ホームズ正典 | 旅芸☆ナビ

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大道芸人バスカータンプの
旅と大道芸をテーマにした活動手記。

ホームズ正典 59

         這う男

  the adventure of the Creeping Man

  知性ある教授が3階の窓までよじ登った?



   時代設定 1903年9月6日~9月22日

   初版    『ストランド』1923年3月号

   事件現場 ケンフォード大学


 STORY


 ホームズのもとを
 青年学者トレヴァー・ベネットが訪問。
 トレヴァーは、自分が助手を務める
 初老の教授プレスベリーの、
 ここ数カ月の奇矯な行動について語る。

 若い娘との再婚を控えた教授だが、
 以前に比べて不気味さが増し、
 廊下を這うことすらあったという。

 調査に赴いたホームズたちは、
 教授が何かを服用していると突き止めたが――。


 本作はホームズが探偵を引退する直前の事件であり、
 そのおよそ20年後にワトスンが公表した一遍でもある。
 「いろいろと差しさわりが」あったために、
 本事件の公表を控えていたというワトスンの筆記は
 シャーロキアンの関心が集まる部分だろう。

 歳の差がありながらも、同じケンフォード大学にいる
 モーフィー教授の娘アリスと婚約したブレスペリーが
 何故奇怪な行動を示すのか。

 時には彼自身の娘にして、トレヴァーの婚約者でもある
 イーディスの部屋を、3階の窓の外から
 覗き込んだこともあったという。

 プレスベリーが愛犬から
 吠えたてられる様になったことにホームズは着目。
 『ぶな屋敷』事件を例に出し、今回の一件との
 接点を示唆する。

 
 名言集

  「一番重要な結論は一番つまらなく
  見えるところから引き出されて来る


 事件かと思って呼び出されたワトスンだが、
 ホームズの語る「犬」の一節に拍子抜けさせられてしまう。
 そんなワトスンに言い放った台詞がこれで、本作の貴重な
 本作の貴重なキーワードのひとつ「犬」がクローズアップ。


 CHECK

 ・幾度か犬に因んだ事件を扱って来たホームズだが、
  本作では探偵の仕事における犬の運用法で
  小論文を書こうかと思索していた。

 ・教授に接触を求める際に「当たって砕けろ」という
  ワトスンの言葉に喚起するホームズ。
  このフレーズは「僕のチームのモットー」とのことらしい。



 C 内容的には「ジキルとハイド」や
    「ドクターモローの島」 に近いモノがあり、
   100年前に書かれたこの小説は
   ホームズ物以外に歴史小説を書いていた
   コナンドイルにしては大変珍しいSF小説の
   分類に入る。