前回の健康診断から1年で急に糖尿病になってしまったことから、念のために膵臓をMRIで検査することになった。

MRI専門の病院がある街に1人電車で向かう。
駅を降りて商店街を進むと、コーヒー屋の近くに目的の病院を見つけた。

受付後、待ち時間の間にアンケート用紙に回答する。身長、体重、飲酒習慣の有無、そして病気の既往歴。「糖尿病」とボールペンで書き込んだ。
思えば手書きで「糖尿病」と書くのは、人生でこれが初めてなのだ。

最初は問診から。歯切れの良い話し方をする女性の医者であった。すでに私の近所の担当医から情報は行っているようで、問診はサクサク進んだ。
今日は膵臓と、健康診断のエコー検査で反応のあった肝臓も一緒に見ることに。
以前より肝臓に血管腫があったが、その数がやはり一年でかなり増えており、こちらも要精密検査になっていた。
ちなみにエコー検査で膵臓も診ていたが、恥ずかしながら腹部の脂肪が厚すぎてうまく撮れていなかったため、こちらも要再検査になっていた。

問診が終わるといよいよMRI。薄緑色の患者用の服に着替えて廊下で順番を待つ。MRI室内は強力な磁力が発生するらしく、スマホ、時計をはじめとした金属類は持ち込み不可能とのこと。

5分ほど待つと名前を呼ばれ、いざ検査室へ。
部屋の中には何だか物々しい、円筒形の機械がドンと設置されている。全体的に表面は滑らかでシンプルな形状ながらも部分的にゴテッとしたコードやよくわからない機械が剥き出しになっており、さながらSF映画のセットのようだ。

MRIの担当医に促され、その円筒形の機械から突き出している寝台に横になる。

「かなり大きい音しますので、これつけますね」
と、私の頭にヘッドホンをつける。クラシック音楽が聞こえてくる。

次に腹のあたりに金属製の「腹巻き」ようなものが上から被せられる。胴体と腕が固定され、身動きできない。
「これから検査始めます。15分くらいかかりますが、気分悪くなったらコレを押してくださいね」と右手にスイッチを持たされた。

医師が捜査すると私を載せた寝台が動き出した。
ウィーン、という音を立てながら、私ごと寝台は筒の中に入っていく。体が足元まですっぽり円筒の中に入ると、ヘッドホンから女性の声が聞こえてきた。あらかじめ録音されたガイド音声だ。

「息を吸って。。。止めてください!」
「。。。楽にしてください」

指示通りに深呼吸と息を止めることを必死に繰り返す。ただ寝そべっていればいいかと思っていたが、意外に忙しい。
私の呼吸にあわせて、担当医が言ったように様々な機械音が四方八方から聞こえて来る。
主に「ゴッゴッゴッゴッ」という何かを叩くような音と「ギューン」というモーターが動くような音が交互に聞こえ、そこに他の音が混ざった。

そっと目を開けてみた。
すぐ目の前にはつるんとした白いプラスチックのカーブした表面があり、それが足元まで続いていた。音はこの向こう側から鳴っていた。目を動かして辺りを見回したが、視界には白い壁しか見えない。真っ白かつ発行しているためか、距離感や方向感覚がつかめない。真っ白な広大な空間に放り出されたような、そんな錯覚を覚えた。

ふと、自分の心に得体の知れない感情が突然湧き上がってきた。手足も動かせず、狭い円筒形の中に入り、もはや自分ではここから出られない。そんな考えが頭によぎり、急に不安が頭にいっぱいになった。心臓がドキドキする。息がつまる。呼吸がうまくできない。

まさか、閉所恐怖症?

必死に呼吸しようとするが、肺に息が入っていかない。意識を呼吸に集中し、吸って、吐いてを繰り返す。ガッガッガッという機械音が響く中、呼吸のことだけを必死に意識して、耐え続ける。
目を閉じ、深呼吸を繰り返す事で、なんとか平常心を取り戻すことができた。

それから15分とは思えない長い体感時間を経て、ようやく担当医の終わりを告げる声が聞こえ、筒の中から引っ張り出されると、もう一度大きく深呼吸してゆっくりと立ち上がった。
ヘトヘトだった。

診察室を出て自分の服に着替える。
受付に行くとすぐに会計になった。結果は1週間後に近所の内科医のところに届くとのこと。費用は8000円ほどだった。

人生はじめてのMRI検査を終えて外に出ると外はもう暗くなっていた。私は隣の喫茶店に入り、しばらくぼんやりとコーヒーを飲んで過ごした。

つづく