。
スプライトとチーズパイで気合を入れ、遺跡群を後にし、昨日訪れたカライスカキスタジアムへ地下鉄で移動した。UEFAチャンピオンズリーグ、チェルシー対オリンピアコス。この日、その場所で準々決勝1stレグが開催することとなっていた。
5時間前ということもあり、人はまばら。
当然チケットはないので、まずチケットを探さなければならない。
人がまばらなカライスカキスタジアム
たとえばミラノでミランやインテルの試合を見るなら、パッケージツアーや代理店へ手配すれば事前にチケットは手に入るだろう。しかし、アテネでのオリンピアコスの試合なんて、そうそう日本では手に入らない。だから、スタジアムに行けば、売ってる人もいるんじゃないか、そう予想していた。しかし、そんなに甘くはなかった。声をかけてきた人が一人いたが、彼は150ユーロ(当時のレートで約2万4千円)以下では売らないという。べらぼうに高い。ちょっと考えさせてくれと言わざるを得なかった。
当てもなくスタジアム周辺をうろうろする。次第に人も集まり、サポーター同士が揉めたり、爆発物を投げつけ、警備員が取り締まる場面もチラホラ。さすが過激なサポーターで知られるギリシャである。
警備員が繰り出す
そんな場面を横目にしながら、ただ時間だけが無上に過ぎていった。今更ながら、チケットプリーズの札くらい持ってくればよかったと後悔した。同じくチケットを探しているらしいフランス人は、ひたすら「Do you sell tickets?」といろんな人に話しかけていた。
そうしているうちに試合開始2時間ほど前に事件が起きた。
はじめに声をかけてきた男がやってきて。
「君にチケットを売る!」
と言ってきた。
なんだってww!?
突然の出来事に驚いていると、150ユーロで売ろうと持ちかけてきた。
ちょっと待て、どうしよう。
30秒ほど思慮した結果、10ユーロ値切って140ユーロで買ってしまっていた。
この機会を逃せば、もう2度と海外のサッカー、ましてやチャンピオンズリーグなんて見れないかもしれない。そんな気持ちがお金に優ってしまった。ちなみに買ったチケットには25ユーロと記載されていた・・・
チケットを手に無事ゲートを通過できた。
安心したのもつかの間、席はオリンピアコスのゴール裏。地元のオリンピアコスファンに挟まれ、チェルシーファンの自分は完全にアウェーである。しかも足もとにはたばこにごみも散乱し、日本のスタジアムのほうがよっぽどキレイだと感じた。しかし腐ってもあこがれの場所。試合開始前の「チャーンピオーン」というメロディに熱い思いがこみ上がってきた。
試合前のセレモニー
重戦車のようなドログバ、バラックにエッシェン。
マルダやジョーコールの両翼の圧巻のスピード。
生で見る選手たちに興奮を隠せない。オリンピアコスにもコヴァチェビッチやニコポリディスといった知っている選手もおり、周りのサポとは違う観点でテンションが上がっていた。試合は0-0と内容に乏しい試合だったが、この雰囲気を味わえたことは一生の思い出になると確信していた。
試合終了後、トラブルに巻き込まれないように、と混雑する人波をかき分け速攻でスタジアムを後にした。途中ポケットに手が突っ込まれ、あやうく財布をすられそうになるものの、危険を察知し、財布をしっかり抑えつけて事なきを得る。
宿に戻ると12時過ぎ。
アテネ最後の夜は、興奮冷めやらぬ中だったか、疲れた体には勝てず。
目の前は深い闇に包まれていった。







